第141話 妖精王パート11
私たちは本来の目的である出雲山に向かった。八岐大蛇はラスパのメンバーで討伐して、ヒュドラは私とサラちゃんで倒すことにした。サラちゃんを1人にすると何をしでかすかわからないので、私が監視役をすることになったのであった。
出雲山の上空にたどり着くと出雲山の麓に大きな湖が見えた。あれが宍道湖なのであろう。そして、宍道湖のすぐ近くに小さな村がある。
「あんなところに村があるぜ」
「本当ですわ。何か美味しい物でもあればいいのにね」
「美味しい物があるのね!!!」
サラちゃんは急降下して村に向かった。
「サラ、危ないぞ。カゴから落ちてしまうぞ」
「きゃーーーー」
ロキさん達が悲鳴を上げながら村に向かって遊園地のフリーフォールのように、サラちゃんは垂直に降下する。
ロキさん達は危険を感じて籠から飛び降りて、風魔法を使って地面への直撃を避けた。
サラちゃんの急降下によって籠は地面に激しくぶつかって大破して壊れてしまった。
サラちゃんはそんなことは気にせずに地面に降りるとすぐに人型に変身して、村へ走っていった。監視役の私もサラちゃんの後を素早く追いかけた。
「みんな大丈夫か?」
「なんとか無事よ」
「私も大丈夫ですわ」
「俺たちも追いかけるか」
「そうしましょう」
ロキさん達もサラちゃんを追いかけて村へ向かったのであった。
村に入ると、村では祭りをしているみたいである。村の中央にある大きな広場にやぐらを建てて、やぐらの周囲を回りながら、音楽に合わせて村人たちが踊っていた。まるで盆踊りをしている感じである。
また、広場の周りには複数の出店が立ち並んでいろんな食べ物が売っていた。
サラちゃんは一つの出店に行儀よく一列に並んで立っていた。
私はもサラちゃんと一緒に並ぶことにした。
「サラちゃん、ここはなんのお店なの」
「ヨーヨーという食べ物を救助して食べるお店みたいですわ」
ここはヨーヨーすくいの出店であった。ヨーヨーすくいとは、ヨーヨーの先に輪っかが付いていて、コヨリ紙についているW字の鍵で、水槽の中からヨーヨーをすくう遊びである。コヨリをできるだけ、水につけないようにして、ヨーヨーをすくうのがコツである。
「サラちゃんヨーヨーは食べれないです」
「そんな・・・あの色鮮やかなヨーヨーは絶対に甘くて美味しいと思ったのに」
「あれはおもちゃなので食べ物じゃありません」
私はヨーヨーすくいの看板にある文字を見つけてしまった。それは・・・
『ヨーヨーを10個取った方にはヤミークラブをプレゼントします』
と書かれていた。
「サラちゃん朗報です。ヨーヨーを10個すくうとヤミークラブがもらえるみたいです」
「なんですって!!!それは、ヨーヨー様をお救いしてあげないといけませんわ」
サラちゃんのレスキュー魂に火がついた。
私とサラちゃんはヤミークラブをゲットするために行儀良く一列に並んで順番を待つのであった。
30分後やっと私たちの順番がきたのであった。
「私がヨーヨー様を必ず救い出してあげますわ」
サラちゃんは真剣な目をしてコヨリを手に取ってヨーヨーの輪っかにカギを通す。しかし、コヨリが水に浸かってしまいすぐに切れてしまうのであった。
「全然救えませんわ」
ヨーヨーすくいは1人5回までと制限がある。ヤミークラブがもらえるので、ここのヨーヨーすくいは人気があるので回数制限があるみたいだ。
サラちゃんは5回目の挑戦も失敗に終わる。
「ヨーヨー様・・・・なぜ救えないの」
サラちゃんは涙を流しながら悲しんでいる。
「ルシスちゃんのコヨリを私にちょうだい。私にはヨーヨー様を助ける義務があるのです」
サラちゃんはそういうと私のコヨリを4つ奪い取る。そのため私のチャンスは一回しかないのである。
サラちゃんは、私のコヨリで果敢に挑むが、全くヨーヨーはすくえないのであった。
私はただじっと待っていたわけではない。私はサラちゃんのヨーヨーすくいを見て研究していた。どうやったらヨーヨーをすくえるのかを。
結論から言うと絶対に無理である。コヨリの強度のわりには、ヨーヨーの重さが重すぎるのである。これは確実に詐欺出店である。
私は正々堂々とヨーヨーすくいをするつもりであったが、相手が詐欺をしているのなら、私も容赦しないのである。私は魔法を使ってコヨリの強度を上げることを決めた。
強度上げたコヨリを使って私は、ヨーヨーをどんどんとすくい上げていく。
「勇者が現れたましたわ。これでヨーヨー様も無事に救われますわ」
サラちゃんが、ヨーヨーが救われる姿を見て大喜びをする。しかしその一方、店主の顔がどんどん不機嫌になってくる。
「お客さん。何か不正をしていませんか」
不正をしているのはあなたでしょ!と言いたかったがここは少し我慢した。
「私はヨーヨーすくいには自信があります」
「ちょっとそのコヨリを調べてさせてくれないか」
「どうぞ、どうぞ」
私はコヨリの魔法を解いて店主にコヨリを渡した。
店主は確認をするように自分でヨーヨーをすくってみた。結果はヨーヨーはすくえずコヨリが破れてしまう。
「不正なコヨリを使っていると思ったが違うのか・・・」
店主は不満げに新しいコヨリを私に渡した。
「何かおかしな動きをしたら失格にするからな」
「どうぞご自由に」
私の高度な魔法テクニックが素人にわかるわけがないのである。私はコヨリの強度を上げて、再びヨーヨーをすくいまくるのである。
そして10こ目のヨーヨーをすくったのであった。
「ルシスちゃんやりましたね」
「やりました!サラちゃんにヤミークラブをプレゼントします」
「わーーーい。わーーーーい」
サラちゃんは両手を上げてくるくると回って喜びの舞を踊る。
しかし商品として渡されたのはヤミークラブの絵であった。
「・・・」
私は唖然として声が出なかった。
「私を騙すなんていい根性をしているわね!」
サラちゃんは店主に飛びかかりすぐに抑えつけて、人気のいない場所に店主を連れて行った。
サラちゃんの怒りは頂点に達していたのだった。
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