第142話 妖精王パート12
「これは、どういうことなのよ」
サラちゃんは全身を燃え上がらせて出店のオヤジを睨みつける。
「ごめなさい。許してください。殺さないでください」
サラちゃんの怒りに満ちた表情に、出店のオヤジは震えながら命乞いをする。
「ヤミークラブを出すのよ」
「ヤミークラブはありません。本当に申し訳ございません。代金はお返ししますの許してください」
「許さないわよ。ヤミークラブを用意しなさい」
「ヤミークラブは村長が持っています。僕は持っていません」
「すぐに村長を呼んできなさい!そして、私にヤミークラブを渡すように説得するのよ」
「わかりました。今すぐ呼んできます」
「逃げたら、ただじゃすまないわよ!!!」
「絶対に逃げません。なので殺さないでください」
出店のオヤジは急いで村長の元へ向かったのであった。
「嘘はいけないわ。私は絶対にヤミークラブを食べるのよ」
私はイカサマしてヨーヨーすくいをしたのであまり強くは言えなかったが、出店のオヤジもイカサマをしていたので、サラちゃんの恫喝を止めることはしなかった。
しばらくすると、出店のオヤジと60代くらいの男性が戻ってきた。
「このたびは、スサオがご迷惑をおかけてし申し訳ございません」
「許さないわよ」
「スサオ、お前もきちんと謝りなさい」
「ごめんなさい。許してください。2度とこのようなことはしません」
「ヤミークラブをくれたら許しますわ」
「スサオ、また、ヤミークラブを商品にしたのか!」
「すみません。ヤミークラブを商品にしたら、大勢の人が集まるのでつい商品にしてしまいました」
「また、イカサマをしたのか」
「はい。絶対にすくえないはずなのに・・・」
「本当に申し訳ございません。ヤミークラブ以外の物で許してもらえないでしょうか?」
「ヤミークラブが欲しいのよ。すぐに出しなさいよ!!!」
「ヤミークラブだけは出すことはできないのです。他の物で代用させてください」
「絶対にダメ。ヤミークラブがいいのよ」
「村長さんなぜ?ヤミークラブはダメなのですか」
私はもしかしたらヤミークラブを渡せない事情があるのではないかと思い村長さんに確認をした。
「ヤミークラブは、八岐大蛇様の生贄になる女性の最後の晩餐になります。なのでお譲りすることはできないのです」
「八岐大蛇の生贄ってどういうことですか」
「この村では年に1度八岐大蛇様に、美しい女性を生贄に出すことになっています」
「なぜですか?」
「この村は出雲山の近くの村です。出雲山の麓には宍道湖があります。宍道湖にはヒュドラという恐ろしい海蛇の魔獣が住み着いています。そのヒュドラからこの村を守ってもらうために、年に1度生贄を出すことになっています」
「もし、ヒュドラがいなくなれば生贄を出さなくて済むのですか」
「はい。でもヒュドラがいなくなるなんてあり得ないのです」
「私が退治してあげますわ。そしたらヤミークラブはもらえるのね」
サラちゃんが目を輝かせて話しに割り込んできた。
「ヒュドラさえいなくなれば、生贄の必要はなくなりますので差し上げることができます」
「ルシスちゃん、いますぐ、ヒュドラを倒しに行くわよ」
そういうと、サラちゃんは宍道湖目指して飛んで行ったのであった。
「ヒュドラを倒すなんて、絶対に無理だぁ〜」
スサオが怯えながら言う。
「彼女なら大丈夫です。とても強いのです!」
「しかし、ヒュドラは猛毒を持っています。近づくことさえ難しいと思います」
村長さんが心配そうに言った。
「それにヒュドラは不死身の生命力を持つと言われています。なので討伐は諦めた方が良いと思います」
「大丈夫よ。それに私達の本来の目的は八岐大蛇の討伐です。この村に迷惑をかけるヒュドラと共に討伐してきます」
「本当ですか」
「はい。なのでもう生贄なんて必要ないので討伐が終わったら、ヤミークラブを頂いてもよろしいでしょうか」
「残念だが信じることはできません。ヒュドラだけじゃなく、八岐大蛇様まで、討伐するなんて絶対に無理です。これまでに、数名の冒険者が八岐大蛇を討伐すると出雲山に向かったが、誰も戻っては来なかった。私たちは八岐大蛇様に守られながらこの土地で暮らすしかないのです」
「何を言ってるのですか!生贄になる女性の立場を考えたことがあるのですか!」
「よそ者に何がわかるのだ!今回、生贄に出すのは私の孫娘だ。どれほど苦しい思いをしているか、お前にわかるのか!!!悔しいけど私たちにはどうすることもできないのだ。だから、最後の晩餐だけは、贅沢な料理を食べさせてあげたいから、ヤミークラブを命懸けで捕まえてきたのだ」
「偉そうのことを言ってごめんなさい。でも、私たちを信用してください。絶対に八岐大蛇、ヒュドラを倒してきます。私は幼い女の子にしか見えないかもしれないけど、実はとんでもなく強いのです!」
私はそういうと空に向かって光魔法を放った。私の放った光魔法は、青い空を瞬時にして金色に輝く美しい空へ変えた。
「私の魔法はすごいでしょ」
私はドヤ顔で言った。
「信じられない・・・空の色を変える魔法なんて・・・」
村長は呆然として空を眺めている。
「これで少しは信用してもらえたかしら」
「ああ、こんなすごい魔法を使える冒険者は初めてだ」
「今から仲間と一緒に討伐してくるから、私を信じて待っててください」
「わかりました。あなたを力を信じて待つことにします」
村長を納得させることができたので、私はロキさん達を迎えに行くことにした。サラちゃんのヨーヨーすくいに付き合っていたので、まだ、合流することができていないのである。
「くそーーー、全然取れないぞ」
「私もよ」
「どうやったらこのヨーヨーとやらをすくうことができるのだ!!」
トールさん達も、別の出店でイカサマのヨーヨーすくいに苦戦していたのであった。
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