第143話 妖精王パート13
「これで、5回連続失敗だぜ。また、列の後ろに並ばないとな」
「トール諦めた方がいいわよ」
「それは、絶対にできない。俺がヤミークラブをゲットするぜ」
「いや、私よ。次は私の番なので今度こそヨーヨーを10個すくってみせるわ」
「ポロンもやめたほうがいいわよ。たぶんこのお店はイカサマをしているはずよ」
「お客さん、困りますなぁ〜。変な言いがかりはよしてもらえませんか。私がイカサマをしている証拠でもあるのですか」
「どう見てもこのコヨリだとあのヨーヨーの重さはすくえないわ」
「そんなことはありませんよ。私が代わりにスクってみせましょう」
そう言うと、店主はポロンさんに渡す予定のコヨリを使って、ヨーヨーを簡単にスクってみせた。
「このオヤジはプロだぜ。あんなに簡単にすくったぜ」
「本当ですわ。素晴らしいですわ」
トールさんとポロンさんは、店主の腕前を大絶賛している。しかし、ロキさんは店主のイカサマに気付いたみたいでニッコリと笑っている。
これは私が出て行かなくても大丈夫だと思って様子を見ることにした。
「店主さん、あなたが使ったコヨリで私も挑戦させてくれないかしら?」
「いいぜ、ほらこれを使いな」
「これは違いますわ」
「何をバカなこと言っている。そのコヨリで間違いないぞ」
「このコヨリはおかしいですわ。さっき使ったコヨリなら濡れていないといけないのよ。でもこのコヨリは全く濡れていませんわ」
「・・・・・」
「コヨリをすり替えたのですね」
「・・・・・」
「さぁ、あなたが使ったコヨリを渡すのよ」
店主は黙ってコヨリを手渡した。そしてロキさんはそれを使って次々と、ヨーヨーをすくうのであった。
「ロキにこんな才能があったなんて驚きだぜ」
「素敵ですわ」
トールさんとポロンさんは、店主が頑丈なコヨリに差し替えたことにまだ気づいていない。
「これで10個目ですわ。ヤミークラブをもらえますか」
「ロキ、すごいぜ。これでヤミークラブは俺のものだ」
「いえ、私のものよ」
ロキさんが店主にヤミークラブを渡すように迫っている横で、トールさんとポロンさんがどちらが、ヤミークラブをもらうかでもめているのである。
「ヤミークラブは・・・ない」
「どう言うことなの」
「ロキお姉ちゃん私が説明します」
私はロキさんに先程の村長とのやりとりを説明した。
「そういうことなのね」
「はい。なので、この村を救うためにも八岐大蛇を討伐しましょう」
「わかったわ。でもイカサマはいけないわ。この店主どうしましょう」
「許してください。今日はオロチ祭りなので、近隣の村からたくさんの人が訪れます。この村は、八岐大蛇様に生贄を出す犠牲の村なのです。なのである程度のイカサマは暗黙の了解で許されています。この出店での収益は全て生贄の娘の家族に寄付されます」
村長は私には説明していない真実があった。イカサマのヨーヨーすくいにはちゃんとした理由があったのである。しかし、イカサマのヨーヨーすくいについては、村長は反対しているので、村人に辞めるように訴えていることを、後で村長から知らされた。
「私たちが八岐大蛇を討伐するから2度とイカサマはしないでください」
「討伐なんて絶対に無理だ。あんな化け物を倒せるはずがない」
「クシナ、そのお方を信じなさい」
私たちがもめているのを見た村長が話しに入ってきたのであった。
「村長・・・本当に信じていいのですか」
「信じてみようではないか。これ以上、生贄を出すのは村のみんなも辛いであろう」
「そうですが・・・でもヒュドラもいるのです」
「彼女はとても優秀な魔法使いだ。先ほど空が金色に輝いたのに気づいたか?」
「はい。皆、何が起こったか理解できませんでしが、八岐大蛇の仕業ではないかと言っていました」
「あれは彼女の魔法だ」
「本当ですか」
「間違いない。わたしは目の前で見ていたのだ」
「あんな魔法が使えるなら・・・もしかしたら、ヒュドラ・八岐大蛇を倒してもらえるかもしれません」
「そう言うことだ。彼女達を信じよう」
「わかりました。先程は失礼しました。私達を助けてください」
「任せてください。必ず討伐してきます」
「お願いします」
「・・・・?」
「・・・・?」
トールさんとポロンさんは、まだ状況を飲み込めていないみたいであった。
「ルシス、ヤミークラブはどうなったのだ」
「そうですわ。ヤミーはどこなの」
私はトールさんとポロンさんに詳しい事情を丁寧に説明した。
「あのイカサマ店主。俺を騙していたのか!!」
「許せないですわ。私のヤミーはどうなるのよ」
2人をきちんと納得させるのには少し時間がかかったのであった。
やっと、2人を納得させて出雲山に向かうことになった。
「ルシス、ヤミークラブは1体しかないのだろう?」
「そうみたいです」
「なら、討伐をしたら誰がもらうことになるのだ」
「たぶん・・・はりきって先に宍道湖に向かった、サラちゃんが独り占めしそうです」
「また、あいつかぁ」
「少しでも分けて欲しいわ」
「本当だぜ。あの食いしん坊にも困ったものだ」
「トール、諦めなさい。サラちゃんの力は強大なものよ。いずれサラちゃんの力を借りることになることになるわ。だから、ある程度のわがままは許してあげて」
「はい。はい」
トールさんは渋々了承した。
「とても、嫌な匂いがしませんか?」
ポロンさんは異様な匂いを察知した。私もさっきから刺激臭を感じていたのであった。
「確かに、すごく匂うわ」
「頭がクラクラしてくる」
鼻を刺すような異様な匂いが充満してきた。私たちは防御シールドを貼って周りの様子をうかがった。
「サラ!!」
「サラちゃんどうしたのよ」
私たちが、目にしたのは、地面に倒れ込んでいるサラちゃんであった。
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