第144話 妖精王パート14
「サラ、大丈夫か」
トールさんが真っ先に駆けつける。サラちゃんはこの刺激臭にやられてしまったのだろうか。そういえばサラちゃんは鬼の島の硫黄の匂いが苦手だったことを私は思い出した。サラちゃんにも弱点があったのだろう。
「うるさいわね。少し静かにしてよ!」
あれ?サラちゃんは刺激臭によってダウンしていたわけではないみたいである。
「なんで、こんなところで倒れていたんだ」
トールさんは追求する。
「なんで私が村人のためにヒュドラを倒せないといけないのよ。私は決めたわ。ヤミークラブを強奪するわ」
サラちゃんがなんだか荒れているみたいである。
「サラ、落ち着け。俺も出店の店主に騙されたが彼らにも事情があるんだ」
「そんなの知らないわよ。私はヤミークラブを食べれたらいいのよ」
なんだかサラちゃんの様子がおかしいと私は感じた。確かにサラちゃんは食べ物に関して、わがままな部分があるのは事実である。でも、村人からヤミークラブを、強奪するようなことはしないはずだ。何かが、おかしい・・・
「刺激臭のせいです」
イフリートが精印から現れた。
「サラマンダー様は、強い刺激臭を体内に取り組んでしまうと、やる気スイッチがオフになってしまうのです。オフになってしまうと、極端に面倒なことを嫌がり、楽な選択肢を選んでしまう、超絶ワガママモードに入ってしまうのです。早く体内の浄化をしないとワガママがエスカレートしてします」
「雷光石も今すぐ食べたくなったわ。私に雷光石をよこすのよ!!」
「これは試練をクリアしたら渡します。今は渡せません」
「試練なんてどうでもいいのよ。私はヤミークラブと雷光石を食べたいのよ!!!」
サラちゃんはサラマンダーの姿に変身した。ワガママモードが全開になったのであろう。力尽くでも雷光石を私から奪おうとしている。
私はこのままでは危険だと思い、状態異常解除の魔法を使った。
サラちゃんの体を光の膜が包み込む。
「早く渡すのよーーー」
サラマンダーの体が燃え盛るように赤くなる。私の状態異常解除の魔法が効いていないみたいである。
「ルシスさん。サラマンダー様は状態異常が起こったわけではありません。ただ、刺激臭を取り組んでイライラしているだけです。なので、魔法ではなく美味しい食べ物を与えると落ち着くはずです」
私はすぐさま収納ボックスから食材を取り出して、サラちゃんの口の中に投げ入れた。
「パクパク・・・・・おいちい」
私は更に食材を投げ入れた。
「パクパク・・・・最高ですわ」
まだまだ投げ込んだ。
「パクパク、ムシャムシャ・・・もっともっと」
サラちゃんはサラマンダーから、人型に戻って追加の食料を催促してきた。
「サラ、正気に戻ったのか」
「トールさん、何かあったのかしら?私はいつも通りですわ」
サラちゃんの超絶ワガママモードは解除されたみたいである。
「臭いですわ。このニオイなんとかならないの」
「本当ですわ。私も限界ですわ」
サラちゃんはいつものワガママモードに戻ったみたいである。しかし、刺激臭が消えたわけではないので、また、いつ超絶ワガママモードになってしまうかもしれない。なので、刺激臭の原因を探すことにした。
「ルシスちゃん。もっと食べ物が欲しいわ」
とりあえずサラちゃんをおとなしくするために食べ物を与えた。
「ルシスちゃん、このさきに宍道湖がありはずよ。この刺激臭の原因は宍道湖だと思うわ」
私はロキさんに言われてこの先にある宍道湖を確認した。宍道湖はドロドロした紫色ヘドロの湖であった。紫色のヘドロは猛毒であろう。
「あれは危険だぜ。ひどい刺激臭で近寄ることすらできないぞ」
「あれは猛毒よね。あれに触れたら命が危ないですわ」
「ルシスちゃん。どうするの?」
「私の魔法で浄化します。危険かもしれないので下がっていてください」
「ルシス、任せたぞ」
そう言うと、トールさん達は後方に下がっていった。
私は宍道湖に近づいて湖の様子をうかがった。この湖にヒュドラがいるのは間違いない。しかし、姿は全く見えない。ヒュドラが姿を見せないうちに、私は湖を浄化することにした。
私は浄化の光を湖に打ち込んだ。
浄化の光は湖をみるみると透明な水に変えていく。数分後には湖の底まで見える透明度のある水に変わったのであった。
湖を見てみると湖の底でのんびりと寝ているヒュドラの姿が見えた。
ヒュドラは体長20mの九つの頭を持つ水蛇の魔獣だ。体内に毒を持ち、口から猛毒を吐き出す恐ろしい魔獣である。しかも、ヒュドラは無限に細胞が復活するので倒すことができないと言われている。
「ルシス。刺激臭がおさまったみたいだな。浄化に成功したのか?」
「はい。浄化は完了しました。宍道湖はとても綺麗な湖になりました」
「すごいわ。ルシスちゃん。あんなにドロドロした湖が底まで見える綺麗な湖に変えてしまうなんて・・・・ルシスちゃん!湖の底にいてるのがヒュドラなの?」
「そうみたいです。今は寝ているみたいなので、ロキお姉ちゃん達は先に出雲山を登ってください。私とサラちゃんでヒュドラは倒します」
「任せたわよ」
「はい」
ロキさん達は八岐大蛇を討伐するために出雲山を登って行った。私はサラちゃんと協力してヒュドラを倒すことにした。
「ルシスちゃん。追加の食べ物をもっと食べさせてよ」
サラちゃんは超絶ワガママモードになったせいで、なぜこの湖に来たのか目的を忘れてしまっていたのであった。
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