第145話 妖精王パート15
「サラちゃんお食事は後にしてヒュドラを倒します」
「もう少しだけお願いよ。あと少し食べたらフルパワーで、ヒュドラを倒せる気がするのよ」
超絶ワガママモードじゃなくても、サラちゃんは基本ワガママなのである。
私は仕方がないので追加の食べ物を与えた。八岐大蛇を討伐したらまたたくさんの食べ物を作り置きしないと、在庫が危なくなってきた。
「ルシスちゃん準備は完璧よ。私が村人の為にヒュドラを倒してあげるわよ」
サラちゃんがやる気を取り戻してくれたので良かったのである。私はサラちゃんを連れて宍道湖の前まで来た。
「湖の底にいる蛇がヒュドラね。私の溶岩でグツグツに茹であげるわ」
サラちゃはサラマンダーに変身して、海でビッククラブを茹であげたように、湖に向かって無数の溶岩を降り注いだ。湖はグツグツと沸騰する。あまりの熱さにヒュドラは湖から飛び跳ねてきた。
飛び跳ねてきたヒュドラに向かって、サラマンダーは炎を吐き出した。
ヒュドラは悲鳴を上げながら炎に包まれていく。炎に包まれたヒュドラは抵抗するように九つの口から猛毒を吐きつける。
「あれは臭いから嫌なのよ」
サラマンダーは、二つの大きな翼を羽ばたかせて突風をおこす。
凄まじい突風によりヒュドラの猛毒は拡散され周りに飛び散る。周りの木々は一瞬にして枯れてしまう。
「これでもくらうのよ」
サラマンダーは再び炎を吐き出す。サラマンダーの鋼鉄をも溶かす炎により、ヒュドラはドロドロになって溶けてしまった。
「ルシスちゃん。これで終わりね」
サラちゃんはVサインをして勝利のポーズを決める。
だがしかし・・・ドロドロになって溶けたヒュドラの体がみるみる再生して元の姿に戻っていく。
「なんなのよ。ヒュドラが復活したじゃないの」
ヒュドラはまた九つの口から猛毒を吐きかける。
サラマンダーも負けじと突風を起こす。サラマンダーの突風でヒュドラは煮えたぎる湖に落ちてしまう。
「真っ赤になるまで茹であげるわよ」
サラマンダーは、燃え盛る溶岩を湖に投げ入れる。
湖の水は真っ赤に染まり、ヒュドラの皮膚は熱さにより全身が真っ赤になって溶け始めた。
「まだまだよ」
サラマンダーはさらに溶岩を湖に投げ入れる。湖はあまりの熱さに水は沸騰して蒸発してしまった。そして、湖の水はなくなり大きな穴となってヒュドラも溶けて消えてしまった。
「次こそやりましたわ」
「まだ、みたいです。ヒュドラが再生しています」
ヒュドラはまた復活したのである。これは、いくら攻撃しても再生してしまうのでキリがないのである。
「面倒な相手ですわ。これでもくらいなさい」
サラマンダーは無数の溶岩をヒュドラに投げつける。ヒュドラは溶岩によって、ぐちゃぐちゃにつぶれるが、すぐに再生して元に戻る。
そして、ヒュドラは九つの口から猛毒を吐きつける。また同じことの繰り返しである。
「ルシスちゃんキリがないわ。どうやったらこのヒュドラを倒せるのかしら」
「今考えているの。なので、サラちゃんはヒュドラを倒し続けてね」
「わかったわ」
サラマンダーはまた無数の溶岩を投げ付けてヒュドラをぐちゃぐちゃにする。
私はサラちゃんの戦闘を見ながらいろいろと考えていた。まず、わかったのがヒュドラは幻獣であり無敵ではない。
幻獣とは幻魔のコアで作り出された魔獣である。幻獣は実態が存在しないので、いくら攻撃しても復活するのである。
そして幻獣を倒すには3つの方法がある。
1番簡単なのは幻獣を作り出した人物を倒すことである。幻魔のコアは作り出した人物の魔力によって動いているので、作り出した人物を倒すと幻獣も死んでしまう。
2つ目は幻獣を倒し続けて、作り出した人物の魔力を全て奪うことである。幻獣を倒して、復活するときにはかなりの魔力を消費することになるので、倒し続けるといずれ魔力は枯渇するのである。まさか、ヒュドラが何十回も倒されるとは想定していないので、サラちゃんならこの方法でヒュドラを倒すことができるだろう。
そして、最後の方法がヒュドラの幻魔のコアを砕くことである。この方法が冒険者として1番の王道であろう。サラちゃんの戦いを観察していると、表面からの攻撃ではコアを壊すことができないとわかった。なので体内に入ってコアを潰すのが確実だろう。でも、ヒュドラの体は猛毒で溢れているので、入るのは困難である。
しかし、私にはわかったことがある。九つの口から毒を吐きだしているように見えるが、実は八つの口だけであり、残り1つの口からは毒は吐き出さないのである。あの口から潜入して、コアを砕くのがヒュドラを倒す方法であると私は気づいてしまった。
そして、幻魔のコアには幻獣を作り出す能力以外にもう一つ意外な事実があることを、私は思い出したのである。そう・・・いつも大切な事はあの本に書いてあった。
『世界の絶品珍味大事典』に幻魔のコアはとても甘くて美味しいと記載されていた。
これで、サラちゃんをうまく誘導して、ヒュドラの口から侵入する計画が出来上がったのである。
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