第146話 妖精王パート16
「ルシスちゃん、少しお腹が空いてきましたわ。お食事タイムが必要よ」
「サラちゃん、私もおやつタイムが必要だと思っていたところです」
「おやつタイムですって!!!待ってましたわ。どんなおやつを用意してくれているのですか」
「幻魔のコアという極甘スイーツですわ」
「幻魔のコア??それは本当に甘ーーーいスイーツなの?」
「そうです。ふんわりプリプリ食感で舌が解けてしまうくらい甘いスイーツです」
「本当なの!!!すぐに出してよ」
「それが・・・・その幻魔のコアはヒュドラの体内にあるのです」
「なんですって!!ヒュドラが体内に隠し持っているのね。私のヤミークラブだけでなく、幻魔のコアまでも独り占めするなんて絶対に許さないわ」
サラちゃんを上手く誘導できそうである。
「サラちゃん、ヒュドラの体内に入って幻魔のコアを食べてしまったらいいのです」
「もちろんよ。でも・・・ヒュドラの体内に入るにはどうしたらいいの・・・。それにヒュドラの体内には臭い毒が充満しているはずよ。幻魔のコアを食べたいけど、臭い毒は嫌なのよ・・・」
「サラちゃん安心してください。ヒュドラの九つ頭のうち1つは毒を持っていないのです。そこから侵入したら毒がないので、快適におやつタイムを堪能することができるはずです」
「さすがルシスちゃんね。いつも最前の策を用意してくれるのね!しかし、どうやって体内に入ろうかしら」
「私が魔法でサラちゃんをヒュドラの口へ投げ飛ばします。なので、サラちゃんは人型になって、ボールのように丸くなって欲しいの」
「わかったわ。私はボールのように丸くなるわ」
サラちゃんは人型に戻って体を丸くして大人しく待っている。私は風魔法を使って、ヒュドラの口に向かってサラちゃんを投げ飛ばした。
ヒュドラはお決まりパターンで九つの口から毒を吐き出す。私はサラちゃんを投げたあと、自らも、ヒュドラに向かって飛んでいき、調理用ナイフで8本の首を綺麗に切り落とす。
残った一本の頭の口の中には、私が投げ飛ばしたサラちゃんが入っていく。
サラちゃんは体内に入ると幻魔のコアを探し始めた。
「真っ暗で何も見えないわ」
サラちゃんは体を燃上らせて体を松明の代わりにした。
「これで視界は良好よ。さて幻魔のコアはどこにあるのかしら?」
サラちゃんはヒュドラの体内をじっくりと観察する。
「あちらの方から甘くていい香りがするわ」
サラちゃんは、あまーい匂いに釣られて匂いのある方へ歩いていく。
サラちゃんが歩いていくとそこには二つの石があった。
一つは紫色の禍々しい石。もう一つはアメジストのように光り輝く美しい紫色の石。
「これが幻魔のコアに間違いないわ。さてどちらを食べようかしら」
サラちゃんは、どちらも甘い匂いがしていたので、どちらが幻魔のコアか迷っていた。しかし、禍々しい石が猛毒を発生するコアで、美しい石が幻魔のコアであるのは一目瞭然である。しかし、食いしん坊であるサラちゃんは迷っていたのである。
「禍々しい石からは微妙に嫌な匂いがするわ。しかし美しい色の石からは全く嫌な匂いはしない。これは間違いないわ。美しい石が幻魔のコアで、禍々しい石は偽物ですわ」
サラちゃんは綺麗な石を手に取りすぐに口に入れたのであった。
「う・・・う・・・・う・・・・・・・」
サラちゃんが体内に入って数分経った。私が切り落としたヒュドラの首はまだ再生しないが、ヒュドラの残りの1つの首はまだ元気に動いている。たぶんサラちゃんは幻魔のコアをまだ食べていないのだろう。
「ルシスとサラは大丈夫かな?」
「あの2人が負けるとは思えないわ。でもヒュドラは再生を繰り返すので、討伐できないと聞いているわ。あの2人がどうやってヒュドラを討伐するのか気になるわ」
「必ず何か弱点があるはずよ。ルシスちゃんならなんとかしてくれるわ。私たちは八岐大蛇の討伐に専念しましょう」
「そうだな」
ロキさん達は出雲山を慎重に登っていった。どこに、どんな魔獣が、潜んでいるか分からないので、いつでも戦闘できる準備をしていた。
「ロキ、あそこに大きな家があるぞ。怪しくないか」
「そうね。誰がこんなところに住んでいるのかとても気になるわ」
「俺が確認してくるぜ」
そう言うと、トールさんが、怪しい家の探索に行った。
数分後。
「ロキ、誰か住んでいるみたいだぞ」
「そうなの?誰が住んでいるのかしら?」
「山田 オロチさんが住んでいるぞ」
「なぜ、わかったの?」
「家の前に表札が付いていたぜ」
「八岐大蛇・・・山田 オロチ・・・・何か関係があるのかもしれないわ」
「そうだな。俺が、再度確認してくるぜ」
そう言うとトールさんが再び怪しい家の探索に行った。
「私たちも行ったほうがいいかもしれないわ」
ポロンさんもトールさんの後を追いかけた。
しかし、ロキさんはその場を離れずに周りを警戒していた。とても怪しい家なので、3人で近づくのは危険だと思っての判断である。
「ポロンも来たのか」
「はい。この家に何か秘密がありそうだと思ったのですわ」
「そうだな。とりあえずインターホンでも押してみるか」
「賛成ですわ。礼儀正しく家に訪れるのが常識ですわ」
『ピンポーーン、ピンポーーン』
「どちら様でしょうか」
インターホンから女性の声がした。
「トール、どうしましょう」
「俺に任せろ。荷物をお届けにきました。ハンコをもらえますか?」
「荷物?今、オロチに確認しますので、少しお持ちください」
「トール、大丈夫なの」
「大丈夫だ。もしもの時は、間違いましたと言って逃げるのみだ」
「それは名案ね!いつでも逃げれるように準備しときますわ」
「オロチに確認が取れました。生贄の荷物ですね。少しお待ちください」
「おい、どうする!ポロン」
「トールが生贄になってこの家を探索するのはどうですか?」
「えっ!俺が生贄になるのか?」
「はいそうです。あとは私に任せてくれたら、問題ないですわ」
「・・・・」
『ガタン』
「お待たせしました。生贄を取りに来ました」
そこに現れたのは、美しい人間の女性であった。この女性は一体何者なのであろうか?
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