第10話 人界へパート2


 ⭐️ルシス視点に戻ります



 今日は魔力がもどる誕生日の前日。なので、朝からのんびりと部屋で過ごしている。なので特訓も読書もしていない。約5年間、毎日休まずに訓練してきたのだから、今日みたいな休息日があっても誰も文句は言わないだろう。


 明日、魔力が復活したら、この部屋を出てお母様に会いに行こう。そして契りの間で何がおこり、また5年間どのような生活をしていたか伝えにいこう。


 そして、私はお母様のことを全く恨んでいないことを伝えよう。私はお母様が呟いたあの言葉は、本意ではないとわかったのだから。


 私はこの5年あらゆる本を読み、たくさんの知識を手に入れた。なぜのこの書庫に私が閉じ込められた理由も本の知識で解決したのである。


 魔界には魔の瘴気で満ちている。この瘴気は、魔族以外ものには毒を吸っているのと似たような感覚になるらしい。魔石が白くなった私は、この魔界で生きていくのにはかなり難しい。だから、お母様はこの書庫に結界を張ってこの部屋に閉じ込めたに違いない。


 そして魔の瘴気を浴びた者を、近寄らせないようにしたのである。


 食事も瘴気を消し去った物を用意されていた。瘴気を消し去った料理を作るのは、かなり手間がかかる。それをきちんと毎日3食用意されていた。

 

 このことを考えると、お母様は私のことを嫌っているはずはない。むしろ愛されているとわかったのである。


 たぶんお母様は、私の魔力が回復する方法を、いろいろと調べているに違いない。でも大丈夫だよお母様。私は明日になると魔力が回復するのだから。しかも7大天使さえ倒せる力も手に入れた。




 「王女様、そこにいらっしゃいますね」



 扉の奥の方から声が聞こえる。



 「私は魔王参謀長官をさせてもらってるナレッジです。王妃様の命令により、王女様を人界へのテレポートすることになりました」



 ナレッジがそういうと、私の目の前は真っ暗になり、一瞬で書庫より人界へと飛ばされたのであった。


 



 あと1日だったのに…


 私は、呆然と立ち尽くしていた。なぜお母様は、私を人界へと送り出したの?もう私の魔力が回復しないと思って諦めたかな?いくら考えても仕方がない。もう私は、人界に飛ばされてしまったのである。なので、この人界でどう生きていくかを考えなければならない。


 私の魔石は白いから、この世界では魔人というよりも、亜人と思われるだろう。人間から見たら、私はツノが生えた小さい女の子。


 私は、人界の本も読んでいたので、亜人は人間から好ましくない対象だとは知っている。

 

 しかしそれは昔の話しであり、最近は亜人も獣人も人間も仲良く暮らせる世界が出来つつあるみたいだ。


 でも一部の人間は、亜人・獣人へ差別は酷いものであるとも本に書いてあった。でもこれは逆もあるり亜人・獣人から人間への差別も存在する。


 いろいろと考えても仕方ない。とりあえずこれからどうしよう・・・。明日になれば、能力が復活するので、そうしたら魔法で現在の位置も確認できる。


 今は、どこかの森の中にいるみたいである。今の私は無能力者なので、このまま森の中にいるのも危険だ。魔獣など出てきたら、即魔獣の餌になってしまう危険があるからだ。


 私は周りをみわたすと少し離れたところに、道のようなものが見えたので、そこに向かってテクテクと歩き出した。


 これはちゃんと舗装された道だ。これを辿って行くと町があるに違いない。


 さてどちらの方向に行こうかな。北へ向かう道の方向の方が、森がひらけていく感じがしたので、私は北方向へ進むことにした。


 しばらく歩いて行くと、森から抜け出てることができた。このまま道なりに進んでいくと、必ず町にたどり着くに違いないと信じて、そのまま1人でテクテクと歩き出した。


 森から出て、歩くこと40分、やっと小さな町が見えてきた。


 これでなんとか無事に、1日を乗り切れそうだ。お金も何も持っていないから、町の近くで野宿でもしたら問題ないだろう。


 とりあえず、寝るまでにまだ時間があるので、町でも探索してみよう。それにかなりお腹も空いているので、何か食べるの物にありつけないか調べてみよう。


 町に入るには、正面の門から入らなければいけない。そこで入場の許可をもらうみたいだ。身分証は冒険者組合、商業者組合、王国、領主、などから発行される。


 身分証のない者が、町に入るには、門の横の部屋で簡単な審査を受けることになる。私は9歳の小さい亜人の子供。特に害をなさないと判断されたら、町に入れることができるはずだ。

 

 私は門のところへテクテクと歩き出した。そんなに大きな町ではないので、並んでいる人もいない。



 「おい、亜人の子供、お前はこの町に何しに来たんだ。お前みたいな亜人を、この町に入れることはできないぜ」



 ここはハズレの町だったみたい。亜人の差別が酷いところだ。ここは問題を起こさずに引き返したほうがよさそうだ。



 「はい。わかりました門兵様」



 少しでも相手の機嫌を悪くしないように対応して門から離れようとした。



 「ちょっと待て、亜人のガキ」



 もう1人の門兵が私を引き止める。



 「このガキ、亜人だが見た目はそんなに悪くないぞ」


 「お前は亜人の子供なんか好きなのか?」


 「そうじゃない。こういうガキを好きな特殊な趣味のヤツもいるということだ」


 「そういうことか。高く売れるかな?」


 「たぶんな。運がよいことに、このガキは1人だ。俺ら2人がかりなら、捕らえることができそうだな」



 亜人は人族に比べて力は強い。でもわたしは10歳の子供。戦闘訓練を受けた大人2人では勝算はない。


 しかも私は亜人でもなく今は無能力者だ。しかもレベル1の村人にタコ殴りにされるくらい弱い。これは非常にヤバイ町に来てしまった。今の私では走って逃げてもすぐに追いつかれてしまう。


 さてどうしようかな・・・

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