第11話 人界へパート3

          


 しかし、私には逃げる事しかできない。私は森の方へ逃げるのは危険だと感じた。森へと繋がる道には誰もいない。そう、助けを呼ぶことができないのである。


 もしかしたら、町の人も亜人が嫌いで、助けてくれないのかもしれない。しかし誰もいない森の方へ、逃げるのはとても危険だと感じた。なので私は門を通って町の中へ逃げることにした。もしかしたら、私を助けてくれる人がいるかもしれないと信じて・・・。



 「誰か助けてください。門兵の人が私のことを連れ去ろうとしてます」



 と叫びながら私は、全力で町の中へ走って逃げていった。



 「そこの亜人止まりやがれ。亜人風情が、この町に入ることは許さないぞ」



 すごい勢いで門兵は、私を追いかけてくる。


 門兵はまさか、町の中へと逃げるとは思っていなかった。亜人なら仲間がいてそうな森へ逃げると思っていたからである。その為、少し行動が遅れてしまっていた。



 「助けてください。助けてください」



 私は、叫びながら必死に逃げた。


 しかし子供の足では、大人から逃げることなんて出来なかった。


 私は門を抜けて、すぐのところで簡単に取り押さえられたのであった。



 「この亜人がぁ。逃げられると思っているのか?町に逃げ込んだからといっても、お前なんか誰も助けてくれないぞ!」


 「助けてください。私は何も悪い事は、していません」


 「何を言ってるんだこの亜人は、亜人であることが悪いことなんだよ!」



 やはりこの町は、ハズレの町だったみたいだ。私が助けを求めても誰も助けてはくれない。町の人たちは、見て見ぬふりをするか、こちらを見てニヤニヤ笑っている人かどちらかである。



 「助けてください。助けください。私は何も悪くはありません」



 それでも私は叫び続けたのである。



 「うるさいぞこの亜人め。少しは黙りやがれ」


 

 そういうと門兵は、おさえつけていた私のお腹を蹴っ飛ばしたのである。


 なんで私はこんな目に合わないといけないの。明日まで魔王城にいることができていたら、お母様に全てを話して、また家族で仲良く過ごせたはずなのに。


 私はお腹も蹴られた痛みよりも、自分の境遇が悲しなり、涙が溢れて出てきたのであった。



 「助けてください。助けてください」



 それでも諦めずに私は、泣き叫びながら助けを求めた。



 「うるさいぞ、泣こうが叫ぼうが、誰も亜人なんか助けるものか!」



 そういうと門兵たちは、さらに私に蹴りを入れるのであった。

 


 「何をしているのかしら?」



 長い黒髪の背の高い綺麗な女性が、門兵に声をかけた。



 「うるせぇー。この亜人が勝手に町に入ったから、痛めつけてやってるだけだ」


 「そんな小さい女の子を、大人2人でおさえつけて蹴飛ばすなんて、やりすぎじゃないの?」


 「うるせぇー。亜人なんて、なにをされても当然じゃないか」


 「それはおかしいです。この国の王は、亜人も獣人も人間も同じ人界の民であり、平等に接するように言っています。あなたがたは、国王に意向に背くつもりなのですか?」


 「それは…」


 「その女の子が、勝手に町に入った罰はもう充分に受けたはずです。だからその女の子を解放してもらいます」


 「うるせえなぁ。俺を誰だと思っている」


 「お前は…」



 門兵の顔がみるみる青くなっていく。



 「ちぇっ、解放してやる」


 「私がその女の子の面倒をみますので、この町への入場許可をもらってもよいですか?」


 「好きにしたらいい」



 門兵は、そう言うと、町の門へ戻っていった。



 「大丈夫ですか?」


 「はい。ありがとうございます」


 「私は、仲間と一緒に、その宿屋に泊まっているので、そこで治療をしてあげます。それに、今日泊まるところが決まってないのなら一緒の宿屋に泊まりましょう」


 「亜人の私が宿屋に入っても問題ないのですか、助けてもらったうえに、ご迷惑をかけたくありません」


 「大丈夫ですよ。あそこの宿屋の主人は、国王の意向に理解のある方です」


 「でも私お金持っていないので、宿賃払えないです」


 「お金なんて気にしなくていいのよ。私が出してあげるから」


 「何から何まで、ホントにありがとうございます」



 ハズレの町だと思ったが、とても親切な人と出会えて私はとても嬉しかった。



 「くぅぅーー」



 私は安心して気が緩み、お腹の音が鳴ってしまった。そういえば、ずっと何も食べてはいなかった。



 「お部屋代だけじゃなく、食事もご馳走してあげるね」



 と笑いながら言って、私を助けてくれた女性は私を連れて宿屋に向かったのであった。




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