第110話 武闘大会パート11
ヘラは圧勝でレノアを倒して決勝進出を決めた。これで、明日の武道大会の決勝戦は、ライアー対ヘラに決まった。
観客席からは、ポロン王女はわざと負けたのではないか?と疑問に思う者は多数いたが、王族専属治癒士の声明により、国民達は納得したのであった。
ポロンさんは、昨日のバトルロワイヤルのプリンの食べ過ぎの前科もあり、国民はすんなりと受け入れたのであった。
「ポロンと戦いたかったのに、ライアーになってしまったわ」
「ライアーお兄様が相手なら、もう勝ちは決まったみたいのものですね」
「張り合いがないわ。全力で戦える相手が欲しかったわ」
明日の決勝は、誰しもがヘラの優勝で決まりだと思っている。ラッキーで勝ち上がった、ライアーが、ヘラに勝てるとは誰も思うははずがないのであった。明日の決勝は、ヘラがどれだけ早く、ライアーを倒すのかを国民は予想していた。
夕食の時間、ポロンさんとライアーの姿が食卓にはなかった。
「ポロンが、晩御飯を食べないなんて珍しいわ」
「ほんと、そうね。子供の頃から1番に食卓に来て座って待っている子だったのにね」
「まだ、お腹の調子が悪いのかしら」
ヘラとオーブリーがポロンさんの体調を心配している。
「ポロンは大丈夫よ。今日は少しゆっくりしたいと言っていたわ」
サブリナ王妃が答えた。
「はぁーー、はぁーー」
「思うように、魔力をコントロールできないぜ」
「初めは、そんなものです。私もコツを掴むのに、かなり時間がかかりました」
「しかし、魔力を集めるのではなく、解放とはそんなこと誰も言わなかったぞ」
「私も、仲間のルシスちゃんに言われるまでは、考えもしなかったです」
「自分の魔力は、自身の防御、身体力強化にあてて、魔法、矢などの武器強化は、妖精の力を使えばいいのだな」
「はい。その方が効率が良いです。お兄様の妖精グレムリンは風を使うのが得意なはずです。身体強化と、グレムリンの風を使って、スピードで相手を撹乱するのが良いと思います」
「そうだな、俺は逃げることだけは得意だからな」
「お兄様、笑わせないでください」
ライアーが契約した妖精はグレムリンである。グレムリンは悪戯好きな妖精であり、風を操って物を飛ばしたり壊したりする。グレムリンは風魔法に特化していて、矢のスピードを早めたり、風を使って、攻撃をはね返したり、様々な使い方がある。ライアーは、日々の訓練を、今までサボっていたため、グレムリンの能力をうまく使いこなせていないが、風魔法と使って逃げることに関して得意であった。
「もう、0時です。明日の試合のためにも、もう寝た方がいいですよ」
「いや、ダメだ。納得いくまで特訓をしたい。1日頑張ったくらいでは、何も変わらないのはわかっている。しかし、限界までがんばりたい。俺は1人で特訓をしているから、ポロンはゆっくりと休んでくれ」
「お兄様、何を水臭いことを言っているの。最後まで付き合います」
ポロンさんとライアーの特訓は、日が昇るまで続いたのであった。
「武道大会決勝戦を行います。ライアー選手入場してください」
ライアーが舞台の登場すると、客席からは罵声がなり響く。
「どうせ、買収でもして、勝ち上がったんだろ」
「武道大会を汚すなー」
「反則やろーー」
「ライアー、引っ込め」
罵声を飛ばすのは、ほとんどが、王族関係者か遠縁のものである。それほど、ライアーは嫌われているのであった。
「お静かにお願いします。続いては、2戦とも圧勝で勝ち進んできた、今大会の優勝候補、ヘラ選手入場してください」
「ヘラ王女様ーーー」
「きゃーーー」
「勝ってくだい」
「素敵ですわーーー」
ライアーとは打って変わって、黄色い声援が会場を包み込む。ヘラは、国民から絶大なる支持を得ている。ヘラは、美人で強くて頭もいい。そして、何よりも国民を愛し、国家の事業には進んで参加して、日々国の為に取り組む姿勢を、みんなが見ているのであった。
「ライアー、悪いけどすぐに終わらせるわ」
「俺は、全力で迎え撃つだけです」
ヘラは、少し違和感を感じた。いつものライアーとは何か違うと・・・
「それでは、決勝戦を始めます。広場に降りて戦闘準備に入ってください」
「カラン、カラン、カラン、カラン」
開始の鐘が鳴った。ヘラは、すぐにライアー目掛けて弓を放つ。しかし、ライアー瞬時に障害物の岩に隠れる。
ヘラの妖精は、ジャックフロストである。氷魔法が得意であり、どんなものでも凍らせて、破壊することができると言われている。
ヘラは、ライアーが隠れている岩に目掛けて氷結の矢を放つ。岩は瞬時に凍りつき、そして、2本目の矢が凍り付いた岩を粉砕する。
姉の能力を知っているライアーは、すぐに別の岩陰に隠れる。それを、またヘラが氷結の矢で粉砕する。
「ライアーは逃げるのだけは得意だな」
「逃げてばっかりじゃ、面白くないぞ」
「ちゃんと戦え」
観客席からヤジが鳴り止まない。
ライアーもわかっている。このままでは、逃げるだけで、何も攻撃をせずに終わるだけである。しかし、ライアーは無理をしない。自分にできるのは、逃げて、逃げて、少しでも、ヘラがスキを作るのを待つことしかないのである。
「いつまで逃げているんだ」
「もう岩がなくなるぞ」
「もうトドメを刺してやれ」
「八百長をしないと何もできないクソ野郎め」
観客席からのヤジはエスカレートしていく。しかしライアーは気にしない。いや、言われて当然だと思っている。今までの自分は、親の権威の下で偉そうにしてきた。自分にできないことは、お金で解決してきた。自分は、何も能力はないのに、親が国王ということで、散々偉そうなこと言ってきた。なので当然の結果だと思っていた。
「俺は、いつも辛いことから逃げてきた。魔力量が少ないから、魔法の訓練をサボり、格闘センスがないから、弓、剣術の訓練も疎かにしたきた。でも、俺は、親父のように立派な王に憧れていた。俺も親父のようになりたと・・・・だからもう自分から逃げない。どんなにバカにされようが、俺のできる戦い方をするだけだ」
ライアーは、ヘラの攻撃を必死に回避した。唯一の得意であるスピードで、しかし、ヘラの攻撃で、逃げる岩も、もうなくなってしまった。
ヘラは強い。そして勤勉である。いかに自分より格下とわかっていても、スキなど作るわけがないのであった。どんな戦いでも、手を緩めてスキを作るほど愚かではなかった。
「ライアー、あなたにしてはよく頑張ったわ。もう逃げる場所はないわ。決着をつけましょう」
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