第109話 武道大会パート10
今日は武道大会の2回戦が行われる。ポロンさん対ライアーそしてヘラ対レノアの試合である。1回戦を観戦した国民からは、ポロンさん優勝の声が高い。次にヘラである。
「ポロン、ライアー相手でも手加減せずに瞬殺してもいいのよ」
「はい。お姉様」
「決勝は2人で戦いましょうね」
「そうなるいいですね」
「私はレノアに負ける気はしないわ」
「いえ、私がお兄様に勝てるかわかりません」
「何を言ってるのよ。買収しなければ勝てないライアーなんて、相手じゃないはずよ」
「そうですけど・・・」
「兄だからと言って気を使わなくてもいいのよ。武道大会は神聖な戦いなのよ。それを買収行為を行うライアーに遠慮はすることはないのよ」
「お姉様わかりました」
「これより武道大会の第2回戦を行います。ライアー選手、ポロン選手入場してください」
ライアーは、目を泳がせオドオドした態度で入場した。精霊神の加護を手にしたポロンさんにかなりビビっていた。ライアーは棄権しようかとも考えていた。しかし、国王を目指しているので、逃げるわけにはいかないのであった。
ポロンさんの圧倒的な強さは、もう国民達は知っている。もしライアーが棄権したら、必ず逃げ出したと思われるのである。ならば、試合に負けても参加した方が印象が良いとライアーは判断したのであった。
「ポロン、強くなったみたいだな。手加減なしでかかってきてもいいぜ」
ライアーは、震えながらも兄らしくカッコよく言葉をかけた。
「強くなれたのは、お兄様のおかげです。私の修行の成果を見てください」
「あ・・・ああ。ゾンブンニ、ミ、ミセ・・・テ・・モ・モラウ・・・ゾ」
ライアーは、ガクガクと震えながら答えた。カッコつけたのは失敗したと後悔したライアーであった。
「試合を開始します。両選手配置についてください。鐘の音がなったら試合開始です」
2人は、舞台から降りて円形の広場に向かった。
「カラン、カラン、カラン、カラン」
試合開始と共に、広場は爆音が響きバトルロワイヤルの時と同様に、無数の炎が広場を覆い尽くす。そして、会場には熱風が吹き荒れる。
しかし、バトルロワイヤルの件を知っているので、この炎は幻影であり、実際はそれほどの暑さではないと思っているので、観客達は静かに試合のいく末を見ていた。
10分後、無数の炎は消えて元の綺麗な広場に戻っていた。そして広場の中央で、お腹を抑えて倒れているポロンさんがいた・・・・
「何が、起こったのでありましょうか」
審判がポロンさんに駆け寄る。そして、しばらくしてアナウンスが流れた。
「勝者はライアー選手です。ポロン選手は、昨日食べたプリンという食べ物で、お腹を壊してしまい戦闘不能になりました」
会場からはものすごいブーイングが鳴り響く。
「ポロン何をしているのよ。また昔の悪い癖が出たのかしら」
ポロンさんは、子供頃から大事なことがある時は、いつも失敗をしていた。16歳の誕生日の妖精の契約の時も、お酒を飲んで寝坊した。なので、姉のヘラはまたポロンさんが何か失敗をしたのかと思っていた。
「ポロン・・・これで本当に良かったのか」
「あなた、ポロンは王位には全く興味もないし、国民から何を言われても気にする子じゃないわ」
「そうだな。ポロンは、旅の修行で心の強さも手に入れたみたいだ」
ポロンさんが、旅で手に入れてのは心の強さではなく、心の図太さであることを国王は知らない。
広場が無数の炎で包まれている時に、ライアーは頭が真っ白になり岩陰に隠れて震えていた。
「お兄様、大丈夫ですか。炎の暑さは最小限にとどめているので、火傷など体への影響はありません。蒸し暑い小屋に閉じ込められている感じです」
「そ・そうなのか・・俺にトドメを刺しにきたのか」
「いえ、違います。私はお兄様に国王になって欲しいので負けることを伝えにきました」
「本当にいいのか」
「はい。私は国王には興味はありません。それに大好きなお兄様に国王になって欲しいのです」
「俺でいいのか」
「もちろんです。お姉様と協力してエルフの国を守ってください」
「俺は、ヘラお姉様には軽蔑されているぞ」
「知っています。でもそれは誤解があるからです。きちんと話し合えば理解し合えるはずです。だって家族ですから」
「・・・・・・俺は、不正をして勝ち上がったんだ」
「聞いています。それは、お兄様には交渉能力高いから出来たのです」
「違う。親のお金のおかげだ」
「そんなことはありません。私は、お兄様のアドバイスのおかげで強くなりました」
「違う。俺は・・・お前の強さに嫉妬してこの国から追い出したんだ!」
「その言葉が本当であったとしても、私は、お兄様のアドバイスで救われました。お兄様が、アドバイスをしてくれなかったら、私は心が弱いままでした。お兄様も自分のしたことを後悔するのではなく、今後どうするのかを考えたら良いと思います」
「俺には、ヘラお姉様やポロンみたに才能も魔力も少ない・・・頑張っても無理だ」
「そんなことはありません。魔力は使い方さえわかれば、いくらでも応用ができます。私も、仲間のアドバイスのおかげで魔力コントロールが上手くなりました」
「魔力コントロール・・・」
「はいそうです。すぐには魔力をコントロールするのは難しいと思います。私もまだ完全にコントロールできていません。でも努力したら、努力した分は強くなります。お兄様なら、もっと強くなれるはずです」
「俺に・・・できるのか」
「私の大好きなお兄様なら大丈夫です」
「ありがとう。俺は・・・強くなりたい。そして、お父様のようなみんなから尊敬される強い国王になりたい」
ライアンは心から叫んだ。今までの不甲斐ない自分を、ポロンさんは軽蔑することも、怒ることもなく、大好きな兄と呼んでくれた。なのでライアーは素直にポロンさんに、自分のした不正を告白し、自分の弱さ、そして、国王になりたい気持ちを打ち明けたのであった。
「お兄様、強くなりましょう。そして、お父様のような偉大な国王になりましょう」
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