第354話 魔石国家ケルト王国編 パート24


 「空を飛べるのか!」



 この人界で空を飛ぶことできる種族は限られている。しかも人間に至っては、魔法で空を浮遊することはできるが、自在に空を飛べる者はほとんどいない。



 「飛べるのですぅ」


 「魔法か・・・いや、違うな。魔石具でも空を飛ぶのは不可能だ。もしかして、貴様も神人に能力を授かったのか!」



 ダグザは警戒している。目の前でオグマが敗れ、そして炎の翼を持った少女が現れた。ダグザは自分の力に過信していたオグマと違って、慎重に状況を判断しようとしているのである。



 「神人?知らないですぅ。私の力はリプロ様から授かったのですぅ」



 フェニは嬉しそうに言った。



 「リプロ様・・・あの少年のことか。あの少年にそんな力があるのか?」



 ダグザは、僕の方を見て何か考えているようだ。



 「あの少年は神人ではないはずだ。もし神人ならテウス様から連絡があるはずだ。なら、あの少年は何者だ?人間ではないのか・・・」



 「ダグちゃん、勝負を始めるよ!」



 フェニは考え込むダグザに少しイライラしてきた。



 「そうだな。今は戦闘に集中しよう。これは殺し合いではなくあくまで試合です。どちらかが負けを認めた時点で勝負が終わります」


 「わかったですぅ」


 「では、リプロさん。開始の合図をしてもらっても構わないですか?」


 「いいよ。それでは、試合を始めまーーーす」



 僕は大きな声で試合の開始を告げた。



  「全力でいきます」



 ダグザの白銀の鎧から燃え盛る炎が現れた。燃え盛る炎はダグザを包み込み大きな火の玉となった。燃え盛る大きな炎の玉がフェニに向かって転がってくる。



 「ヨイショ!」



 フェニは掛け声を出して、ぴょんと飛び跳ねて火の玉に飛び乗った、そして、火の玉に乗って楽しそうにしているのである。



 「面白いですぅ」



 フェニが、火の玉に乗って両手を広げてバランスと取りながら、闘技場の舞台の上を縦横無尽に転がる火の玉に乗って喜んでいる。


 僕は、フェニにフェニックスの能力の使い方を丁寧に教えてあげていた。初めは、フェニックスの能力を使いこなすには、フェニには少し早いと思っていたので、フェニックスの能力を与えたことは内緒にしていた。しかし、フェニは自分でフェニックスの能力を少しずつ使えるようになっていたので、アドバイスをしてあげたのである。


 不死鳥フェニックスは火の鳥である。なので、フェニには炎への絶対耐性がある。しかし、きちんとフェニックスの力を使わないと、炎に負けて丸こげになってしまう。そして、フェニの魔法は炎系がメインでありヘルフェアーを得意としているが、今のフェニの実力なら炎魔法の最上級魔法インフェルノファイヤーを使うことができるはずである。ダグザは炎の魔石具の使い手なので、フェニのフェニックスの能力を試すのにちょうどいい相手なのである。



 「ケタケタ・ケタケタ」



 フェニの笑い声が闘技場に響き渡る。



 「俺の火の玉で遊んでいるのか・・・信じられない。この炎の魔石具は、鉄でさえ一瞬で溶かす2000度の高温を発する奇跡の炎だぞ。近くいるだけでも熱さで何もできないはずなのに」



 ダグザは、激しく転がってフェニを振るい落とそうとする、しかしフェニの並外れたバランス感覚でそれを防いでいた・・・かに見えた。



 「フェニ・・・ズルをしたらダメだよ!」


 「バレちゃいましたか!」



 フェニは恥ずかしそうに言った。


 フェニは曲芸師のように火の玉をバランスよく乗っていたのではなく、炎の翼で飛びながら火の玉に乗っていたのであった。だから、ダグザが縦横無尽に激しく転がっても火の玉の上に上手に乗れていたのである。


 しかし、ダグザはそのことに気づいてはいないので、激しく転がり過ぎてそのうち目を回して倒れ込んでしまった。


 白銀の鎧からは炎が消えて、失神したダグザが横になっている。



 「ダグちゃん!ダグちゃん!」



 フェニはダグザを激しくふさぶって叩き起こす。



 「俺は意識を失っていたのか・・・」


 「そうですぅ。もう回転ごっこはやめた方がいいですぅ。違う勝負をするのですぅ」



 ダグザにとっては真剣な攻撃であったが、フェニにとっては遊びの一種であった。



 「なぜ俺の炎が効かないのだ?仕方がない・・・それならこれを使うしかないな」



 ダグザは、もちろん奥手のを用意していた。最初から必殺技を使うような空気の読めない男ではないのである。



 「これは太陽の魔石具だ!さっきの炎の魔石具は2000度という鉄をも簡単に溶かす高温だったが、太陽の魔石具はその3倍の6000度の炎を出すことができるのだ。フェニさん棄権するなら今のうちですよ。太陽の魔石具を使えば、確実にあなたは死にますよ!」



 ダグザの目的はフェニを殺すことでない。『ホロスコープ星国』の力量を見ることである。なので、太陽の魔石具を使うつもりはなかったのである。



 「問題ないですぅ。どんと来いですぅ」



 フェニは笑顔で言った。



 「リプロさん、いいのですか?研修施設で死人は出したくないのですが・・・」


 「問題ないよ。フェニに太陽の魔石具は通用しないよ」



 僕もフェニもダグザの心優しい忠告を断る。



 「そうですか・・・それなら仕方ありません。太陽の魔石具を使わせてもらいます」



 ダグザは白銀の鎧に太陽の魔石具を設置した。すると黒炎がダグザの体を包み込んだ。そして、真黒な炎を上げた太陽球がフェニに向かって転がってきた。



 『インフェルノファイヤー」


 

 フェニは両手を太陽球に向けて魔法を唱えた。するとフェニの両手から白い炎が現れて太陽球の黒炎に向かって放たれたのであった。

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