第355話 魔石国家ケルト王国編 パート25


 フェニの『インフェルノファイヤー』の白炎に飲み込まれたダグザの太陽球は一瞬で鎮火した。



 「何が起こったのだ・・・」



 ダグザは、なぜ炎が鎮火したのかわからない。



 「魔石具が故障したのか?それとも、不良品だったのか?」



 ダグザは冷静に状況を判断しているが的外れな考えだった。



 「ダグちゃん、もう白銀の鎧はないのですぅ」



 ダグザは白銀の鎧に魔石具をセットして全身を炎に変えていた。しかし、フェニの『インフェルノファイヤー」によって、白銀の鎧は溶けて無くなったのである。



 「本当だ・・・俺の白銀の鎧はどこへ消えたのだ?」


 「私が溶かしたのですぅ。『インフェルノファイヤー』は1億2000度もあるのですぅ。ダグちゃんの太陽の魔石具の炎では、私に勝てないのですぅ」


 「1億2000度だと!そんなのありえない。俺の太陽の魔石具はテウス様が天界から持って来られたレアの魔石具だ。それを凌ぐ魔法など人界に存在しないと聞いているぞ」



 ダグザは声を荒げて言う。



 「本当ですぅ。ダグちゃんを殺さない為に瞬時に魔法を消去したので熱さを感じなかったけど、『インフェルノファイヤー』はものすごく熱くて危険なのですぅ」


 「俺は信じないぞ」


 『インフェルノファイヤー』



 フェニは人差し指から、小さな白い炎の球を撃ち放った。小さな白炎球はダグザの頭上付近で止まった。白炎球から激しい熱気がダグザを襲う。白炎球の熱気に全て水分を奪われ、ダグザはシワシワになって倒れ込む。



 「ボウボボウネウウ」



 ダグザは声にならない悲鳴を叫ぶ。


 

 「フェニちゃんの勝利みたいね」



 地底国家から戻ってきたリヴァイアサンが、フェニの勝利を確信して水球をダグザに放った。


 シワシワになったダグザは水分を得て、元の姿に戻った。



 「助けてくれたのですか・・・」



 ダグザはリヴァイアサンに尋ねる。



 「そうね。私たちはこの国と争いに来たのではないからね」


 「そうですぅ。私がダグちゃんを殺したらケルト王国と戦争になってしまうですぅ。戦争はしたくないのですぅ」


 「懸命な判断だと思います。さすがリヴァイアサン様」



 レオはリヴァイアサンを褒める。



 「私も褒めるのですぅ」



 フェニは、レオがリヴァイアサンばかり持ち上げるので少し拗ねている。



 「たくさんの魔石具を見せてくれてありがとう。その魔石具を君たちに渡したテウスという神人に会わせてもらえませんか?」



 天界の民である神人のテウスが、この国に介入していることはダグザの証言でわかった。そして、その証拠である魔石具の性能も確認することができたので、人界に過度な介入をした神人を、僕は放置することはできないと思った。



 「テウス様はただいま外出中です。いつ戻られるかわかりません」



 ダグザの魔力の流れから嘘を言っている感じはしない。



 「わかりました。2、3日この町に滞在するので、テウスさんが戻られたら、会わせてもらってもいいですか?」


 「私の一存では決めることはできません。しかし、テウス様には私からきちんと報告はさせてもらいます」


 「ありがとうございます。連絡をお待ちしております」



 僕はダグザに泊まっている宿屋を教えた。



 「結局、魔石具の使い方を教えることはできませんでしたが、それでよかったのでしょうか?」


 「どんな魔石具があるのかわかったので満足しているよ」


 「特訓できたからよかったですぅ」


 「オグマを捕獲できたから目的達成ですわ」


 「リヴァイアサン様が居ているとこならどこでも付いて行きます」



 みんな、それなりの収穫はあったのである。



 

 ⭐️表天界に場面は代わります。



 「アプロディーテー様、キュテラ教国を守ればいいのですね」


 「そうです。あの国は私のことを女神だと崇めてくれている国です。プロメーテウスが力を授けた者がキュテラ教国を滅ぼしに向かっているはずです。キュテラ教国は平和と愛を重んじる素晴らし国です。なので、軍事力はほぼ皆無です。軍事費を全て福祉に回して、全ての国民の生活向上するの努めている理想的な国家です。だから、私が守ってあげないと簡単に滅ぼされるでしょう」


 「わかりました。キュテラ教国に少しでも立ち入れば、私がプロメーテウスの軍隊を瞬時に殲滅してみせます」


 「アプロス、任せたわよ」


 「かしこまりました」



 アプロスはアプロディーテーに能力をもらった神人の女性である。アプロスはキュテラ教国を守るために表天界から人界へと向かった。



 表天界の天界城にて。



 「プロメーテウス、人界でかなり派手な動きをしているみたいだな」


 「そんなことはありません。魔石具の調子を確かめているだけです」


 「ウーラノス様は、人界へはなんの興味がないから問題はないかもしれないが、派手に暴れると魔界から目をつけられるぞ」


 「問題はありません。もし、魔族が邪魔をするようでしたら、私の下僕の魔石具団の団長たちが追い払ってくれるでしょう」


 「プロメーテウス、そういう問題ではない。魔界との争いを避けたいのだ!いくら魔族が腰抜けでも油断すると痛い目にあうぞ」


 「油断などしておりません。もしもの時の為に最高級の魔石具を魔石具団の団長には支給しています。たとえ魔王が現れても問題はないと思います」


 「そうか・・・それなら問題はないが、あまり派手に動くなよ。特にキュテラ教国には手を出すな!あの国はアプロディーテー様を崇拝している国だ」


 「わかっています。なので、私は手を下しません」


 「そうか。それなら問題はないだろう。アプロディーテー様を絶対に怒らせるなよ」



 表天界の神王であるオーディンは、プロメーテウスの動向を心配しているのであった。


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