第378話 フェニ魔界へ行く編 パート7


 「なんてモチモチで美味しいパンなのかしら!こんな美味しいパンは魔界には存在しないわ」



 エルヴィラは、パンを大絶賛した。



 「僕にも食べせてよ」


 「僕も!!!」



 チルドとレインが手を差し出して私にせがむ。



 「どうぞですぅ」


 

 チルドとレインは私からパンを受け取って、すぐにパンにかじりつく。



 「本当だぁー。こんなモチモチ食感のパンは生まれて初めて食べたよ」


 「僕もだよ。フェニちゃん、人界ではこんな美味しいパンがいつでも食べれるのですかぁ」



 チルドが羨ましそうな目で私を見ている。



 「このパンは特別なのですぅ。このパンはガリアの町の神人が考案したパン窯で焼かれたパンなのですぅ」


 「そうなんだ・・・魔界でもこのパンを再現できたらいいのに・・・」


 「できるのですぅ。リプロ様はこの美味しいパンを焼ける窯を再現できるのですぅ」


 「あいつにそんな特技があったのか・・・チルド、どうする?」


 「リプロにパン窯を作ってもらうのは、僕のプライドが許さないが、このパンを再現できればフェニちゃんを喜ばせることが出来るはずだよ」


 「僕もそう思うよ。お父様からはリプロとは仲良くするなと言われているけど、フェニ嬢を喜ばせるためにも、リプロにパン窯を作ってもらえるようにお願いしよう」


 「そうだね。そして、フェニちゃんのパン屋を魔界でオープンさせよう!」


 「それは名案だ!フェニ嬢、あなたのために僕たちはパン屋さんを作ることにしたよ。ぜひその店の店主になってください」



 チルドとレインはフェニのために魔界でパン屋を作ることにした。



 「えっ・・・私のお店ですぅか?」


 「そうです。いつでも好きな時にパンを食べれるように僕たちがフェニちゃんのパン屋を作ることにします。資金面は全て僕たちが用意します。もちろん職人も店員も用意させていただきます」


 「それは面白そうね。こんなに美味しいパン屋できたら繁盛すること間違いなしだわ」



 エルヴィラは乗り気である。



 「私がパン屋のオーナーになるのですかぁ?」


 「そうです。パン屋を拠点として魔界で暮らすというのはどうでしょうか?それなら、僕たちはいつでもすぐに会いに行けます」



 チルドがニヤニヤしながら言った。



 「フェニがパン屋を開くのはいいことかもしれないね!」



 私たちがパン屋を作ることを話していたら、リプロ様が姿を現した。



 「リプロ、本当にこの美味しいパンを焼くことができる窯を作れるのか!」



 リプロ様の姿を見たチルドが威勢良く大きな声を上げた。



 「もちろんだよ。人界でもいろんなところに設置してきたよ」


 「それなら、お前に俺たちがフェニちゃんのために作るパン屋の窯を作ることを許可するぞ」



 チルドは上から視線でリプロ様に命令した。



 「そうだぞ。フェニ嬢のために無償でパン窯を作る許可を与えてやる」



 調子に乗ってレインも上から視線で命令した。



 「いいよ。フェニのためなら無償で作ってあげるよ。ついでにパン屋も作ってあげてもいいよ!」



 リプロ様は、チルドとレインの失礼な態度を全く気にしていない様子である。



 「本当によろしいのでしょうか?私のために無理はしないでください」



 私はリプロ様の優しさに全面的に甘えたくはない。



 「フェニ、気にしくていいよ。僕もフェニの魔界での拠点が必要だと思っていたのだよ。実はフェニが使っている今の魔王城の部屋は、僕のお姉ちゃんの部屋で、カァラァお兄ちゃんはお姉ちゃん以外の人が部屋を使うのを嫌がっているのだよ。だから、チルドとレインの意見に賛成したのだよ。もちろん費用は僕が出すよ。それに、エルヴィラも連れて行くといいよ」


 「リプロ様の命令なので、私もフェニちゃんのパン屋で働かせてもらいます」



 エルヴィラは嬉しそうに微笑んだ。



 「リプロ!費用は僕たちが出すよ」


 「そうだ!そうだ!」



 チルドとレインは私の前でカッコつけたいのでリプロ様の支援を断る。



 「パン屋さんは魔王城のそばに作るので、君たちの予算では払うことはできないよ」



 魔王城の近くの土地はかなり高い。いくら王族関係者でも子供が買えるような値段ではないのみたいである。



 「お前でも無理だろ?」



 突っかかるようにレインは言った。



 「僕の土地を利用するから問題ないよ」



 魔界は魔王の土地であるので、土地の費用はリプロ様には関係ないのである。



 「ぐぬぬぬぬ・・・」



 

 悔しそうにチルドとレインはリプロ様を見ている。



 権力・財力・能力など全ての点で王族と王族関係者はかなりの開きがあるのであった。



 「早速、フェニのパン屋を作ってあげるよ。エルヴィラ・ダスピルクエットも手伝ってくれるかな?」


 「もちろんでございます」



 魔界ではリプロ様のそばにいつもダスピルクエットは付いている。リプロ様を護衛するように少しも側から離れることはない。



 リプロ様達は、数時間でパン屋を作り上げた。そして、私の要望に沿って内装を仕上げてくれたのであった。



 「ここが新しいフェニのお家だよ。魔界ではここで暮らすといいよ」


 「ありがとうございます」



 私は3人に頭を下げた。



 「近いうちに営業ができるように、職人達を用意してあげるね」


 「ちょとまった!」



 チルドとレインが大声あげた。



 「どうかしたのかい?」


 「僕たちを雇ってください!」



 チルドとレインは私のパン屋で働きたいリプロ様に懇願するのであった。


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