第377話 フェニ魔界へ行く編 パート6


 フェニは魔王城の客人として、しばらくは魔王城で過ごすことが決定した。魔王城にはたくさんの部屋があるが、お母様がフェニに与えて部屋は、ルシスお姉ちゃんの部屋であった。5歳の時の悪魔との契約の日以来、お姉ちゃんの部屋の明かりが灯ることはなかった。いつか元気になってお姉ちゃんが戻ってくると信じて、5年間毎日掃除をして、部屋はピカピカの状態である。人界へルシスお姉ちゃんを逃した後も部屋は綺麗に保たれている。


 フェニがお姉ちゃんの部屋を使うと知ったカァラァは、お母様に抗議をしたが、聞き入れてくれなかった。僕は、複雑な気持ちだった。久しぶりにお姉ちゃんの部屋の明かりが灯った時は、とても嬉しく感じた。しかし、お姉ちゃんが帰ってきたわけではない。でも、ずっと使われずに明かりが灯らないのも寂しいのである。


 お母様がフェニにお姉ちゃんの部屋を使うように言ったのは、僕と同じ気持ちで、お姉ちゃんの部屋に灯りを灯したかったのだと僕は思った。


 フェニは、魔界へ来てかなり緊張していたみたいで、夕食を食べ終えるとすぐに部屋に戻って眠りについた。明日からは僕と一緒に特訓をするので、少しでも疲れを癒したいと言っていた。


 僕も久しぶりに自分の部屋で眠れるので、すぐにベットに横になって早めの就寝をした。




 次の日。



 僕は、早く寝たはずなのに起きたのは昼前であった。



 「もう、こんな時間だよ。なんで起こしてくれなかったの?」


 「気持ち良さげに寝ていましたので、寝顔をずっと眺めていました」



 ダスピルクエットは僕専属のメイド兼護衛者である。なので、余程のことじゃない限り魔界では絶えず僕の側から離れない。



 「今日からフェニの特訓をすると言ってたじゃないか?」


 「そうですね。でも、昼からでも問題ないと思いました。人界へ行って疲れていると思いましたので、ゆっくりと休むべきだと私は判断しました」


 「明日からはちゃんと起こしてね」


 「わかりました」



 僕は部屋を出てフェニの部屋に向かった。しかし、フェニの姿はなかった。



 「フェニさんは、朝早くから外出したと聞いています」


 「えっ・・・どういうことだよ!フェニが1人で魔界で外出できるわけがないよ」


 「詳しくはレジーナ王妃に確認してください」


 「わかったよ」



 僕は急いでお母さまのところへ行った。




 「お母様、フェニはどこへ出かけたのですか?」


 「あら、リプロ。朝食も食べないでぐっすりと寝ていたのね。フェニちゃんならチルドとレインがきて魔界を案内すると行って魔王城から出て行ったわよ。フェニちゃんもあの2人を手玉に取るなんて将来有望かもよ」



 お母様は嬉しそうに微笑んだ。



 「フェニは、僕と特訓するために魔界へ来たのだよ。遊んでいる場合じゃないよ」


 「フェニちゃんを2人に取られて怒っているのね。フェニちゃんを取られないようにあなたも頑張らないとね!」


 「そんなんじゃないよ。僕のせいで魔人に近くなったので、人界でスムーズに暮らせるように人間に変身する方法を教えてあげたいだけだよ」



 僕はお母様に説明するが、お母様にニコニコ笑って相手にしてくれないのであった。






 ⭐️場面は変わってフェニ視点になります



 「フェニちゃん、ここが魔王城の町マーレボルジェです。魔界随一のお洒落なカフェがあるので一緒にお茶をしましょう」


 「フェニ嬢、チルドはまだまだお子様です。昨日必死に父親にお洒落なカフェを教えてもらっていたそうです。自分でエスコートできない男性と一緒にいるのは退屈だと思います。経験豊富な僕がフェニ嬢を満足させるデートプランを用意していますので、僕のおすすめのカフェに行きませんか?」



 私はリプロ様と特訓をする予定だった。しかし、朝早くからチルドとレインが魔王城に来て、私と一緒にお食事をしたいと誘うのである。私は何度も断ったが、レジーナ王妃様が魔界の町を案内してもらってくるようにと言われたので、私は仕方なくチルドとレインに町を案内してもらうことになった。私は1人では不安だが、私には魔界でトラブルに巻き込まれないようにメイド件護衛のエルヴァラさんがついてきてくれた。



 エルヴァラさんは、リプロ様の第二メイドである。第一メイドはあの不気味な白い面をつけたダスピルクエットさんである。


 エルヴァラさんは、ダスピルクエットさんとは違って小柄で笑顔が可愛い女性だ。髪は華やかなピンク色のショートボブである。ダスピルクエットさんとは真逆のように感じた。



 「フェニちゃんはパンが大好きなのよ。お洒落なカフェもいいけど、フェニちゃんの好きな物をちゃんと調べておくのね」



 エルヴァラさんは、太陽のように眩しい笑顔でにこやかに2人に言う。



 「そうなんですね。マーレボルジェで美味しいパン屋はどこにあるのだ・・・」



 チルドは頭を抱えて考え込む。



 「僕の豊富な経験から導かれた答えは・・・該当なし」



 レインは顔面蒼白にある。



 「私は美味しいパンを持っているのですぅ。みんなで一緒に食べるのですぅ」



 私は絶えず焼きての美味しいパンのストックを持っている。なので、魔界の王族であるチルドとレインにパンをあげることにした。



 「僕のために美味しいパンを用意してくれていたのですね。フェニ嬢の溢れんばかりの愛を感じます」


 「僕のためだよね。フェニちゃんの心遣いに感謝するよ。フェニちゃんと一緒に食べるなら、綺麗な噴水のある広場をで一緒に食べようよ」


 「僕も噴水広場を提案しようと思っていたのだよ。さぁ、一緒にいきましょう」



 レインは私に手を伸ばす・・・が私は差し出された手を無視して、エルヴィラさんと手を繋ぐ。



 「エルちゃんの分もあるので一緒に食べるのですぅ」


 「あら、嬉しいわ。2人の王族よりも私を選んでくれたのね」



 私はエルヴィラと手を繋いで噴水広場へと向かった。



 「待ってよーー」


 

 チルドとレインも私たちを追いかけてくる。


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