第376話 フェニ魔界へ行く編 パート5
フェニは黙ったままディアーブルの側に立っている。
「リプロ様によって魔人に少し近くなった魔石が、世界樹の不思議な果実を食べた事でさらに魔人化が加速していると思われます。なので、魔界の魔瘴気の中でも何も問題はありません。フェニ殿の今の体は人間ではなく、ほぼ魔人と言っても問題ないでしょう。フェニ殿を魔人として魔界で受け入れるのか、それとも魔人と認めず魔王城で幽閉するのかどちらか判断をお願いします」
フェニは、あまりにも強大な力を手にしてしまったので、人間として人界へ戻すわけにはいかないとレジーナは判断した。なので、魔人として認めることができなければ魔王城で幽閉することにしたのである。
「フェニは、魔人の力を手に入れても人界で暴れることはありません。もし、魔人として認めることができなくても、幽閉だけはやめてください」
僕は焦っていた。軽い気持ちでフェニを魔界に連れてきてしまったことを。
「その言葉を信用しても良いのですか?」
アルイは低い口調で言った。アルイはナレッジの件を追及して欲しくないので事を大きくしたくない。しかし、簡単にフェニを魔人と認めるにはプライドが許さないのであった。
「リプロが責任を持って面倒を見るのだから問題ないはずだよ。フェニの方がナレッジよりかは魔界のためになるはずと僕は思う」
カァラァが淡々と言った。カァラァはフェニのことに全く関心がなくどうでもいいのであるが、僕の必死な姿を見て後押ししてあげようと思ったのである。
「魔界にとって利益になる存在とは思えないが、処分の方法はレジーナ様に一任する」
レビトもアルイと同様にナレッジの件を再び追及されたくないので、フェニの件を強く非難することはしない。しかし、肯定もしたくないのである。
「僕は大歓迎するよ!せっかく魔人に近い体になったのだから魔界で暮らすといいよ。僕が魔界を案内してあげるよ」
チルドの目は爛々と輝いている。それは恋をしている目である。
「それは大反対だよ。チルドにフェニ嬢を任せるわけにはいかないよ。チルドはレディの扱いには慣れていないはずだよ。僕の方がフェニ嬢をエスコートするのに適任だと思うよ」
レインは甲高い声で発言する。チルドにフェニを取られたくないので必死である。
「そんなことないよ。僕だってちゃんとエスコートできるよ。レインじゃなく僕がフェニちゃんをエスコートするんだ!」
チルドとレインは今に喧嘩になりそうな雰囲気である。
「ここは会議の場だ!それに、今の議題はフェニの処分についての話だ。誰がエスコートするなんてどうでもいい」
アルイは、チルドが駄々をこねるように騒いでいるので叱りつけた。
「これは大事な問題です!フェニちゃんを幽閉するなんて僕が許さないよ。フェニちゃんはいなくなったルシスの代わりに魔界の王女様になってもらうんだ」
「チルドの言うとおりだよ。フェニ嬢を幽閉するなんて僕たちが絶対に許さない。フェニ嬢は王女様の器だと僕も思うよ。新たな王女様として魔界で受け入れることにしようよ」
レインは真剣な眼差しでみんなに訴える。
「チルド様とレイン様はフェニ殿を魔界で受け入れることに賛成ということでよろしいでしょうか」
ディアーブルは2人に問いかける。
「もちろんだよ」
チルドとレインは、はもるように返事をした。
「僕も賛成だよ」
「僕もだよ」
僕とカァラァも追随した。
「私も賛成です」
「好きにしたらいい」
「同感だ」
「それでは全員一致でフェニ殿の魔界受け入れを可決します」
僕はホッとした。まさかチルドとレインがフェニを好きになるなんて思ってもいなかったが、あの2人のおかげで、すんなりとフェニを魔界で受け入れてくれることが決定した・・・が、その後が大変だった。
「フェニちゃんを魔界の王女に推薦します」
「僕もそうの方が良いと思います」
「チルド!王女は推薦とかで決まるモノではないのだぞ。魔王様の子供として生まれないとダメなんだ」
「でも、ルシスは難病で姿を見せないから、代わりに魔界の王女が必要だと僕は思うんだ。そして、僕はフェニ王女と結婚するんだ!」
「僕がフェニ王女と結婚するんだよ」
チルドとレインが睨み合い今にも取っ組み合いの喧嘩が始まりそうである。
「もう、戻るぞ!」
アルイとレビトはチルドとレインを引き連れて会議室から出て行った。
「フェニ、もう心配しなくても大丈夫だよ。魔界の滞在が認められたよ。不安な思いをさせてごめんね」
僕は頭を下げてフェニに謝った。
「全然不安など感じていないですぅ。私はリプロ様を信じていますぅ。それよりも私のせいでリプロ様に迷惑をかけてごめんなさいですぅ」
フェニは自分の処遇よりも僕に迷惑をかけたことを悔やんでいる。
「フェニさん、あなたは魔界で受け入れることが決定したわ。でも、あなたを魔界に拘束するわけではないのよ。あなたは人界以外にも魔界でも生きていける権利を得たのよ」
「レジーナ王妃様、ありがとうございます。魔界のために私はできることがあればなんでもいたします」
フェニはレジーナに跪いて忠誠を誓った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます