第375話 フェニ魔界へ行く編 パート4


 魔王評議会の参加者は、レジーナ、リプロ、カァラァ、レビト、アルイ、チルド、レインの7名である。そしてナレッジの代わりに議長を務めるのはディアーブルである。ディアーブルは元国王カイザーの従者であり、王族の血を引く王族関係者でもある。ナレッジと違って信頼が厚くカイザーがいなくなった後、陰で魔界を支えていた人物である。



 「ナレッジの逃亡により代わりに魔王参謀長官に任命されましたディアーブルです。今回はレジーナ様の発案により魔王評議会を開催いたします。議題の内容は、前参謀長官のナレッジの魔界へ裏切り行為と、リプロ様が魔界へお連れになった魔人に近い人間となったフェニ殿の処分についてです」



 アルイとレビトはナレッジとグルになって動いていたので、ナレッジの件はサッサと終わらせたいと思っていた。会議が長引くと自分たちの立場が不利になると考えていた。



「『時空の番人』の能力を持ったナレッジを捕まえることは不可能に近い。ナレッジは、このまま魔界からの追放でいいのではないか!」



 アルイが最初に発言した。



 「ナレッジの処分よりも、ナレッジのおこなった魔界への裏切り行為とお姉ちゃんの殺害容疑に加担した者がいないか調べることが大事だと思うよ」



 カァラァがアルイとレビトを睨みつけながら言った。



 「僕もそう思うよ。ナレッジは、最初からお姉ちゃんを殺すために裏天界の王ウーラノスに協力を要請したのだよ。お姉ちゃんを殺して、新たな魔王候補を推薦して、魔界を自分の自由に動かそうと企んでいたと推測できるよ」



 僕はアルイの方を見て言った。アルイは僕の視線を外すように俯いた。



 「魔王の王女様を殺す依頼など言語道断です。しかも、宿敵であるウーラノスの協力を得て魔界へ手引きをするなんて、魔界への裏切り行為が甚だしいと思います。この件に加担したものは、魔界牢に永久投獄の処分を下すのが妥当だと思います」



 ディアーブルがアルイとレビトへ向けて発言した。



 「私はナレッジの単独行為だと思います。王女様の殺害依頼など誰も加担する者などいないと思います。ナレッジは己の欲を満たすために暴走したのだと思います。しかし、それに気づくことができなかった我々にも落ち度があるとは思います」



 レビトの目は焦点が合わず目をキョロキョロさせているので、かなり動揺しているのであろう。一方、アルイは額から滝のように汗を流して、全く落ち着きがなくビクビクと震えていた。


 「カァラァが、神人から聞いた話がどこまでが真実なのかナレッジに確認しないとわかりませんが、ナレッジが逃亡したことで罪を認めたと私は感じました。ナレッジを捕まえることは難しいかもしれませんが、ナレッジを拘束して、協力者がいるか確認するのが望ましいと思います。なので、憶測で犯人探しをすることは、魔界の平穏を脅かす恐れがあると思いますので、ナレッジの拘束を優先すべきだと思います」



 レジーナは落ち着いた表情で淡々と言った。本当は大事な娘が殺されているかもしれないので、怒り浸透だったが、魔王が不在の今は、自分がしっかりとしないといけないと思っていた。



 「レジーナ様のいう通りです。まずはナレッジの拘束が優先課題だと思います」



 レビトはここぞとばかりに追随した。



 「私の先程の発言は撤回します。ナレッジを魔界から追放処分ではなく、きちんと捕まえて真相を聞き出すのが最優先だと私も思います」



 アルイも追随する。



 「僕もその意見に賛成するよ。ナレッジと協力していた人物はある程度予測はつくけど、きちんとナレッジを捕まえてから、真実を追求した方が合理的だと思うよ」



 ここまでは、僕が考えたシナリオ通りにことが進んでいる。ナレッジとアルイ、レビトがグルなのはわかっている。しかし、証拠がないので追求しても知らないと逃げるはずだ。なので、アルイとレビトを追い込むことはせずに、ナレッジを捕獲をして真実を追求するつもりであった。それは、次の議題のフェニの件を穏便に済ませるためである。ここで、2人を追い詰めるとフェニの件で不利になると僕は考えていた。


 一方、アルイとレビトは『時空の番人』の能力があればナレッジは捕まることはないとたかをくくっているので、レジーナの意見は助け舟だと思って追随したのである。




 「ナレッジの件は、ナレッジを拘束してナレッジ自身から全ての悪事を追求するということでよろしいでしょうか?」



 「意義なし」



 参加者全員が賛同した。



 「全員の賛同を得たのでナレッジの捜索することにしますが、誰が捜索するかです」


 「僕が捜索するよ!ナレッジのいろいろと魔界へ裏切り行為をしているので、絶対に許すことはできないよ!」



 カァラァは、お姉ちゃんを殺害しようとしたナレッジを絶対に許さないのである。


 「自分にやらせてください」



 アルイが手をあげた。



 「他にナレッジの捜索をしたい人はいてます?」



 誰も名乗りを上げない。



 「カァラァ様とアルイ様のどちらかがナレッジの捜索を担当してもらいます。どちらに担当したもらうかは多数決で決めたいと思います。それでは、カァラァ様が担当すべきだと思う方は手をあげてください」



 僕とお母様が手をあげた。



 「では、アルイ様が担当すべきだと思う方は手をあげたください」



 レヒト、チルド、レインが手をあげた。



 「では多数決によりアルイ様がナレッジを捜索すると決定しました。次は、リプロ様が魔界へ連れてきた人間の議題について説明します」



 ディアーブルは、簡単にフェニの経緯を説明した。



 「では、フェニ殿の会議室に入ってきてもらいます」



 ディアーブルは近くの部屋で待機していたフェニを会議室に連れたきた。



 「可愛い・・・」


 「俺の好みだ・・・」



 チルドとレインはフェニを見て、思わず呟いたのであった。


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