第82話 パーシモンの町パート2
馬車を2時間くらい走らせたら、パーシモンの町が見えてきた。パーシモンの町は、王都に次ぐ大きな町であり、4大派閥で最強を誇る軍事力を持つと言われていた・・・が、未知の獰猛な魔獣により、太陽騎士団の団長を戦闘不能の追い込まれ、いつ?その魔獣がこの町に現れて町を崩壊させられるのではないかと、市民は不安を隠せずにいた。
そして、その獰猛な魔獣の正体のルシスがこの町に来たのであった。
「門の警備が多くないか」
「本当ですわ。10人も門兵がいてますわ。しかも装備もしっかりしていますし、何かあったのかしら」
「そうみたいだな。慎重に行こうぜ」
私は、ケレスとワイアット以外には、顔は見られていないので、正体はバレないと安心しているが、念のため警戒しておくことにした。
「町に入れてもらえるか」
トールさんが、門兵に声をかけた。
「身分証を拝見させてください」
トールさんんは身分証を見せた。門兵の顔が少し青ざめた感じがした。たぶん、ブラカリ襲撃を食い止めた冒険者のラストパサーであり、しかも冒険者ランクもC3だからであろう。
「この町に何しきたのですか?要件だけでも聞かせてもらえませんか」
「冒険の途中で宿を借りにきただけだ」
バルカンの存在は機密事項なので、言うことはできないし言う必要もない。
「そうでしたか。南の方で、獰猛な魔獣が現れたので、気をつけてください」
そう言うと、門兵は、私たちを町へ入る許可をくれた。冒険者を町へ入れない門兵はいない。それは、冒険者は、魔獣を退治してくれる勇敢な職業であるからである。
私たちは、パーシモンの町の門を抜け、町へ入ろうとした時、私だけが門兵に止められたしまった。
「そこのお嬢さん、あなたはこちらへ来て下さい」
「おい、なんでルシスだけ呼び止める」
「すいません。彼女には内密なお話しがあります」
もしかしら、バレてしまったのかもしれない・・・・私が獰猛な魔獣の正体だと。
門兵は、私に周りに聞こえないように、小さな声で話しかけたきた。
「あなたは、聖魔教会の方ですね。少しお話しがあります」
私は、聖魔教会に入信した時にもらった黒い石を、腕輪の飾りとして付けていた。本当は目立たないように持っていないといけないのだが、黒い石が気に入っていたので、気にせずにずっと付けていた。
黒い石を確認すると光っていた。たぶんこの門兵も、聖魔教会の入信者なのであろう。なので、私が聖魔教会の入信者だとわかったのだろう。
「トールさん、私は大丈夫です」
「本当に大丈夫なのか」
「はい。問題ないと思います」
聖魔教会の信者なら、悪い人ではないと思ったので、みんなには少し待ってもらう事にした。私は門兵に連れられて、門の横にある詰所に連れて行かれた。
「あなたは、聖魔教会の入信者ですね」
「はい。そうです」
隠す必要はないし、たぶんバレていると思うので素直に答えた。
「大事なお話しがあります。少し長くなりますが聞いてください」
「わかりました」
「私は、以前神守教会のスパイとして、ブラカリの町へ侵入しました。しかし、ブラカリの町で捕まり、その後改心して聖魔教会に入信しました。なので、黒い石を持っていますので、すぐにあなたが聖魔教会の信者だとわかりました。この町は、少し前までは神守教会と手を組み、聖魔教会を滅ぼそうとしていました。しかし、太陽騎士団のケレス団長が、ブラカリの放った魔獣により、戦闘不能の状態に追い込まれました。その為、アポロ公爵様は、その獰猛な魔獣の正体を探っています。聖魔教会の関係者であり、ブラカリ襲撃を阻止したラストパサーのメンバーであるあなたなら、何かご存知だと思い引き止めました」
これは、困ったものである。本当のことを話したら、大変なことになりそうだし、しかし、聖魔教会の人に嘘はつきたくない・・・
「ワイアットさんを呼んでもらえませんか。彼になら情報を提供しましょう」
私は、判断が難しいと思いワイアットに全て丸投げすることにした。それに、バルカンの居所を探すには、ワイアットに聞けば、何かわかるかもしれないと思ったからである。
「副団長様のお知り合いでしたか。それなら、今すぐに報告してきます」
門兵は、急いでワイアットのもとへ向かった。
しばらくすると、門兵は戻ってきた。そして、太陽騎士団の本部へと案内されることになった。ロキさんには簡単に説明して、私は1人で本部へと向かうことにした。
トールさんとポロンさんは、美味しいお酒を飲みに行くと言って飲食街へ向かい、ロキさんは、冒険者ギルドへ情報を集めに行った。
「お久しぶりです。お嬢さん。まさか君の方から、会いにきてくれるとは思わなかったよ」
ワイアットが、私を出迎えてくれた。
「門兵さんから聞きましたが、ケレスを襲ったのは、獰猛な魔獣になっているんですね」
「そうなんだよ。ケレス団長が体長3mもある獰猛な魔獣に襲われたと証言されたので、そのまま報告することにしたのだよ。その方が都合が良いと判断しました。まさか小さな女の子に、やられたなんて言っても誰も信用してくれないからね」
「そう言うことなんですね。でも、アポロ公爵が魔獣を探していると聞きましたが、どうするのですか」
「どうしたらいいのやら・・何かいいアイディはないものか・・・」
「そうですね・・・ それなら、ガリーナ山の麓のあるディービルの森は、たくさんの魔獣の住処になったいますので、そこで目撃されたと情報を流したらいいと思います。あそこなら、獰猛な魔獣が居てもおかしくないです」
「よし、そうしよう。それでこの件は解決だ。お嬢さんありがとう」
「私は、ルシスと言います」
「ルシスちゃん、ありがとう」
「あのー、私も教えて欲しいことがあります」
「僕が知っていることなら、なんでも教えてあげるよ」
「バルカンという、鍛冶職人をご存知ですか?」
「・・・・ルシスちゃんは、バルカンの存在を知っているんだね。君は一体何者なんだね」
「ただの冒険者です」
「・・・深く追及するのはよしておこう。バルカンを探してどうするのかな?」
「竜光石を手に入れたので、加工を依頼したいと思っています」
「伝説の鉱石の竜光石を持っているんだね。それはすごいことだ」
「運よく手に入れることができました。ですが加工が出来なくて困ってます」
「バルカンのことだが、これは国家機密なので、僕の一存では教えることはできないのだよ。せめてアポロ公爵の許可があれば、教えることはできるのだが・・・」
「それでは、バルカンさんを知っているのですね」
「ああ、知っているよ」
「どうしても教えて欲しいです」
「アポロ公爵様の判断次第だよ。アポロ公爵様は、今、二つの事を早急に知りたがっている。一つは獰猛な魔獣の正体。そして、もう一つは、ラディッシュの町の付近で、四肢の欠損を治した大魔術師の捜索。この大魔術師の居所がわかればいいのだが・・・」
「大魔術師って、どういうことですか」
「実はケレス団長は、アポロ公爵様の弟なんだよ。だから、ケレス団長を、元の状態に戻すために、必死に優秀な治癒師を探しているのだよ。しかし、全身大火傷で、未だに死の境を彷徨っている状態だ。それを治せる者を探しているときに、その大魔術師の情報を手に入れたのだよ。しかもその大魔術師は、まだ10歳くらいの可愛い女の子だそうだ。そんな小さくて、可愛い大魔術師なんてどこにいるのだろう?」
そう、目の前にいたのであった。
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