第81話 パーシモンの町パート1



  アビスは、ターニプの町でホワと共に暮らすことに決まったみたいである。エルフの国へ戻って、150年前の真相を打ち明けに行きたかったみたいだが、ダークエルフになってしまったので、エルフの国へは入ることができないのであった。


 代わりにポロンさんが、竜光石の件が無事に片付いたら、エルフの国へ説明することになったのであった。



 私たちは、ドワーフの国を離れ、サラちゃんにラデッシュの町まで運んでもらった。そして、お決まりのプリンを渡して帰ってもらった。サラちゃんがいると、またとんでもないことをしてしまったら大変だからである。



 「この町も久しぶりだな」


 「ああ、リアム元伯爵が、裏切り者だったのは驚いたな」


 「そうですね」



 ブラカリの町の襲撃事件は、王国騎士団の副団長アレスの単独での叛逆として処理され、首謀者の神守教会の教皇のドウェインは、罪を問われることはなかった。


 また、アレスに加担したとして、罪に問われたリアムは、ディーバ伯爵の温情により、極刑は免れたが、身分を剥奪され平民として、パースリの町で油の栽培をしているらしい。


 多くの信者を失った神守教会は、影響力がなくなり今はおとなしくしているのであった。




 私たちは、冒険者ギルドに行ってディーバ伯爵様に会いに行った。



 「お久しぶりです。ディーバ様」


 「ラスパの皆さん、お久しぶりです。今日は、どんな御用でこのラディッシュの町に来たのかしら」


 「実は、バルカンという鍛治職人を探しています。ディーバ様ご存知ですか」


 「なぜ、あなた達はバルカンの存在を知っているの」


 「ドワーフの国で聞きました」


 「そうでしたか、最近、腕試しにドワーフの国へ訪れていたと聞いていたいましたが、本当だったのね。実は、バルカンの存在は、この国では機密事項なの」


 「どうしてですか」


 「あなた達なら話しても問題ないと思うわ。バルカン一族は、鍛治の能力を持つ神の子であり、その能力を代々引き継いでいるのよ。その鍛治の腕は、ドワーフですら足元に及ばないくらいの高技術なの。彼ら一族が作り上げる剣は神剣と言われるのよ。そして、アレスが盗んだグラムもその一つよ。神剣を作るには何十年もかかるのよ。でも神剣は魔法の効力を消し去る神の武器になるわ。神剣は、あまりにも強大な武器になるので、バルカンの一族の存在を公にすることは、禁止されているのよ」


 「そうだったんですね。私たちは、竜光石を手に入れました。それを加工してもらいたくて、バルカンを探しているのです。加工してもらえるのでしょうか」


 「それは、わからないわ。バルカンは、アポロ公爵家の元で代々お世話になっているはずだわ。一度行ってみるといいかもしれないわ」


 「私たちが、アポロ公爵のもとへ行っても大丈夫でしょうか。ブラカリの件もあると思います」


 「問題ないと思うわ。アポロ公爵は、王都へいく途中に、ブラカリの町が送り込んだ、巨大な魔獣に遭遇して撤退した言っているわ。だから、ルシスちゃんのことは知られていないわ」


 「ルシス、魔獣にも変身できるのか?」


 「できません」


 「だったら、なんで、そんなことになっているんだ。ルシスが撃退したんだろ」


 「はい。でも太陽騎士団の団長を、ボコボコにし過ぎたので、それが誇張されて、そうなったのだと思います」



 ボコボコじゃなく、丸焦げにしてやったんだけど、そこは内緒にしておこう。



 「よほど酷い目に遭わされたんだろうな」


 

 はい。その通りです。とは言えなかった。



 「でも、それなら、気にすることなく行けるのでよかったです」


 「そうだな」


 「ソール達も、アポロ公爵の行動を探るために、パーシモンの町へ行ってるわ。彼女達にも、聞いてみたらいいかもしれないわね」


 「ありがとうございます。明日にでもパーシモンの町へ行きます」


 「そうね、今日はこの町でゆっくりとするといいわ」



 私たちは、その日は、ラディッシュの町でゆっくりと過ごし、次の日にサラちゃんを呼んで、パーシモンの町へいくことにした。




 パーシモンの町は、王都ジンジャーをひたすら北に進んだところにある。






 「疲れたよーーー」


 「サラ、もう少しだぞ」


 「もうダメーー。お腹ペコペコだよー」



 サラちゃんが、お腹をすかしたので、パーシモンに着く前に少し休憩を取ることにした。



 「チーズインハンバーグをよこすのよ」


 「わかりました」


 

 私は、サラちゃん要望のチーズインハンバーグを出してあげた。



 「これが欲しかったのよ」



 サラちゃんが、チーズインハンバーグ美味しそうに食べまくる。これは・・・悪い予感しかしない。



 「もっと、もっと出してー」



 もちろんこうなると、サラちゃんの食欲は止まらない。想像通りたくさん食べて気持ち良くなって、そのままお昼寝タイムに入ってしまった。



 「こうなると、もうサラマンダー様は起き上がることはないでしょう」


 

 イフリートが言わなくても誰もがもうわかっている。



 「馬車でいくか」


 「そうですね。食事を出したら、こうなるのはわかっていましたわ」



 私は、収納ボックスから、馬車を出して、パーシモンへ向かうことにした。もちろん、サラちゃんは、イフリートの手によってイディ山へ戻っていった。


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