第398話 ボルの人界征服編 パート11



 「亜人のガキは逃げたか・・・まぁ〜良いだろう。まずはお前らを殺して、その後にあの亜人のガキを血祭りにしてやるぜ」


 「イフリート、どうするのよ。神人ってめちゃ強いんでしょ」



 ポロンさんは今にも泣きそうな顔でイフリートに声をかける。



 「大丈夫です。私も神人と同じで神から力を授けてもらった妖精です」


 「そうなの?そんな話初めて聞いたわ」



 疑いの目でポロンさんはイフリートを見ている。



 「ポ・ポ・ポロンさん・・・私を信用していないのですか!」


 「そんなことはないわ。でもきちんと説明してくれないと信用できませんわ」


 「わかりました、それならきちんと説明しましょう。神とは、裏天界に住む3世界の平和のバランスを管理する守護者であります。その裏天界を牛耳っているんのがウーラノスという全知全能の神であります。そして、ウーラノスと同等の力を持ち裏天界の秩序を管理するのが妖精王のオーベロン様です」


 「えっ!!!オーベロン王はそんなに偉い人物だったのね」


 「そうです。しかし、オーベロン様とウーラノスはあるコンパをきっかけに仲違いになってしまい、オーベロン様は4大精霊神を引き連れて、妖精の国のある人界へ移り住んだのです」


 「コ・コ・コンパが原因って・・・いかにもオーベロン王らしいわね」



 ポロンさんは震えながら笑いを堪えるのに必死である。



 「ポロンさん!笑ったら失礼です。コンパとはオーベロン様とウーラノスにとってとても大事なイベントなのです」


 「笑っていないわよ。少し顔の筋肉が緩んでしまっただけよ!」



 ポロンさんは笑ったことを認めない。



 「そうでしたか。疑って申し訳ありません」



 イフリートはポロンさのくだらない言い訳を信じた。



 「いいのよ気にしないで。それよりも続きを聞かせてよ」


 「わかりました。なので4大精霊神様も元は裏天界に住む神様だったのです」


 「サラちゃんは神様なの?」


 「はい。サラマンダー様は火を司る神様です。なので、サラマンダー様から力を授かって生を受けた私は神人、いえ神人以上の力を持っているのです」


 「それを先に言ってくれるかしら!それならあんなヘンテコな奴にビビる必要などなかったのに!」



 ポロンさんは、ビバレッジよりもイフリートのが強いとわかって態度が一変した。



 「何をゴチャゴチャと話しているのだ!」


 「うるさいわよ!あなたなんて全然怖くないわよ。すぐにイフリートがあなたを消し炭にしてくれるわよ。イフリートやっちゃいな」


 「わかりました。私が最上級の竜を召喚します。少し詠唱に時間がかかるので、ポロンさん少し時間を稼いでください」


 「そんな・・・無理よぉ〜」



 ポロンさんの顔は、家にスマホを忘れたことに気づいたみたいに顔面が硬直し、そして全身が震え出したのである。



 「その妖精に何ができると言うのだ!俺のフルパワーの姿をその目に焼き付けるがいい」



 ビバレッジは全身に力を入れる。ビバレッジの全ての筋肉がピクピクと震え出し、全身が赤色に染まった。そして、両肩からニョキニョキと腕が生えてきた。



 「ウォーーーーー」



 ビバレッジは、鼓膜が破れるくらいの雄叫びをあげる。



 「もっとだ!もっとだ」



 ビバレッジの腰から、背中から、脇の下からニョキニョキを腕が生えてくる。気がつくとビバレッジは蜘蛛のように8本の腕を生やしていたのである。



 『バンプアップ』



 ビバレッジはいきなり8本の腕を使って、超高速の腕立て伏せを始めた。



 「筋肉よ弾けろ」



 イフリートはその間に詠唱を唱え出し、ポロンさんはわけがわからず呆然とビバレッジの腕立て伏せを眺めていた。



 「仕上がったぜ」



 ビバレッジは、大きな商談を成立させたサラリーマンのように、清々しい笑顔をしていた。ビバレッジがそのような笑顔になるのも納得がいく。なぜならば、ビバレッジの体はバンプアップの効果により、全く無駄のない芸術美のような美しい肉体に仕上がっていたのである。



 「待たせたな。今の俺の肉体なら俺が腕を振り下げたその風圧でお前の体は木っ端微塵になることは間違い無いだろう」



 ビバレッジは、ポロンさんの目掛けて腕を上げた。



 「この腕を振り落とした時が、お前の人生が終わりを告げる時だ」


 「ナイスバルク!」



 ポロンさんは少しでもビバレッジのご機嫌を取ろうと筋肉を誉めることにした。



 「そうかぁ」



 ビバレッジの顔が、今にもこぼれ落ちそうなくらいにダルンダルンになってニヤけている。



 「壮大ですわ」



 ビバレッジの緩み切った顔を見て、これはいけるとポロンさんは確信した。



 「これはどうだ」



 ビバレッジはポロンさんに筋肉を褒められて調子に乗って、いろんなポージングを始めた。



 「キレてますわ。キレてますわ」

 「仕上がってますわ」

 「ボリュームタップリフルコースですわ」

 「押しつぶしてぇーー」

 


 「どうだ!これはどうだ!」



 ビバレッジは気持ちが良くなって、至福の笑みを浮かべながらポージングを続ける。



 「イフリート、準備はできましたか?」



 ポロンさんは、ビバレッジがポージングに酔いしている隙に、小声でイフリートに声をかける。



 「黒く輝く流星群が、東の大地に舞い降りた時、深淵なる赤の王の眠りを覚ますだろう。黄色の大地に東の月の光が差し込む時、緑の王が紫煙の衣を纏い、北の王女と共に西の海原を・・・」



 まだイフリートの詠唱は続いているのであった。



 「イフリート!早くしてよ」



 ポロンさんは涙目で訴えるのであった。

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