第247話 ホロスコープ星国 パート24
★フェニ視点に戻ります。
「ベガちゃん重いよ・・・」
私は弱音を吐いていた。魔法で筋力を強化したけれど、馬を背負って歩くのは正直しんどいのであった。遠くに関所は見えていたので、このくらいの距離なら大丈夫だと思ったのだが、考えが甘かった。
「重いのは、フェニちゃんがたくさん人参を食べさせたからよ」
と言いたげに、ベガちゃんは冷たい視線で私を見ている。
「うんしょ、うんしょ」
私は掛け声を出しながら、ベガちゃんをおぶって一歩一歩進んで行った。
「ヒヒーーン」
やっと関所入り口にたどり着くと、ベガちゃんは関所を通しなさいと言わんばかりに叫んだ。
「馬が何しにきたのだ」
関所の兵士が問いかけてきた。
「ブヒィヒィヒィヒィ〜ン」
ベガちゃんは兵士に応答するかのように答える。
「おい。この馬は何を言っているのだ」
兵士は困惑して、別の兵士に声をかけた。
「俺にわかるわけないだろう。馬よりも、馬に乗られている女の子に聞いた方がいいだろう」
もう1人の兵士は冷静に判断した。
「お嬢さん、なぜ馬に乗られているのですか?」
兵士は困惑しながら聞いた。
「これには、重大な理由があるのです・・・それよりも、ベガちゃん降りてちょうだい」
もう関所に着いたので、私はベガちゃんに降りてもらうようにお願いした。
「ヒーーーーン」
ベガちゃんはとても悲しそうな声を上げた。ベガちゃんは、私に運んでもらってとても上機嫌だったので、降りたくないのであった。
「もうダメです」
私は、力の限界がきてそのまま倒れ込んでしまった。
『グーーーー』
私のお腹の音がなった。私はベガちゃんに人参を与えてばかりで、自分の食事を全く取っていなかった。なので、お腹がペコペコで力の限界がきた。
私が倒れ込んだので、ベガちゃんは私から降りて心配そうに私の方を見ている。
「おい、その馬は何者だ!」
タラウスが、関所の入り口に顔を出した。
「馬は馬です」
兵士は当然のことを言う。
「そうか。馬なのか」
タラウスは納得した。
「タラウス様、馬に酷使されていた女の子が倒れ込んでしまいました」
兵士は、私のことを心配してタラウスに報告した。
「すぐに魔法士のところへ連れて行って治療でもさせておけ」
「身分証の確認はいいのですか」
兵士は責務を全うする。
「それよりも馬を調べろ。ウルフキングは人間に変化する魔獣と聞いている。もしかしたら、馬にも変化しているかもしれないぞ」
タラウスは、人間を馬のように扱うベガちゃんを怪しいと判断した。
「確かにそうでございます。さすがタラウス様、ホロスコープ星国一の知将でございます」
兵士はタラウスにおべんちゃらを使う。
「俺を侮るなよウルフキングよ!お前の策略など俺にかかれば、全てお見通しだ!」
タラウスはベガちゃんを指さして偉そうに言った。
兵士たちは、ベガちゃんを調べ上げる。兵士がいくらベガちゃんを調べてもただの馬にしか見えない。
「タラウス様、この馬はただの馬だと思います。もしウルフキングなら、こんなに大人しくしているはずがありません」
兵士はタラウスに報告をした。ベガちゃんは、まだ人参の食べ過ぎで動く気力もないので、兵士が馬体を触っても置物用に大人しくしている。
「そんなはずはない。俺の判断は絶対に正しいはずだ」
タラウスは、大きな剣を抜き取りベガちゃんに向けて剣を構えた。
「ウルフキング!俺は騙されないぞ。お前は馬に化けてこのまま関所を通り抜けていくつもりだろう。連れの女の子とはさっきの奴隷の女の子だろ。俺が関所を守っているのが運の尽きだったな。他のやつならうまく騙せただろうにな」
「タラウス様、女の子は手配書の似顔絵とは異なりますが・・・」
兵士がタラウスに進言する。
「手配書など信用するな。俺は自分の直感を信じるのだ」
タラウスは自慢げに言う。しかし、タラウスの直感は半分は間違っていない。
「正体を現さないのなら、ここで俺がお前を殺してやる」
「もし、ただの馬だったらどうするのですか?」
兵士は不安げにタラウスに言った。
「もしただの馬ならそれでいいだろう。馬を殺したところで何も問題はない。しかし、馬を見逃して、もし馬がウルフキングだったらそれこそ大問題だ!」
タラウスは大声で兵士を怒鳴りつけた。
「申し訳ございません」
兵士は頭を下げて謝った。
「ウルフキング。ここでお前は死ぬのだ」
『鉄壁』『倍倍』
タラウスは油断はしない。ウルフキングの強さはスコーピオから聞かされている。なので『スター』を発動して防御力を上げた。
『フルチャーージ』
タラウスは全身に力を入れた。タラウスの『ゾディアックサイン』の能力は牛のような強大なパワーを発動できることである。『フルチャージ』をしている間は、体から金色のオーラーが発光して、本来の5倍の力を発揮できるのであった。
「俺は油断はしない。全力でお前を殺してやるぜ」
タラウスは、ベガちゃんに突進して、剣を振り上げてベガちゃんの首を切り落とそうとした。
「真剣白刃取り」
私は、タラウスと兵士のやりとりを聞いていた。私は空腹で関所の休憩室で治療をしてもらう予定だったが、私はお腹が減っているだけなので治療の必要はなかった。でももしかしたら、休憩室で美味しい食事をもらえるのではないかと、甘い期待をしていたので、兵士に運ばれるままに休憩室にきたのであった。
しかし、タラウスが勘違いしてベガちゃんをフレキだと認識してしまった。このままだとベガちゃんが危険だと察知した私は、収納ボックスから果物を取り出して、空腹を満たして、すぐにベガちゃんの元へ駆けつけたのであった。
私は、ライトシールドの応用で、全身にシールドを張りながら、タラウスの剣を両手で受け止めたのであった。
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