第246話 ホロスコープ星国 パート23
★ホロスコープ星国視点になります
「ライブラは、まだ戻ってこないのか?」
カプリコーンが、不安げにスコーピオに問いかけた。
「はい。まだ戻ってきていません」
「もう、ライブラが暗殺に向かって、1週間以上経っているはずだ。ライブラの身に何かあったかもしれないぞ」
「そうかもしれません。相手はウルフキングです。一緒にいる子供はただの人間の子供だと思いますが、ウルフキングはグリフォンを凌駕する魔獣です。いくらライブラが強いからといっても、無謀だったのかもしれません」
スコーピオは悲痛な表情で言った。
「やはり単独で行かせたのは失敗だったか・・・」
カプリコーンは悔やんでいる。
「ライブラは冷静沈着な男です。もしかしたら、ウルフキングの強さをすぐに察知して、うまく逃げ延びている可能性もあると思います。ライブラの重量操作の能力なら、自らを軽くして高速で逃げることも可能です」
スコーピオは一途の希望にかけている。
「そうだな。ライブラが死んだと仮定するにはまだ早いかもしれないな。捜索部隊を出すのも危険だし、もう少し様子を見てみるか・・・」
カプリコーンは、すぐにでもライブラの捜索をしたいのだが、ハダルの町の付近はかなり危険だと思っているので捜索に出るのを断念した。
「仕方ありません。最悪の結果を踏まえて、関所の強化を図った方がいいかもしれません。それと、カペラの町へ情報収集をおこなうのもいいかもしれません。ライブラは、ハダルの町に向かう前にカペラの町へ寄っていると思われます」
スコーピオは、冷静に分析をした。
「ポルックスが治める町だな。あの町は俺は嫌いだ」
カプリコーンは顔を真っ赤にして言った。
「しかし、少しでもライブラの状況を知る為には、カペラの町へ行くといいと思うのですが」
スコーピオはカプリコーンに進言した。
「そんなに気になるのならお前が行けばいいじゃないのか?俺はポルックスには会いたくないぞ」
カプリコーンは吐き捨てるように言った。
「ご命令とあれば、私が行ってまいります」
「確か・・・お前はポルックスと仲が良かったな。俺はポルックスに、平民を大事にしろと、口うるさく言われるのが、無性に腹が立っていたのだ。ポルックスがジェミニ王の兄でなければ、俺がカペラの町に魔獣を送り込んで、町ごと崩壊させてやるのにな」
カプリコーンは怒りをあらわにして言った。
「ポルックス様の考えは、ホロスコープ星国にとって危険な考えであります。しかし、国民からの信頼も厚く、ポルックス様を殺されると、レジスタンスの抵抗も激しくなります」
「それはわかっている。だから、ジェミニ王もカペラの町を放置しているのだろう。しかし、危険分子は早めに始末しておかないと、後々大問題になると俺は思っているのだ」
カプリコーンは不安げな顔をして言った。
「ポルックス様の話は、また次の機会にいたしましょう。今はライブラの状況とウルフキングの対策が先だと思います」
スコーピオは、論点がずれたので、話を元に戻そうとした。スコーピオは、ポルックスに怒りの矛先が向けられるのを危惧しているのであった。
「そうだな。ポルックスの件は今度にしよう。それで、なんの話をしていたかな?」
カプリコーンは、ポルックスに対する怒りが込み上げていたので、さっきまでの話の内容を忘れてしまったのであった。
「ライブラの足取りを捜索するために、カペラの町へ行った方が良いと私が提言したのです。そして、それなら、私がカペラの町へ行けば良いとカプリコーン様が言ったのです」
スコーピオは、呆れた顔をしてカプリコーンに言う。
「そうだったな。ど忘れしていたわ。ガハハハハ」
カプリコーンは、笑って誤魔化そうとした。
「それでは、私は騎士団を連れて、カペラの町へ向かいます」
「よし、任せたぞ。もしライブラが死んでしまったら、ホロスコープ星国の国歌の内容を変えなければいけないからな」
カプリコーンが毎回歌っているの歌は、実はホロスコープ星国の国歌であった。もちろん、作詞作曲はカプリコーンである。しかし、一度はポルックスの猛反対により、国歌に採用することは却下されたが、ポルックスがカペラの町に追放されたのをきっかけに、ジェミニ王の許可をもらって、国家として採用されたのであった。カプリコーンが必要以上にポルックスを嫌うのは、このことが1番の原因である。
「不審な人物はいないか!」
タラウスが大声で叫ぶ。
「今日も不審者どころか、誰も関所を通るものはいません」
関所の兵士が元気よく言った。
王都シリウスからカペラの町へ向かうには関所を通るしか方法はない。関所は二つの山の間にあり、東の山はかなり険しい山であり、しかも、王の森の支配下に近いため、誰もそこと通るものはいない。西の山もかなり険しい山であり、山を越えると獣人が支配する国が存在すると言われているので、こちらのルートを通る者もいない。
「関所ができてからは、平和になったぜ」
タラウスはイキイキして言った。
この関所が出来てからは、カペラの町へ逃げるものがいなくなった。カペラの町から、王都シリウスの行く者は皆無なので、関所の仕事はほとんど暇なのであった。
「タラウス様、馬が見えます」
兵士が大声で叫んだ。
「馬だと・・・別にそんなことは報告しなくて良いぞ」
タラウスは呆れ顔で言った。
「いえ違います。人間に乗った馬が現れたのです」
兵士が血相を変えた言った。
「馬が人間に乗るのは普通だろ」
タラウスはイライラしながら言った。
「タラウス様、馬が人に乗っているのです」
兵士が何度も言う。
「うるさいぞ。馬が人に乗るなんて当たり前だろ。人が現れたと言え、このマヌケが!!」
タラウスは激怒した。
タラウスは、人が関所に現れたと報告を受けたので、状況を確認するために関所の入り口に姿を現した。
「なんだあれは!」
タラウスは、目が飛び出しそうなくらいビックリしている。
「馬が人に乗っているではないか!!!」
「だから何度も申し上げているのです」
兵士は呆れ顔で言ったのであった。
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