第326話 ホロスコープ星国 ルシス編 パート38


 「小ルシスちゃん何があったの?」



 私は大声で叫んでしまった。それほどの緊急事態だと思ったのである。



 「ルシスお姉様が言うには、ディービルの森から多量の魔獣が王都ジンジャーに向かって進行しているそうです。進行方向を考えると、まず、この町を襲ってくるそうです。この町にたどり着く前に討伐に向かってほしいとのことです」


 「それは、大変だわ。すぐにディーバ様に報告して、魔獣の討伐に向かうわ」


 「私も手伝います」


 「ありがとう。ルシスちゃんの代わりに一緒に戦いましょうね」


 「はーーい」



 私は急いでディーバの屋敷に向かって、ルシスちゃんの報告をディーバに話した。



 「ルシスちゃんの報告なら間違い無いでしょう。すぐに兵士に命令して町の警護を固めます。それにギルドに待機している冒険者達に護衛を依頼します。ロキさん達は魔獣の討伐をお願いします」



 ディーバはテキパキと町を守るために準備をした。



 「すぐに討伐に向かいます」



 私は宿屋に戻って、トールとポロンを叩き起こして事情を説明した。



 「ついに『ミョルニル』を使う時がきたか!」



 トールの目は爛々と輝いている。



 「サラちゃんも呼びますわ」



 ポロンはすぐにサラちゃんを呼び出した。



 「もう、おやつの時間かしら?」



 サラちゃんはヨダレを垂らしながら現れた。


 私たちはルシスちゃんに完璧な収納ボックスを作ってもらって、ルシスちゃんがいなくても快適に野営できるグッズを持っている。その中にはルシスちゃんがいない時でもサラちゃんをうまく扱うための非常食用意してもらっている。なので、ポロンはサラちゃんにビッグなプリンを与えた。



 「ヤッタァーー。今日はビッグなプリンよ!!」



 ポロンにビッグなプリンをもらって大はしゃぎをしているサラちゃんに、ポロンは魔獣がこのまちに迫っていることを説明した。



 「私に全て任せるのよ。おやつをもらった分の仕事はするわよ」



 サラちゃんはポロンの召喚獣になったはずなのに、対価がないときちんと働いてくれないのである。



 「ポロンさん、私は美味しいお酒が欲しいです」



 呼んでもないのにポロンが、精霊神サラマンダーことサラちゃんの加護をもらったときに、ポロンに強大な力を与えるために、ポロンの加護となったイフリートが顔を出した。イフリートは炎の形をした精霊である。



 「わかったわ。今回は急を要する事態なので、イフリートにも頑張ってもらうわ」



 召喚者であり加護主であるポロンのが立場が上なのだが、食いしん坊なサラちゃんとイフリートは、対価がないと拗ねて力の出し惜しみをするので、ポロンは常にご褒美を用意しないといけないのである。



 「私の地獄の業火で魔獣達を火の海に沈めてやります」



 イフリートはやる気満々である。


 私たちはサラちゃんのカゴに乗って、魔獣の大群を倒すためにラディッシュの町を出て、ディービルの森の方へ向かった。



⭐️ディービルの森の魔獣視点になります



 「ニーズヘッグ様、ラードーンは完全に死んだみたいです」


 「ドラゴン族最強言われていたが、大したことなかったみたいだな」


 「はい。私はニーズヘッグ様こそ最強のドラゴンだと思っています」



 ニーズヘッドとは、巨大な蛇の姿をして翼を持っているドラゴンである。そして、ニーズヘッドの太鼓持ちをしているのがワイバーンである。ワイバーンも翼を持つドラゴンである。竜騎士に召喚されるドラゴンは全てワイバーンである。



 「もちろんだ。俺はディービルの森の守護者であり最強のドラゴンだ。最初から俺に頼めば『オリュンポス国』など簡単に滅ぼす事ができたはずだ」


 「その通りでございます。竜騎士族は見る目がありません。なので、私の独断でニーズヘッド様を独断でスカウトしたのです」



 シューに召喚されたワイバーンは、手柄を立てるために独断でディービルの森の近くにあるガッリーナ山に住むディービルの森の守護者と呼ばれるニーズヘッドに、『オリュンポス国』を滅ぼすように依頼を出したのであった。竜騎士族はニーズヘッドの存在を確認できていなかった。



 「人間の領土を奪うと後々面倒なことになるが、竜騎士族のバックアップがあるなら問題はない。約束通り支奪った土地の半分は俺の支配下にするぞ」


 「もちろんです」



 ワイバーンは後のことは何も考えていないので適当に返事をする。



 「魔獣達よ、これより領土を拡大をするために、『オリュンポス国』を滅ぼすぞ!まずは俺たちの強さを見せつけるために、ここから1番近いラディッシュの町を滅ぼすぞ!!」


 「ウォーーー」



 魔獣達は雄叫びをあげる。


 こうして、ニーズヘッドは1000を超える魔獣を引き連れてラディッシュの町へ進行するのであった。




⭐️ロキさんの視点に戻ります。



 私たちは、サラちゃんのカゴに乗せてもらって、ディービルの森の方面へ向かっていた。



 「おい!ものすごい数の魔獣が迫っているぞ」



 トールが大声をあげる。



 「本当ですわ。あんな数の魔獣を相手にするなんて聞いていないわ」



 ポロンは少しビビっている。



 「私にお任せください」



 イフリートはポロンの元を離れて、魔獣の大群の上空にスッと移動した。



 「数多ある炎の精霊たちよ。我の呼びかけに耳を傾けたまえ、炎の化身である我にお前達の全ての力を我の元へ送るがいい。この場を炎の大海に変え、魔獣達に地獄の業火の楽園に誘うがよい」



 イフリートは詠唱を唱えた。



 「嫌よ」



 炎の精霊神であるサラちゃんが、イフリートの呼びかけを却下してしまった。





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