第327話 ホロスコープ星国 ルシス編 パート39


 サラちゃんは、火の精霊の頂点に立つ精霊神である。そのサラちゃんがイフリートに力を貸すことを却下したので、火の精霊・妖精たちは誰も力を貸すことはできなくなった。この世界には、目に見えないが様々なところに精霊・微精霊・妖精が存在している。エルフやドワーフは精霊・微精霊・妖精の力を借りて、魔法や身体強化などをはかるのである。火の精霊のイフリートも同様である。なので、誰も力を貸してくれなかったら、自分の力のみのパワーになってしまう。



 「サラマンダー様・・・なぜ断るのですか』



 イフリートは焦っている。精霊たちの力を借りないと1000を超える魔獣の大群を倒すの不可能である。



 「これは私の獲物です。ここでいいところを見せて、後でルシスちゃんに美味しい食事をたくさんもらうのよ」



 サラちゃんの口からは涎が止まらない。



 「サラマンダー様、相手は1000を超える魔獣の大群です。私も協力させてください」



 イフリートも活躍して、後でルシスちゃんから美味しいお酒を貰いたいのである。



 「嫌よ。ルシスちゃんが持っている美味しい食べ物もお酒も全部私が貰うのよ!」


 「サラマンダー様、そんなことを言わないでください。私にも少しお酒を分けてください」



 イフリートは必死にサラちゃんに懇願するが、サラちゃんは全く聞き入れない。



 「俺が全部1人で倒してやるぜ」



 トールはふわりんに乗り換えて、魔獣の群れに向かっていく。



 「トール無茶はしないで!」


 

 私はトールを追うようにふわりんに飛び乗った。



 「イフリート、私たちも行くわよ」



 ポロンさんも慌ててふわりんに飛び乗る・・・しかし、ふわりんの定員は2人まである。3人も乗ったのでふわりんは重さに耐えきれずに、ジグザクに移動しながら地面に墜落した。


 落ちる瞬間に3人はふわりんから飛び降りたので怪我はすることはなかった。しかし、落ちた場所は1000を超える魔獣の大群の目の前だった。



 「これでもくらえ!」



 トールは『ミョルニル』に魔力を注いだ。『ミョルニル』はみるみる大きくなり10mほどの大きなハンマーになった。



 「こんなに大きいの軽いぜ」



 『ミョルニル』はバルカンが作った神剣と言われる神の武器に相当する力を宿しいる。なので、10mの大きさになっても、全く重たくなく簡単に持つことができるのである。


 トールは魔獣の大群に向かって『ミョルニル』をモグラ叩きの様に連打しまくる。


 大きなハンマーに叩かれた魔獣たちはペチャンコになる。



 「このハンマーの力はすごいぜ」



 トールは『ミョルニル』の攻撃力に嬉しそうにしている。


 

 「私も援護するわ」



 ロキさんは魔剣『ルーヴァティン』を振りかざす。黒い斬撃が魔獣たちを襲う。


 魔剣『ルーヴァティン』は空間を切り裂くことができる能力と闇の空間へ閉じ込める能力がある。


 黒い斬撃に触れた魔獣たちは闇の空間に飛ばされてる。



 「イフリート、私たちも戦うわよ」


 「・・・」



 ポロンの呼びかけにイフリートは沈黙で答える。


 ポロンは弓をかまえて、魔力使って炎の矢を作り魔獣に向かって弓を射抜く・・・しかし、火力が弱く魔獣に命中するが、致命傷に及ばない。



 「イフリート、何をしているのよ!私に魔力を供給しなさい」



 ポロンの魔力はイフリートに協力を得て、膨大な魔力に変換されるのである。



 「ルシスさんの持つ美味しいお酒が・・・サラマンダー様に全て奪われてしまいます」



 イフリートは涙を流しながら訴えた。



 「イフリート、安心しさない。私がルシスちゃんに頼んで美味しいお酒を分けたもらうわ。でもそのためにもここにいる魔獣たちを食い止めないといけないわ」



 ポロンがイフリートを説得する。



 「本当にもらえるのですか・・・」



 イフリートは不安であった。



 「私を信じるのよ」



 根拠のない自信でイフリートを説得するポロン。



 「わかりました。協力致します」



 イフリートがやる気を出したのである。ポロンは再び弓を構えて炎の矢を射抜く。ポロンの放った矢は大きな炎に変わって、魔獣たちを炎上させる。


 3人の攻撃により、1000体いた魔獣は100体ほど減り残りはまだ900体はいる。



 「なかなか減らないぜ」


 「そうね。数が多すぎるわ」


 「でもやるしかないわ。魔獣たちを食い止めないとラディッシュの町が危険だわ」


 「私に任せるのよ」



 サラちゃんが魔獣たちの上空を飛び回りながら、口から炎を吐き出す。精霊神最強のサラマンダーが放つ炎は一瞬で魔獣たちを灰に変えてしまう。あたりは火の海とかして魔獣たちは恐怖で足を止める。そして、サラマンダーの強大な力を見た魔獣たちは、悲鳴をあげて逃げ出した。



 「魔獣たちが逃げていくぜ」


 「そうですね」


 「深追いはやめておきましょう。サラちゃんが力を見せつけたからもう襲ってこないでしょう」





 ⭐️魔獣視点になります。



 「なんだあいつらは・・・」


 「ニーズヘッド様、冒険者だと思います」



 ワイバーンが答える。



 「あんな巨大なハンマーを人間が扱えるはずがないだろ!」



 ニーズヘッドは上空から魔獣の大群の様子を伺っていた。しかし、いきなり冒険者が大きなハンマーで魔獣たちを次々とペチャンコにされてビビっている。



 「あの黒い斬撃はなんだ!」



 ニーズヘッドは大声で叫ぶ。



 「検討もつきません。ただあの黒い斬撃に触れると体が消滅するみたいです」


 「恐ろしすぎる・・・」


 「次のエルフの冒険者の炎の矢は、大したことはなさそうですね」


 「そうだな。あんな化け物みたいな攻撃をしてくる奴が3人もいるわけがないだろう」


 「そうです・・・ね・・・いえ、3人もいました」



 ワイバーンは死んだようにフリーズした。



 「あり得ないぞ!あんな巨大な炎の矢が存在するわけがない」


 「・・・」



 ワイバーンのフリーズは解除されない。



 「どうする・・・このまま侵攻を続けるか?それとも退くか・・・」



 ニーズヘッドは困惑している。



 「あれは・・・サラマンダーです。精霊神最強のサラマンダーです」



 ワイバーンはフリーズが解けると同時にサラマンダーの姿を見て、驚いてそのまま失神して地面に墜落した。



 「サラマンダーがなぜ冒険者の味方をしているのだ・・・これはやばいぞ。サラマンダーに関わるなんて死を意味することだ。俺は逃げるぞ」



 ニーズヘッドは一目散に逃げ出した。ニーズヘッドが逃げ出したので、魔獣達も急いでディービルの森へ逃げていった。



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