第13話 食堂にて

         


 食堂はかなりの人でにぎわっている。ここの食堂は、この町で1番おいしいとの評判の店である。そのためトールさんが、どうしてもこの宿に泊まると言ってきかなかったらしい。



 「やっとご飯が食べられるぜ。もうお腹ペコペコだ」



 トールさん、あなたは私のハムサンド食べたではないですか?まだお腹ペコペコなんて、どんなお腹しているのですかと思ったが、本人には言えないのである。



 「さっきルシスちゃんのハムサンド食べたよね!お腹がペコペコなのは、ルシスちゃんですよ」



 さすがロキさん。私の気持ちを代弁してくれた。



 「先程のことは大丈夫です。でもお腹がペコペコなのは本当です。早く食べたいです」


 「俺も早く食べてぇーー」



 ロキさんはお店の方に食事の注文をしてくれた。


 飲み物は、ロキさんとトールさんはお酒を、私とポロンさんは果物のジュースを頼んだ。ポロンさんはお酒は飲まないらしい。


 しばらくすると、獣のステーキが出てきた。ポロンさんだけは、お肉が苦手みたいなので焼き魚みたいである。



 「おっ、うまそうだなぁ」



 そういうと、トールさんはすぐにペロリと食べてしまった。



 「全然足りないぜ!おかわり頼むわー」



 ロキさんに聞いたところ、トールさんはかなりの大食漢だ。このパーティーで1番お金がかかるのは、トールさんの食費代らしい。



 「この町のお酒は、めちゃうめぇー、もっとお酒持ってきてくれ」


 「トール、明日はこの町からの依頼で、ベアーウルフを討伐しないといけないから、飲みすぎないでね」



 とロキさんが心配そうに言う。



 「そうですよトール、お酒を飲んだら次の日起きるのが大変ですよ。討伐前はあまりお酒は飲まない方がいいですよ」



 ポロンさんも心配している。



 「大丈夫、大丈夫、それに討伐の前の日は、たらふく食べて飲むのが俺の方針だから」


 「たしかにそうだったね。でも気をつけるのよ」




 「あのー、ベアーウルフの討伐ってどういうことですか?」



 私は気になったのでロキさんに聞いてみた。



 「ルシスちゃんには、私達がなぜこの町に来てるか説明してなかったよね。私達はこの町の町長さんの依頼で、ベアーウルフの討伐にきたのよ。ベアーウルフは、森の中からほとんど出ることはないんだけど、最近町の周囲でよく見かけるらしいの。まだ、被害は出ていないけど、早めに討伐しないと危険だからね。これは余談だけど、この町の宿屋の食事が美味しいと評判だったので、トールが喜んでこの依頼を受けたのよ」


 「そうなんですね。その討伐に、私もついていきたいです」


 「ダメです」



 先程まで、大人しく食べていたポロンさんが大声で言ったので、わたしはビックリした。



 「危険な場所には連れていけません」


 「いいじゃないか。俺がベアーウルフを退治するから、ポロンがルシスを守ってあげればいい」


 「ダメです。何が起こるかわかりません!」


 「ポロンの言う通りよ。悪いけど、ルシスちゃんはお留守番しといてね」


 「・・・はい、わかりました。」



 明日になったら私は力を取り戻せる。だから足手まといにはならないのに。明日に、またお願いしてみようと思った。


 トールさんは、4度目のおかわりをしている。ほんとによく食べる人だ。


トールさんは、男みたいな喋り方をしているが、大人しくしていたらすごく可愛い女の子だ。あの喋り方をなおしてくれたら、めちゃくちゃモテそうなのに・・・


 リーダーのロキさんは、しっかり者の長身でとても綺麗な人だ。人柄もよくとても優しい人。リーダーにふさわしい人である。


 ポロンさんは、無口であまり喋らないが言うべきことはきちんと言う人だ。私が討伐に着いて行くと言った時も、すぐに注意してくれた。ポロンさんは冷静で周りをしっかりとみて、適切な行動を取れる人だと思う。そして、見た目もイメージ通りのエルフだ。スラット背が高く色白の細身の美人である。


 このパーティーの見た目レベルはかなり高い。見た目だけなら、Aランク冒険者にちがいない。この食堂でも男の人達は、チラチラとこちらを見ている。 


 私がパーティーに入ることで、見た目レベルを下げてしまうのが、申し訳ないないくらいだ。



 「はぁーもう食べられない。このへんにしといてやるか」


 「7人前も1人で食べておいて、何をいってるの」


 「そんなに食べたかな?まぁいいじゃないか。明日はベアーウルフの討伐だ。がんばろうぜ」


 「期待してるわ。トール」


 「任せときな」


 「ルシスちゃんうるさくてごめんね。トールは口は悪いけど、ホントはすごく優しくていい子なのよ」


 「わかってます!それににぎやかで楽しかったです」


 「そう言ってくれると嬉しいわ。それじゃあ、明日は早いから、部屋に戻りましょう」



 そうして私達は部屋に戻り、明日にそなえて眠りにつくのであった。


 


 なかなか眠れない。今は23時くらいだ。気分転換に外に散歩にでも行きたいが、誰かが目覚めて、私がいなかったら大騒ぎになるだろう。特にポロンさんにはすごく怒られそうだ。


 魔界に転生してから、いろんな事があった。7大天使様との訓練は楽しかったので、辛い事ばかりではない。でも家族とは5年近くも会えていないので寂しかった。


 でもこの町で、ロキさんに助けてもらいパーティーに入れてもらえた。明日から私の人生は大きく変わるはず。天使様達から授かった能力で異世界を楽しもう。


 そんなに事を考えているうちに、私は眠りついてしまったのである。


 


 ・・・あれ?ここはどこだろう。たしかに宿屋にいたはずなのに。でもこの場所はたしか・・・

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