第162話 倭の国パート3



 「邪魔をするな」


 「子供を斬りつけるなんて許さないわよ」



 ロキさんが侍を睨みつける。



 「よそ者が口を出すな。お前も死罪だ」



 侍がロキさんを斬りつける。


 しかし、ロキさんは軽々と避けて侍のお腹を殴りつける。



 「あなたでは私の相手になりませんわ」



 侍はお腹を抱えて倒れ込む。


 

 「無礼者が!」



 数名の侍がロキさんを取り囲む。



 「よそ者が俺らに刃向かったら、どうなるかわかっているのか!」



 侍達がロキさんに斬りかかる。


 しかし、ロキさんは簡単に避けて、全ての侍を剣を使わずに素手で倒してしまう。


 ロキさんは、身体強化の属性を手に入れたので、剣を使わなくて体術だけでも相当な力を発揮する。



 「化け物が・・・」



 侍達は倒れながら、ロキさんに悪態をつく。



 「騒がしい。何があったのだ」



 駕籠の中から1人の侍が現れた。



 「武蔵様、この女が護衛の侍を全て倒しました」


 「そうなのか。威勢のいい女だな」


 「子供を殺させはしないわ」



 ロキさんが武蔵に言い放つ。



 「この国では、平民は武士に対して平伏して道を譲るのがルールだ。そのルールを破れば子供でも死罪になるのだ」


 「そんなの間違っているわ」


 「よそ者には関係ないことだ。それが嫌ならこの国から出ていけばいいだけだ」


 「子供はそんなことを理解できないし、国を出ることもできないわ」


 「だから親がきちんと躾をしないといけないのだ。だからその子供の親も死罪だ」


 「そんなことは私がさせないわ」


 「たかが雑魚の侍を倒したくらいで調子に乗るなよ。俺は倭の国最強の侍、宮木武蔵だ。お前ごとき一瞬で切り殺してやるわ」


 

 「何を騒いでいる」



 ロキさんと武蔵が対峙しているところへ、数人の青い羽織を着た侍が現れた。



 「武蔵、何を騒いでいるのだ」


 「フレッシュ組の近藤男か・・・面倒なやつが現れたな」


 「武蔵、平民への横暴な態度は許さないぞ」


 「今回は無礼な態度を見逃してやるが、次はないと思え」



 武蔵は倒れている侍を連れて引き上げていった。



 「大丈夫ですか」


 「私は大丈夫です。子供にも怪我はありません」


 「それなら良かったです。あなたはよその国から来た冒険者ですか」


 「そうです。お寿司を食べに倭の国へ来ました」


 「そうなのですか。しかし、残念なことにお寿司の材料である新鮮な海の幸は、デスシャーク、ヘルオクトパスが倭海に多量に発生したので漁に出ることができません。わずかに取れる海の幸は、全て武家達が持っていき、この町人地には海の幸は入ってこないのです。なので、残念ながらお寿司は食べることはできないのです」


 「そうみたいですね。とても楽しみにしていたので残念ですわ」


 「それと、子供を救って頂いてありがとうございます。倭の国では、平民は武家に逆らうことはできません。なので、誰も助けることはできなかったのです。しかし、あなたの行動で子供が救われて本当に良かったです」


 「当然のことをしたまでですわ。それよりも、その武家を引き上げさせた、あなた方は何者ですか?」



 「私たちはこのエードの町で、武家の横暴から平民を守る為に結成したフレッシュ組です。私たちは武家の出身なので、武蔵達も簡単には手を出すことをできません」


 「フレッシュ組・・・素晴らしいですわ」


 「ありがとうございます。あの武蔵という男は倭の国最強の侍です。しかし、明日、この町で剣術大会があります。そこで武蔵を倒して平民への横暴を抑止したいと思っています」


 「そうなのですか。その剣術大会は誰でも参加できるのですか」


 「はい。誰でも参加できます。もしかして参加したいのですか」


 「参加したいわ。あの武蔵という男の態度は許せませんわ。私の力で武蔵を倒したいと思いましたわ」


 「そうなのですか。でも武蔵は強いです。それに武家からはかなりの猛者が参加します。なので、参加するのは危険かと思います。剣術大会では相手を殺しても罪には問われないので、倭の国以外の者が参加するのはオススメできません」


 「そうなのですか・・・。それでも私は参加したいですわ」



 ロキさんは、子供簡単に殺そうとする倭の国の体質に、とても怒りを感じていた。近藤男の話しよると、剣術大会で優勝するとこの城下町エードの領主から、なんでも願いを一つ叶えてもらえるらしいとのことであった。フレッシュ組の近藤男は、武蔵を倒して優勝したあかつきには、平民の地位を向上を訴えるとのことだった。なので、ロキさんも優勝して、近藤男の訴えを実現してあげたいと思ったのである



 「あなたの意思は固いのですね。あなたのお名前を教えてもらえないでしょうか」


 「私は、ロキです。ラストパサーのリーダーです」


 「私は近藤男、フレッシュ組の組長をしています。剣術大会に参加するには、申請書を出さないといけません。申請用紙をお渡しするのでご記入お願いします。手続きは私がしておきます」


 

 ロキさんは申請用紙に記載して剣術大会に出ることにした。



 「剣術大会は、明日の9時に中央広場でおこなわれます」


 「わかりました」



 

 「ロキ、なんかややこしいことになったのか?」



 トールさんが心配そうに言う。



 「問題ないわ。子供を平気で殺す町なんて絶対に許せないわ」


 「確かにな。ロキが助けに行かなかったら、俺が飛び出していたぜ」


 「私もそう思うわ。ロキは正しいことをしたわ」



 トールさん達も子供を殺そうとした侍に対して怒っているのである。



 「それで、剣術大会に参加して、ここ町の領主に改善するように訴えることにしたのよ」


 「それはいいことだな」


 「私も賛成だわ。あんな侍なんてぶっ倒したらいいのよ」


 「もちろんよ。私があの男をぶっ倒すわよ」



 ロキさんは剣術大会に出場することになった。


 剣術大会は明日なので、今日は当初の予定通り倭海へ向かった。


 近藤男の情報のおかげで、海の幸が取れなくなった原因はわかった。原因はデスシャーク、ヘルオクトパスの魔獣のせいである。この2匹の魔獣は、温暖な海域の鬼の島周辺にしか生息しない。なのに、倭の国の近隣の海である倭海に生息するようになったみたいである。


 その原因はもうわかっている。サラちゃんのせいである。サラちゃんが、ヤミークラブ、ビッククラブを茹でるために海を温暖化したので、この2匹の魔獣の生息地が拡大したのであった。


 

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