第161話 倭の国パート2



 私たちは大きな門を抜けて、倭の国の城下町へ入ると、そこはテレビで見た時代劇の街並みがあった。城下町とは領主の居城を中心としてた都市である。


 この町も中心には立派な天守閣を持つお城がある。そのまわりに武家地があり、立派な侍屋敷が立ちならでいる。そして、入り口付近は町人地になり隙間なく家が並んでいる。



 「たくさんが家が並んでいるぞ」


 「本当ですわ。隙間なく家が並んでいて不思議ですわ」


 「おい、あっちの方にお店があるぞ」


 「お寿司が食べれるかもしれませんわ」



 トールさん達は急いでお店のある方へ走っていった。



 「それにしても倭の国の住人は、変わった格好をしているわね」


 

 ロキさんは周りをキョロキョロしながら言う。


 倭の国の人の服装は羽織袴である。なので、ロキさんはもの珍しくてキョロキョロしているのである。



 「ロキお姉ちゃん、私たちもお店の方へ行きましょう」


 「そうね。私もお寿司を食べたいわ」



 私たちはトールさんの後を追った。



 「ポロン、納豆と言う食べ物が売っているぞ。これは美味しいのか?」


 「そ・そ・それは・・・・」



 ポロンさんは、鳥居の件で知ったかぶりをしたので、トールさんに納豆のことを聞かれてあたふたしている。



 「トールお姉ちゃん、それは・・」


 「ルシスちゃん、ポロンに答えさせてあげてね」



 私が納豆の説明をしようとしたが、ロキさんがそれを静止した。



 「ポロン、教えてくれ」


 「それは甘くてコシがあって、とてもおいしい食べ物ですわ」



 ポロンさんは冷や汗をかきながら適当に答えた。



 「本当か?それなら買ってくるぜ」



 トールさんは納豆セットを購入した。ここのお店は、イートインスペースがあり食べることができるみたいである。



 「ポロン、どうやって食べるのか教えてくれ」


 「そ・そ・そうですね・・・」



 ポロンさんは納豆とご飯を渡されてイートインスペースに座った。


 ポロンさんはどういう食べ物かわからないが、とりあえず納豆の蓋を開けた。



 「キャーーーー」



 ポロンさんは納豆の強烈な匂いで白目をむいて倒れてしまった。


 エルフは匂いに敏感であり、納豆の独特の匂いは苦手であった。



 「ポロン大丈夫か」


 「・・・・」


 「それにしても強烈な匂いだな」


 「そうね。ルシスちゃんこれは本当に食べ物なの?」



 ロキさんは不安げに私に聞いてきた。



 「はい。食べれます。でも独特の匂いがあるので苦手な人もいます」


 「そうなのね。でもこれはどうやって食べるのかしら」


 「納豆はまず100回程度かき混ぜます」


 「100回もかき混ぜるのか?」


 

 トールさんはビックリする。



 「はい。本当は400回かき混ぜると良いと言われていますが、私は、100回程度で十分と思っています」


 「400回は面倒だろ。なぜかき混ぜるのだ」


 「それはかき混ぜることによって、粘り気を出して栄養価を上げるのです。そして食感も良くなり味を良くします」


 「そうなのか。なら俺がかき混ぜるぜ」



 トールさんは匂いに耐えながら納豆をかき混ぜる。



 「よしかき混ぜたぜ」


 「かき混ぜたらこのタレを入れて、ご飯の上に乗せて食べます」


 「わかったぜ」



 トールさんは納豆をご飯にかけて恐る恐る口に放り込む。



 「匂いは強烈だがこれはおいしいぜ」


 「私にも食べさせて」


 

 ロキさんも納豆を食べる。



 「本当だわ。それにそんなに匂いも気にならないわ」


 「これが倭の国の食べ物かぁ。早くお寿司も食べたいぜ」


 「そうね。次はお寿司のお店を探さないとね」



 私たちはお寿司を食べられるお店を納豆屋のご主人に尋ねてた。


 しかし、ご主人の話しだと最近は、海の幸が取れない為、町人地ではお寿司は食べれないということであった。



 「せっかく倭の国へ来たのに、お寿司が食べられないなんて困ったものだ」



 トールさんが頭を抱えている。



 「倭の国の海域で何か起こっているのかしら?ちょっと調べてみない」


 「そうだな。お寿司のために調査しようぜ」



 私たちはお寿司を食べるために、倭の国に隣接する倭海を調査することにした。



 「ポロン、店を出るぞ」


 「・・・」



 ポロンさんはまだ白目をむいて気絶している。



 「ポロン、お寿司が出てきたぞ」


 「本当なの!!!」



 ポロンさんは白目をむいたまま立ち上がってきた。



 「どこなの?お寿司はどこなの?」


 

 ポロンさんは無意識のままお寿司を探す。



 「ポロン、お寿司はないわよ。目を覚ますのよ」



 ロキさんがポロンさんの頭をゴツンと叩く。


 ポロンさんは、頭を叩かれた衝撃で目を覚ます。



 「はっ!ここはどこなの・・・確かお寿司があったと言われた気がしたわ」



 ポロンさんは意識を取り戻した。



 「ポロン、この町にはお寿司の材料である魚がないので食べれないのよ。だから、私たちは倭海へ行ってなぜ魚が取れないのか調査をすることにしたのよ」


 「そうなのね。お寿司のためなら私も協力するわ」



 ポロンさんの理解も得て、私たちは納豆のお店から外にでた。


 外に出ると馬に乗った数名の侍達と、豪華な駕籠を運ぶ男の姿が見えた。


 そして、外を歩いている町人達は駕籠に向かって平伏していた。


 

 「なんで?みんな這いつくばっているのだ」



 トールさんは疑問に思う。



 「見て!あの豪華な駕籠に向かって、みんなが頭を下げているみたいだわ」



 「お前達、よそ者だな!何を突っ立ておる。無礼ではないか!早くひれ伏せろ」



 これはまずい。あの駕籠には、この町の偉いさんが乗っているのに違いない。このままでは大きな騒動になってしまう。



 「みなさん。平伏してください。倭の国には倭の国のルールがあります。なので従ってください」


 「確かにそうだな」


 「わかったわ」



 ロキさん達は私の言葉に納得してくれて膝をついて平伏した。



 「それでよいのだ」



 侍達が私たちの前を通り過ぎていく。


 その時。


 1人の5歳くらいの女の子が、家から飛び出してきて、侍達の前を通り過ぎたのであった。



 「サクラ、外に出てはダメよ」



 女の子を追いかけて女性が家から飛び出してきた。



 「この無礼者が」



 侍が女の子を斬りつける。



 「やめてーーーー」



 女性が大声で叫ぶ。



 「お前!何をするのだ」



 ロキさんが飛び出して女の子を守ったのであった。

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