第160話 倭の国パート1
私たちは倭の国へ行くことになった。倭の国は出雲山をさらに北へ進んだ先にある。
「倭の国には侍という変な格好をした剣士がたくさんいると聞いたことがあるわ」
ポロンさんは倭の国の存在を知っているらしい。
「俺もそれは聞いたことあるぞ。しかし倭の国は他の国との交易はおこなっていないらしいぞ」
「そうだわ。あの国に入るのはかなり厳しいチェックを受けると聞いたことがあるわ」
「しかし、オーベロンの言うお寿司と言う食べ物がとても気になるぜ」
「私もよ。その情報はエルフの国には入ってきていないので、どんな食べ物か早く知りたいわ」
2人の話しから推測すると、倭の国は他の国との交易を持たず、入国するには厳重なチェックがあるみたいだ。これは鎖国をしているのかもしれない。
そして、鎖国をしているので他の国とは違った文化の発展をして、侍という剣士が闊歩している国、それが倭の国なのであろう。
私はなんとなく江戸時代の日本に似ていると感じた。しかも倭の国の食べ物にはお寿司がありお米がたくさんある
もし異世界版の日本なら、私にとってとても嬉しいことである。しかし、入国するには厳しいチェックがある。それをどうやって対処するかが問題であった。
私は目立たないようにするために、今回はサラちゃんに運んでもらわず、ロキさん達にはフワリンで行くことにしてもらった。
そして、フワリンで上空から倭の国へ入国してもいいのだが、トラブルの原因になるのできちんと正門から入ることにした。
妖精の神殿を出発して、3時間ほど経過した頃遠方に、石垣の上に高くそびえる天守閣が見えた。間違いない日本のお城だ。そしてあそこが倭の国なのであろう。
「ロキお姉ちゃん倭の国が見えました。ここからは馬車に乗り換えて進みましょう」
「そうね。倭の国は警戒心の強い国と聞いているわ。上空から近づくと攻め込んで来たと勘違いされるわね」
私は収納ボックスから馬車を出して、馬車に乗り換えた。
「もうすぐ、お寿司だな」
「そうですわ。胸がドキドキですわ」
「お寿司を期待するのはいいけど、どうやって倭の国に入るかが問題よ」
ロキさんの言う通りである。強引に入ることはできない。もし入国を断られたらどうしたらいいのだろか。
「ドワーフの国みたいに、お酒でも出したら入れてくれるだろう」
「そうですわ。プレゼント作戦ですわ」
プレゼント作戦・・・日本人なら誰でも喜んで受けっとてくれるもの・・・・私には思いつかないのであった。
馬車がどんどん倭の国へ近づいていく、私はいい案が浮かばない。このままでは倭の国へ入国するのは難しそうである。
「変な赤い門があるぞ」
「本当ですわ。でも扉もないしただの赤い丸太なのでは?」
倭の国への入り口には大きな鳥居が建てられていた。鳥居をくぐれば大きな門があり、門の両脇には鬼のような形相の銅像が2体並んでた。
「ロキお姉ちゃん、馬車から降りて赤い門を通り抜けましょう」
「えっ!馬車で通った方が早いわよ」
「ロキお姉ちゃん。あの赤い門は鳥居といって神聖なものです。それを馬車で通れば倭の国の方へ失礼な対応になります」
「そうなの?それなら歩いて通りましょう」
ロキさん達は私の意見に納得してくれて、馬車を降りて歩いて通ることにした。
「ロキお姉ちゃん、あの鳥居を抜ける時にはルールがあります」
「そうなの?」
「はい。鳥居をくぐる前に一礼して、そして、鳥居の端をくぐるのです。決して真ん中を通ってはいけません」
「なんでだ?」
トールさんが頭を傾げて聞いてきた。
「鳥居の真ん中は神様が通る道だと言われています。なので真ん中を通ってはいけないのです」
「ふーーーん。面倒だな」
「トール、ルシスちゃん意見に従いなさい」
「わかってるぜ」
ロキさん達は、私の話しを素直に受け入れてくれて、鳥居をくぐる時に一礼をしてから、鳥居を端からくぐった。
『バシャ』
私たちの目の前に急に黒い服をきた2人の男性が現れた。その姿はまるで忍者のようであった。
「あなた方は合格です。倭の国へよこそ」
「どういうことだ!!!」
トールさんは驚いているが、私にはすぐにわかった。倭の国へ入る為の厳しいチェックとは、鳥居のくぐり方で判断していることを。
「俺たちは入国のチェックを受けなくていいのか?」
「もう、チェックは終わりました。なので奥の扉から倭の国へお入りください」
「意味がわからんぜ」
「本当ですわ」
「そういうことだったのね」
勘の鋭いロキさんだけ理解したみたいであった。
「トール、ルシスちゃんのおかげよ」
「なんでだ?」
「あの赤い門の通り方よ。あの門の通り方で私たちをチェックしていたのよ」
「そういうことか」
「やっぱりね。私もそれを言おうと思っていたのよ」
ポロンさんが自慢げに言う。
「さすがだなポロン。俺には全くわからなかったぜ」
「オホホホホ、倭の国のことならなんでも私に聞いてくれたらいいのよ」
ポロンさんは顔を引きつらせて言うのであった。
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