第163話 倭の国パート4
「サラが原因で強い魔獣が倭海に住みついたのか?」
「そうだと思います」
「それならなおさら、俺達が解決しないといけないな」
「私もそう思うわ」
「私もよ」
みんなの意見は一致した。
私たちはエードの町から出て倭海に向かった。
エードの町から倭海へは、そんなに時間はかからなかった。大きな白いきれいな砂浜に来た私たちは、海の中にいる魔獣をどうやって倒すかを考えた。
「フワリンを使って、上空から倒す作戦でいきましょう」
「サラちゃんを呼び出して、海を沸騰させて魔獣を茹で上げるのが1番だと思いますわ」
「俺は氷水属性を手に入れたから、海中でも自由に動けるぜ。俺が海に潜って倒して来てやるぜ」
私は3人の意見をすぐに却下した。
ロキさんの上空からの作戦は、海の中にいる魔獣が海から出てこないと成立しないので却下した。
ポロンさんのサラちゃんを使った作戦を実行すると、新鮮な海の幸まで茹でてしまうので却下した。
トールさん単独撃退作戦はトールさん1人にかなり負担がかかる。デスシャーク、ヘルオクトバスはC2ランクの強い魔獣である。なのでトールさんの安全を考えて却下した。
「なら、ルシスの案を教えてくれよ」
全ての意見を却下した私にトールさんが尋ねる。
私はみんなに魔獣と倒すプランをプレゼンした。
「まず最初にヘルオクトパスを倒しましょう」
「どうやって倒すのだ?」
「ヘルオクトパスは大きなタコの魔獣です。タコはカニが大好物です。そして、タコはツボに入る習性があるのでこの2つの習性を利用します。私が大きなタコツボを海岸に用意します。そして、その中にビッククラブを餌として入れます。そうすることでヘルオクトパスは自ら海岸に現れるはずです」
「か・か・完璧だ・・・」
「私もそれを考えていたのよ」
「そんなにうまくいくのかしら?」
ロキさんだけは不安を感じていたが、この作戦以外に有能な新しい案が出なかったので、タコツボ作戦が採用された。
私はすぐにアカシックレコードを使って大きなツボの作成に取り掛かった。
1時間後には木製の大きなツボを3個用意することができた。
私はその大きなツボを海岸に置いて、余っていたビッククラブを収納ボックスから取り出して、ツボの中に設置した。
「ビッククラブ・・・俺が食べたい」
トールさんが遠い目をしながらビッククラブを眺めている。
「ジュルジュル・ジュルジュル」
ポロンさんが溢れ出るヨダレを我慢して、ビッククラブを眺めている。
この様子だとヘルオクトパスより先に、この2人がビッククラブを食べてしまいそうである。
「2人共、我慢しなさい。ビッククラブを食べるよりもヘルオクトパスを倒すのが先決よ」
「わかっているけど、魔獣に渡すのはもったいないぜ」
「そうよ、魔獣に渡すくらいなら私が食べたいわよ」
私はトールさん達の扱いには慣れている。2人がダダをこねるのも想定内であり問題はない。
「ヘルオクトパスの肉は、生でも焼いて食べても美味しいと聞いています」
トールさん達の目つきが変わった。
「一兎を追う者は二兎を得るってヤツだな」
「肉を切らして大きい肉を得るってことね」
トールさん達は、訳のわからないことを言っているが納得してくれたみたいである。
タコツボをセットして、5分後、ジャイアントクラブの匂いに釣られて、ヘルオクトパスが3体海から這いずり出てきた。
ヘルオクトパスは、全長20mあるとても強大なタコの魔獣である、八本の長い手足にはたくさんの吸盤が付いていて、一度捕らえられると2度と抜け出すことができなくなり、八本の手足で締め付けられて、殺されると言われている。
「俺の食べ物だ」
「いえ、私のよ」
トールさんとポロンさんがすぐに飛び出した。
「トール、ポロン待ちなさい」
続いてロキさんが飛び出した。
トールさんは、ヘルオクトバスの頭に大きなハンマーをぶちかます。
「くらえ、メガトンハンマー」
ヘルオクトパスの弾力のある頭をハンマーで殴りつける。しかし、ヘルオクトパスの頭は、クッションのように凹むがすぐに元に戻ってしまう。
「なんだ、こいつの体は」
ヘルオクトパスの体は弾力性があり、トールさんのハンマーが効かなかった。そして、ヘルオクトパスは、八本の手足を伸ばしてトールさんを拘束する。
「吸盤の吸い付きが強くて抜けだぜないぞ」
トールさんは吸盤に圧着されて身動きが取れなくなった。そして、八本の手足でギュッと締め付けられる。
「氷結サンダーライトニング」
トールさんは雷魔法と氷魔法の合体魔法を使う。
ヘルオクトパスの体が凍りつきその凍りついた体に凄まじい電流が流れる。
ヘルオクトパスはたまらずトールさんは離す。
しかし、逃げ出したトールさんにむかって、ヘルオクトパスは口から黒い猛毒を吐きつける。
「アイスガード」
トールさんは自らの体を凍らせて、毒を体に触れさせないようにして、黒い猛毒の中を突き進む。
「氷結ハンマー」
トールさんのハンマーが、無数の氷柱のような尖った氷が付いたハンマーに変形した。
トールさんは、ヘルオクトパスに目がけて、何度もハンマーを振り落とす。
ヘルオクトパスは、氷結ハンマーの氷柱が、全身に突き刺さり動かなくなってしまった。
ポロンさんは、ヘルオクトパスへ炎の矢を撃ち放つ、炎の矢は、イフリートの力を借りてマグマの矢に変わる。
マグマの矢は一瞬でヘルオクトパスの八本の手足を焼き尽くす。
「私のタコさんの手足が、すべて焼き尽くされてしまったわ」
「ポロンさん火力が強すぎました。申し訳ありません」
イフリートが残念そうにポロンさんに謝る。イフリートもタコさんを食べたかったのである。
「まだ、頭が残っていますわ」
ポロンさんは、急いで、ヘルオクトパスの頭を拾いに行く。
「タコさんの頭は私のものですわ」
ポロンさんは嬉しそうにニコニコしている。
「そういえば、ルシスちゃんは生で食べても美味しいと言っていたわね」
ポロンさんは、パクリとタコさんの頭にかぶりついた。
「ウェーーーーーーーー」
ヘルオクトパスの頭には猛毒が詰まっている。なので頭は食べれないのである。
ポロンさんは猛毒を食べてしまい倒れ込むのであった。
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