第164話 倭の国パート5

  


 私はすぐにポロンさんに駆け寄り状態異常の解除の魔法を使った。


 毒が体に入って青ざめていた顔が、血色の良い顔に戻り、ポロンさんが意識を取り戻した。



 「私は何をしていたのかしら・・・そういえば、タコの頭にかじり付いた所から記憶がありませんわ」


 「ポロンお姉ちゃんは、ヘルオクトパスの毒に侵されて倒れていのたのです」


 「そうなの。それでルシスちゃんが助けてくれたのね。ありがとう、ルシスちゃん」


 「大事に至らなくて良かったです」


 「そうだわ!タコさんを食べないと」



 ポロンさんは話しをきちんと聞いていない。ポロンさんの頭の中はヘルオクトパスを食べることに夢中なのであった。



 『パチーーーン』



 「ポロン、何をしているのよ」



 ロキさんがポロンさんの頭を叩いて、ヘルオクトパスの頭を食べるのを防いだ。



 「いたわよ。タコさんを食べるのを邪魔しないでよ」



 ポロンさんは、ロキさんに助けてもらったのに逆ギレをしている。



 「ポロン、きちんと聞くのよ。ヘルオクトパスの頭には猛毒があるのよ。だから、食べることはできないのよ」


 「そんな・・・・・」



 ポロンさんはショックで倒れてしまった。



 「はぁーーー。困った2人だわ」



 ロキさんは、ため息を付いた。


 ポロンさんだけでなく、トールさんもヘルオクトパスの頭をかぶりついて、猛毒をくらってロキさんに助けてもらったところであった。


 私はポロンさんのほっぺたを叩いて意識を取り戻させてから、ヘルオクトパスの安全な食べ方を教えてあげた。


 ヘルオクトパスの頭は猛毒が詰まっているから食べれない。なので、手足だけを切り落としてから、手足を細かく切り刻むと食べやすいと説明した。



 「ロキの魔剣で綺麗に切り落としてくれ」


 「お願いしますわ」


 「はぁー。私の魔剣は調理するためにあるのではないのよ」



 そう言いながらも、ロキさんは2体のヘルオクトパスの手足を綺麗に切り落としたのであった。


 ちなみに、3体目のヘルオクトパスは、ロキさんがタコツボに入ろうとしたヘルオクトパスを、一瞬で頭を切り落として退治していたのである。ロキさんは完璧に魔剣を使いこなしているのであった。



 「タコさんは、コリコリして美味しいぜ」


 「ルシスちゃんの用意してくれた、わさび醤油につけて食べるとさらに美味しですわ」


 「本当ね。このツーーンとくる辛味が、タコさんのコリコリした食感にとてもマッチしていますわ」



 私は倭の国でお寿司を食べると聞いて、わさび醤油を作って持ってきたのである。わさび醤油は3人に好評で嬉しいのであった。


 私たちは腹ごしらえを終えた後に、タコツボに次々と入っていく、ヘルオクトパスを退治したのであった。



 「これで、30体目だな」


 「そうね。もう、現れないから、ヘルオクトパスはもうこの海域にはいないと思いますわ」


 「次は、デスシャークを倒さないとね」



 ロキさんのいう通りである。この海域のヘルオクトパスは全て退治したので、次はデスシャークを倒さないといけない。



 「ルシス、どうやってデスシャークを倒すつもりだ?」


 「ルシスちゃんなら、次の作戦も考えているよね」



 もちろん、私はデスシャークの倒し方も考えている。ヘルオクトパスの同様に、海岸までデスシャークを誘き寄せて退治するのである。



 「はい。デスシャークも海岸まで誘き寄せます」


 「サメツボを使うのか?」


 「いえ違います。ポロンさんに水着を着てもらって海岸で泳いでもらいます」


 「えっ!!私が泳ぐの?」


 「ポロンを餌にするのだな」


 「嫌よ。私は餌になりたくないわ」



 ポロンさんが激しく嫌がる。



 「きちんと聞いてください。デスシャークはサメの魔獣です。私の住んでいた国では、サメは必ず水着美女を襲います。なので、ラスパで1番の美人のポロンさんが、この水着美女の役に1番適しています」



 私は転生前に映画で見たことがある。水着の美女を襲うサメの映画を。なのでこの作戦を思いついたのである。そして、美女と褒めればポロンさんなら、この危ない役をしてくれるはずである。



 「そういうことなのね。ルシスちゃんのいう通りだわ。水着美女といえば私しかいないわね」



 ポロンさんは、ノリノリでOKしてくれた。



 「ポロンで大丈夫なのか?俺のが適任だと思うぜ」



 トールさんは美女の役は自分だと思っているみたいである。トールさんは短髪なので、美女というより美少年系である。



 「ルシスちゃん、本当にそんな作戦で大丈夫なの?」



 ロキさんだけが冷静に対応した。



 「大丈夫です。必ずデスシャークは現れます。なので、ポロンさんが襲われないように注意してください」


 「ルシスちゃんがそこまで言うのなら信じるわ。デスシャークは私に任せてね」



 ポロンさんには私が用意した可愛いピンクのワンピースの水着を着てもらった。


 

 「ルシス、デスシャークは食べれるのか?」



 トールさんにとって、食べれるか食べれないかで、やる気スイッチが全然違うのである。



 「もちろん食べれます。でも、生で食べるなら、白身の部分だけにしてください。赤みの部分は私の用意する、照り焼きソースを使って焼いて食べると美味しいです」


 「ロキ、デスシャークが現れたら、綺麗に赤身と白身分けて切ってくれ。後の処理は俺に任せろ」



 トールさんは、戦わずに食べる専門宣言をした。


 ロキさんは、ため息をしながら渋々了承したのであった。

 



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