第165話 倭の国パート6
ポロンさんは、私の用意したバナナの浮き輪に乗って楽しそうにしている。そのバナナの浮き輪を、トールさんが泳ぎながら引っ張っている。
「トール、もっとスピードを上げるのよ」
「なんで、俺がこんなことをしないといけないのだ」
「これがルシスちゃん作戦よ。美女がバナナの浮き輪に乗って楽しんでいるところを、デスシャークが襲ってくるのよ」
「本当なのか?」
トールさんは私の作戦を疑っているみたいである。
「これは作戦よ。もっとスピードを上げるのよ」
「はい、はい」
トールさんは嫌々ながらも猛スピードでバナナを引っ張るのである。
トールさんは、覚醒して氷水属性を手に入れた。氷水属性の特性として、水中の中でも呼吸できるエラ呼吸方を習得できる。しかし長時間水中にいられるわけではないが、特訓次第では1時間も水中を潜ることもできるのである。
トールさんは妖精の湖で泳ぎの特訓とエラ呼吸の特訓を重ねてきたのある。なので、その成果をここで試す時がきたのであった。
スピードが上がって引っ張られているバナナの浮き輪が跳ね上がる。
「ヒャッホーーー!」
ポロンさんが雄叫びをあげて楽しんでいる。
「これなら、どうかな!」
トールさんはさらにスピードを上げ蛇行しながら泳ぐ。
バナナの浮き輪は上下左右に跳ねる。
「キャーーーーー」
『ドボーーーーン』
ポロンさんは海中へ投げ出される。
「キャ、キャ、キャ」
トールさんは腹を抱えて笑う。
「もう、蛇行するのは反則よ」
ポロンさんは頬を膨らませて怒る。
「キャ、キャ、キャ」
トールさんはポロンさんずぶ濡れになって怒っている姿を見てさらに大笑いする。
ポロンさんはブツブツと文句を言いながらバナナの浮き輪に乗ろうとした時・・・
『ダーーダン・ダーーダン・ダーーダン・ダダン・ダダン・ダダン・ダダン・ダンダンダン』
と口ずさみながらデスシャークが現れた。
「キャーーーー」
ポロンさんが、作戦通り悲鳴を上がる。
私はポロンさんにデスシャークが現れたら、攻撃はしないで大きな悲鳴をあげるように指示をしていた。
ポロンさんは作戦通り、素敵な悲鳴をあげてくれて、私はとても嬉しかった。私はこのシーンを再現したかったのである。
「茶番は、もういいかしら?」
「はい。ロキお姉ちゃん。もう舞台は整いました。あとは自由に細切れにして食べやすくしてください」
ロキさんは魔剣レーヴァティンを抜いた。レーヴァティンは黒い炎をまとった。
ロキさんは、両手に均等に炎属性、大地属性の魔力を流す。この魔力のバランスが崩れると、レーヴァティンに魔力を吸収されてレーヴァティンが暴走するのである。
ロキさんは、両手でレーヴァティンを握り、瞬時にデスシャークの頭上に飛び上がり、デスシャークの頭を切り落としたのである。そして、赤身と白身を綺麗に切り分けたのであった。
「トール、デスシャークの白身よ」
「これを待っていたんだぜ」
トールさんが美味しそうにデスシャークを頬張る。
「私にも食べさせてよ」
ポロンさんはバナナの浮き輪に飽きたので、デスシャークを食べに来た。
「ポロン、まだデスシャークは残っているぞ。バナナの浮き輪に戻れよ」
「もう、バナナの浮き輪は飽きたわよ」
「ポロンお姉ちゃんこのアヒルの浮き輪で次のシーンを撮りましょう」
私は次なる作戦はアヒルの浮き輪で襲われるを決行した。
「なんて、可愛いアヒルなの!」
ポロンさんは、ノリノリでアヒルの浮き輪に乗ってくれた。
そしてまた、トールさんに引っ張ってもらって、2カット目を作成したのである。
次はサーフボードで、その次は鉄の檻など、いろいろ試して30体のデスシャークを退治したのであった。
「もう、クタクタだぜ。なんで、鉄の檻なんて引っ張らないといけなかったんだ?」
「大事なシーンなんです」
私の真剣な眼差しにトールさんは渋々納得してくれた。
「でも、これで、デスシャークも全て退治したぜ」
私たちは倭海に現れた、デスシャークとヘルオクトパスを全て退治して、倭海の平和を取り戻したのである。
「でも、また鬼の島の海域から魔獣がやってくるのではないのかしら」
ロキさんのいう通りである。この海域の温度が下がるまでは、また、ヘルオクトパス達はこの海域に現れるはずだ。
「私が温度を下げます」
私は氷魔法を使って強大な氷河を海へ放った。
海水はみるみる温度が下がって適温になった。
「これで、この海域にはヘルオクトパス達は来れません」
「・・・・」
「ルシスちゃん・・・今思ったんだけど、初めから、海域の温度を下げれば、ヘルオクトパス達を、退治できたのじゃないのかしら?」
「そうですわ、ルシスちゃん。私が水着を着る必要のなかったのでわ?」
「俺もバナナを引っ張る必要もなかったはずだ」
「・・・・」
私は1時間くらい3人から説教をされたのであった。
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