第166話 倭の国パート7
過程はどうあれ倭海の平和を取り戻すことはできた。これで、新鮮な魚を取ることができるのである。
「そろそろ、出てきたらどうだ!」
トールさんが叫ぶ。
「そうですわ。みんな気づいているわよ」
ロキさんが静かに言う。
「そ・そ・そうですわ。私も気づいていますわ・・・」
みんなに合わせてポロンさんも言うが、なんのことかさっぱり理解していない。
「ルシスちゃん。ロキ達は何を言ってるの?」
ポロンさんが私の方へ近寄ってきて小声で話しかける。
私たちはエードの町入ってから誰かにずっと尾行されていた。特に殺気は感じなかったので放置していたのである。ポロンさんだけは全く気づいていないみたいである。
「ポロンお姉ちゃん、私たちはずっと尾行されていたのです」
「本当なの?」
「間違いないです。でも殺気を感じないので様子を伺っていました」
「そうだったのね」
ポロンさんは自信ありげな顔をして海岸の大きな岩に向かって叫び出した。
「そこにいるのはわかっているのよ。いい加減に姿を現しなさいよ」
ポロンさんは岩を指差してカッコよくポーズを決めた
しかし大きな岩からは誰も出てこない。
「ポロンお姉ちゃん違います。後ろ大きな木の上に隠れています」
「そうなの・・・てっきり隠れるならあの大きな岩だと思ったわ」
ポロンさんは慌てて後ろの大きな木に向かって大声で叫んだ。
「大きな岩に隠れていると見せかけて、本当はそこの木に隠れているのね。私は最初からその木に隠れているのはわかっていたのよ。さぁ姿を見せなさいよ」
ポロンさんはドヤ顔をして木を指さした。
「・・・・」
「あれ?」
ポロンさんは顔を赤くして私のところに駆け寄ってきた。
「ルシスちゃん、反応がありませんわ。どういうことなの?」
ポロンさんの額からは汗がダラダラ流れ出している。
「相手は極秘任務で尾行しています。なので簡単には姿を見せません」
「どうしたらいいのかしら?」
「木を燃やしたら出てくると思います」
「それは名案だわ。早速やってみるわ」
ポロンさんは再び大きな木の前に立った。
「姿を見せないのなら仕方ありませんね。私の炎の矢で木もろとも消し炭にしてあげますわ」
ポロンさんは弓を構える。
「イフリート、特大のマグマをあの木に打ち込むのよ」
「わかりました」
ポロンさんの構えた弓の矢先が激しく燃え上がり大きなマグマになる。
「これでもくらいなさい」
「やめてぇーーーーー。死んじゃうよーーーー」
大木の上からピンク色の忍び装束をきた、女性の忍者が泣きながら降りてきた。
「尾行してごめんなさい。許してください。殺さないでください」
女性の忍者だからくノ一であろう。くノ一は日本名物土下座をしながら謝るのである。
「ポロン、危ないからそのマグマをしまいなさい」
ロキさんが止めに入る。
「ロキ・・・・もう無理なのよ。こんなに大きくなったマグマを消すのは不可能なのよ」
「ポロン、危ないぞ。早くそのマグマどうにかしろよ」
ポロンさんの出したマグマはどんどん大きくなっていく。ポロンさんが弓を引いているうちは、危険はないが、弓を打った瞬間に増大な熱を発して全てを焼け尽くすのである。
「イフリート、どうにかならないの?」
ポロンさんはイフリートに助けを求める。
「一度放ったマグマの力は自分でも制御できません」
「どうしたらいいのよ!!!」
ポロンさんは泣きながら叫ぶが、どうすることもできないのである。
そうしているうちにもマグマはどんどん大きくなっていく。
「ルシスちゃん、どうにかならないの?」
ロキさんが私に助けを求める。
解決策はいろいろある。まずは、私が使える究極魔法の一つであるブラックホールである。しかし、この魔法は黒属性の魔人にしか使えない魔法である。あらゆるもの全て吸い込むことのできるこの究極魔法なら簡単にマグマを吸い込むことはできるのである。
しかし、この魔法は使いたくはない。私が魔人であることがバレる可能性があるからである。
次は光魔法の究極魔法のワームホールである。ワームホールは時空と時空をつなげる魔法である。ワームホールを使えば、マグマをどこか違うところへ移動させることができる魔法である。
しかしこの魔法も使ったら、私が何者なのか詮索されるのは困る。特に私たちのことを監視しているくノ一の前で使うのは好ましくない。
そして、同じ理由で、光魔法のもう一つの究極魔法ホワイトホールも使うことはできない。ブラックホールが全てのものを吸い込むなら、ホワイトホールは全てのものを跳ね返して無効にする。
私はいろいろと考えた。くノ一の前であまり目立たなくて穏便に解決する方法を・・・
「ポロンさん、倭海に放り投げてください」
「でも・・・」
「それしかありません」
「わかったわ」
ポロンさんは巨大なマグマを倭海へ放り投げた。
倭海は、マグマの熱でグツグツと沸騰し出した。そして、適温に戻っていた倭海は、またしも温暖化した暖かい海に戻ってしまったのであった。
「また、新鮮な魚が取れなくなるぞーーー」
トールさんの悲痛な叫びがなり響いたのであった。
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