第167話 倭の国パート8
倭海を平和な海に戻す作戦は失敗に終わった。なので、お寿司はおあずけになってしまった。
しかし、今はお寿司よりもくノ一がなぜ?私たちを尾行していたかを確認するのが先決である。
「あなたは何者なの」
ロキさんがくノ一に問う。
「私は倭の国の最高権力者の帝様に使える忍び3人衆の1人猿飛もみじです」
「もみじちゃんはなぜ私たちを尾行していたの」
「帝様より、エードの町に冒険者が入国したので監視するように言われました」
「それで帝様には、私たちのことを何か報告したのですか」
「はい。エードの町の平民の子供を救い、武蔵殿を倒す為に剣術大会に出場すると報告しました」
「その件で帝様から何か連絡はあったのかしら」
「はい。別の忍びより連絡がありました。冒険者様を帝様の元へ連れてくるように言われました」
もみじちゃんは、怯えながらも、誠意ある態度で受け答えをしてくれた。
「ロキ、どうするよ」
「私は会いに行ってもいいと思うわ。帝様は平民の子供を簡単に殺すエードの町を、どう思っているか知りたいわ」
「確かにそうだな」
「私も賛成よ」
「私も会いに行った方がいいと思います」
私も倭の国の現状が知りたいと思っていた。
「お会いしてくださるのですね」
「ぜひ、案内してください」
ロキさんが丁寧に頭を下げる。
「良かったです。海の魔獣を簡単に倒す姿をみて正直ビビっていました」
緊張の糸が切れたのか、もみじちゃんはにこやかに笑った。
「一つ聞きたいのだが、帝のところへ行ったらお寿司は食べれるのか?」
トールさんが帝様に会いに行く理由・・・それはお寿司である。倭の国最高権力者である帝様のところへ行けば、お寿司があるのではないかと思っていた。
「そうよ。お寿司がないのなら帝様に会いに行く理由がありませんわ」
ポロンさんも同じであった。食べ物のことになると計算高くなるのである。
「帝様は倭の国のご馳走を用意すると言っていました」
「お寿司で間違いないな」
「絶対そうですわ」
トールさんとポロンさんは、握手をしてお互いの健闘を称えるように意気投合した。
「どこに帝はいるのだ」
「本来は京の都にいるのですが、剣術大会を観戦するために、エード城の別館に滞在しています」
「おっ!あの立派なお城にいてるのだな。それなら豪華なお寿司が出ること間違いなしだぜ」
「ワクワクが止まりませんわ」
「何を言ってるのよ。私たちは倭の国の現状を把握するために行くのよ。お寿司を食べに行くのではないのよ」
「はいはい」
「ほーーい」
2人にはロキさんの熱意は伝わらない。
しかし、倭の国の最強権力者の帝様は、私たちに何の用があるのだろうか?
私たちはもみじちゃんに案内されてエード城に向かった。
それにしてももみじちゃんのピンクの忍び装束は、とても派手なので目立つのである。なぜ隠密活動をするくノ一がこんな派手な格好をしているのか謎である。
私たちはもみじちゃんと一緒にエードの町へ戻ってきた。そして、もみじちゃんの案内されてエードの町中を歩いて行く。町の中では、もみじちゃんは有名人みたいで、すれちがう平民達に手を振って挨拶をしていた。くノ一が有名人なのは、くノ一失格ではないか?と私は思ったのである。
しかし、武家が住む区域にくると雰囲気は一転する。豪華な武家屋敷が立ち並ぶ武家地では、もみじちゃんを見る侍の目が殺気立っていた。
もみじちゃんがいるので、侍達は何も言ってこないが、あきらかに、私たちに対しても怒りをあらわにしている感じがする。
「なんだ、あいつら感じが悪いぜ」
「トール、静かにするのよ。揉め事は避けたいわ」
「ご安心ください。私がいますので皆様に手を出すことはありません。侍達がさっき立っているのは、ロキさん達が剣術大会に参加するからだと思います」
「えっ、私が参加することはもう知れわたっているのですか」
「はい。参加者は随時公表されています」
「それで私たちに対して怒りをあらわにしているのですね」
「はい。そうです。しかしそれだけではありません。詳しい事情は帝様からお伝えすると思います」
私たちは感じの悪い武家地を早足で駆け抜ける。
「すげー立派なお城だな」
立派な石垣の上に立派お城がドーーン構えている。
「よし、中へ入るぞ」
私たちはエード城の外堀に掛かっている橋を渡ろとした時・・・
「そちらではありません。こちらへどうぞ」
「えっ、そちらにはお城はありませんわ」
ポロンさんが驚いて言う。
ポロンさんが言う通り、もみじちゃんの進む方向にはエード城もないし武家屋敷もない。そこはには広い空き地に小さな家がポツンと建っていた。
「ここがエード城の別館の荒屋です」
もみじちゃんに案内されたのは、豪華なお城ではなくボロボロの小汚い家であった。
なぜ、こんなところに倭の国の帝様がいるのであろう・・・
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