第405話 ボルの人界征服編 パート18



 「ナレッジ、早く準備をしろ」


 「ボル様・・・こんな朝早くから『ホロスコープ星国』に向かうつもりですか?」



 ナレッジは、朝早くから叩き起こされて困惑している。ナレッジはもっと睡眠を取りたいのである。



 「興奮して眠れないのだ!」



 ボルは、遠足の前日の小学生のように、ワクワクしてあまり眠ることができなかった。



 「ボル様、睡眠はとても大事です。きちんと睡眠をとってから戦うことをお勧めします」



 ナレッジは自分がもっと寝たいだけであるが、もっともらしいことを言ってボルを説得する。



 「ふざけるな!俺は早く戦いたいのだ。俺の150年にも及ぶ下積み生活がやっと実を結ぶ時がきたのだ。おちおち寝ている暇などないのだ」



 ボルは150年前、アトラースが竜騎士を使って『オリュンポス国』を滅ぼす遊びをするの知っていて、人界へ降りて様子を伺っていた。人間が魔獣に蹂躙されて逃げる様を見て腹を抱えて笑っていたのである。しかし、急に現れた魔王によって、魔獣王の軍勢が一瞬で『ブラックホール』に飲まれて姿を消すのを目の当たりにして、逃げるように表天界に戻ったのである。そして、魔王の強さに驚愕して打ち震えていた。しかし、そんな怯えていたボルに、ボルに力を与えてたウーラノスから弟子にしてやるぞと言われて、裏天界へ行くことを決めたのである。


 期待を胸膨らましてウーラノスの弟子になったボルはすぐに、弟子になったことすぐに後悔するのである。ボルはウーラノスの弟子になると、ウーラノスから様々な特訓を受けて魔王に勝てる力を手にすることができると思っていた。しかし、実際は130年以上もウーラノスの神殿の掃除、洗濯や合コンでの余興や、神人の女性を紹介するなどの雑用の日々であった。やっと魔法を教えてもらえるようになったのは20年前である。



 「俺はウーラノス様の下僕として150年支えたのだ。あの地獄のような日々を乗り越えて今の俺があるのだ。俺はウーラノス様から教えてもらった『ホワイトホール』で、3世界を征服して薔薇色の人生を取り戻すのだ」


 「・・・」



 ナレッジにとってはボルの下積み生活など興味ないのである。



 「今すぐ転移するぞ」


 「わかりました。しかし、転移する場所はすぐにバレると思います」


 「どうしてだ」


 「転移魔法は、転移する場所に魔力層を構築することによって、遠く離れた場所でも転移することができるのです。なので、魔力層の場所を特定されれば、どこに転移するかわかるのです」


 「構わん。魔王の子供でも所詮は子供だ。150年も下積み生活をした俺が負けるはずがない。ハンデとして、俺たちが転移する場所くらい教えてやるわ」


 「わかりました。それではボル様どのあたりに転移しましょう」


 「そうだな・・・思いっきり暴れたいから王都シリウスから1km離れた草原などが良いだろう」


 「わかりました。すぐに転移します」



 ナレッジは『時空の番人』の能力を使って、ボルを転移させて、後を追うようにナレッジも転移したのであった。




 『ミラクルパンーーーチ』



 小ルシス2号は私が予測したボルが転移する場所に待ち構えていた。そして、ボルが予測していた場所に転移してきた瞬間に『ミラクルパンチ』をはなった。


 小ルシス2号のパンチはボルの顔面にヒットしたが、ボルは微動だにせずにピクリとも動かない。



 「蚊でも飛んできたのか?」



 ボルは蚊を叩くような素振りで、小ルシス2号を弾き飛ばした。



 「あ〜れ〜」



 小ルシス2号はクルクルと回転しながら私の方へ飛んできた。



 「何をしているのよ」


 「ルシスお姉様、申し訳ありません。私の『ミラクルパンチ』が通用しませんでした」




 小ルシス2号は肩を落としてガックリとしている。よほど『ミラクルパンチ』に自信があったのであろう。



 「お前が魔王の子供なのか???」



 神々しい光り輝く白い髪をなびかせた長身の色白の男が、観察するように目を上下に動かせながら私を睨みつける。



 「私は冒険者です!」


 「冒険者だと・・・俺はオーシャンとムーンを倒した魔王の子供を探しいるのだ。すぐに魔王の子供を連れてこい」



 頭が割れるくらいの大きな声でボルは怒鳴りつける。




 「ルシスお姉様がクソ雑魚の相手をする必要はありません。次こそ私があいつに引導を渡します」


 「2号ちゃん!余計なことはしないで」



 小ルシス2号は私の静止を振り切ってボルの突撃した。



 「うるさい蠅め!握り潰してやるわ」



 ボルの右腕が巨人のような大きなる。そして、ボルは小ルシス2号を大きな手で包み込んで激しく握りつぶす。


 しかし、ボルが右腕があまりに巨大化しために、小ルシス2号は指の隙間をくぐり抜けて、いとも簡単に抜け出してしまった。



 「あなたバカのですか!クックックックック・・・」



 小ルシス2号はほくそ笑む。



 「やかましいわ!」



 ボルは大きな右手を振りかざして、ハエを叩き落とすように小ルシス2号をはたきつける。



 「あ〜れ〜」



 小ルシス号は地面に叩きつけられて地中の奥深くまで沈み込む。



 「2号ちゃん・・・何をしているのよ」


 「申し訳ありません。クソ雑魚のペースに乗ってしまいました」



 私はすぐに魔力を注ぎ、小ルシス2号を復活させて私の元へ転移させた。


 

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