第414話 スカンディナビア帝国編 パート2
「そうです。これはトールさんの手配書です。先ほどスカンディナビア帝国の使者の者が訪れて、トールさんを捕らえてほしいと冒険者ギルドへ依頼を出したのです」
「トールさんは確かスカンディナビア帝国の出身だと聞いています。トールさんは、祖国で何か罪を犯したのですか?」
ネテア王は、少し取り乱していて焦りを隠せない。
「手配書の内容だと詳しい事情はわかりません。しかし、妹であるギルマスのフレイがスカンディナビア帝国の使者から詳しい事情を確認中だと連絡がありましたので、そのうちわかると思います」
フレイヤも想定外の事態に困惑して落ち着かない。髪を触りながら気持ちを落ち着かせようとしている。
「どんな事情にしてもトールさんを捕らえることはできないわ。ラスパの皆さんは、この国を守ってくれた命の恩人です」
「ネテア王、それは私も同じ気持ちです。しかし、トールさんの引き渡しを拒めば最悪の事態が起こることを想定してください」
ネテア王もフレイヤもトールさんを引き渡すつもりなどない。しかし、引き渡しを拒めば最悪戦争に発展する恐れがある。
「フレイヤ!詳しい事情がわかったわよ」
王の間にギルマスであるフレイが駆けつけてきた。
「トールさんは何をしたのですか?」
「結論から言うわ。トールさんは何もしていないのよ。でも、スカンディナビア帝国でクーデターが起こったのよ。クーデターにより前政権の王族たちはみんな捕らえらたの。そして、その王族であるトールさんを捕らえに来たらしいのよ」
「トールさんはスカンディナビア帝国の王女だったのね」
「そうみたいよ」
「それで、トールさんは捕らえられたらどうなってしまうの?」
「使者の話しでは、王族の血縁者は処刑されると言っていたわ」
「そんな・・・」
「なのでネテア王、お願いします。トールさんを助けてください」
フレイは頭を下げてお願いする。
「私からもお願いします」
フレイヤも頭を下げる。
「2人とも頭を上げなさい。私がこの国を救ってくれた恩人を殺させると思っているのですか?仮にも私は全人種が共存できる世界を目指しています。よその国のことまで口出しはしませんが、この国に住んでいるものを安全は私が保証します」
ネテア王は毅然として振る舞いでフレイヤたちに声をかけた。
「ありがとうございます」
「フレイヤ、すぐにトールさんにこのことを知らせください。そして、私たちが絶対に守ってあげると伝えてください」
「わかりました」
「フレイ、あなたは金玉と雲鎮に連絡して使者の動向を探るように依頼をしてください」
「わかりました」
⭐️場面は変わってスカンディナビア帝国の首都にあるスカンディナビア城になります。
スカンディナビア城内は多くの血が流れ、壁一面が赤く染まっていた。この城を守っていた兵士たちは、突然のクーデターに、何が起きたのかわからないまま死を迎えたのである。もちろん、アーサソール王も同じである。信頼していた者に裏切られて、王はその場で首を刎ねられて、残りのアーサーソール家の者は皆地下に幽閉された。
「あとはトールだけだな」
「はい。アーサソール一族の時代もこれで終わりです」
「分家として屈辱を受けた時代もこれで終わるのだ。これからはヴァナヘイム一族がスカンディナビア帝国を支配するのだ」
クーデターを起こしたのは王族の血縁から追い出されて分家となって、王族の世話係をさせられていたヴァナヘイム家である。ヴァナヘイム家は王族の血縁であったが、アーサソール家から王族の地位を剥奪されて、召使いとしてアーサソール家に使えるように命じられたのである。
アーサソール家とヴァナヘイム家は、神人のベストラが人界に降りて、人間との男性と結婚してできた子供の末裔である。この人間の男性こそスカンディナビア帝国の王でありアーサソール家である。そして、2人の間に生まれた長男はそのままスカンディナビア帝国の王位を引き継いだが、長女として生まれた子供は成人してヴァナヘイム家に嫁いだのである。
これによりベストラの血を引き継ぐ家系が二つ誕生したのである。もと神人であるベストラの血を注ぐ男性の子供は特殊な力を持つ者が生まれてくるので、アーサソール家とヴァナヘイム家は『神の血縁』と呼ばれた。
アーサソール家は、ヴァナヘイム家が謀反を起こす事を恐れて、王族の地位を剥奪して、召使いとして王宮に閉じ込めるとことにした。そして、もし男性の子供が生まれた時は、特殊能力を恐れてその場で処刑されるのである。
「ロキお嬢様はどうなされますか?」
「ロキは、トールの見張りをさせているはずだ。クーデターが成功した事を知れば、ロキがトールを捕まえて戻ってくるはずだ」
ヴァリ・ヴァナヘイムは、アーサソール家に仕えたいた元執事である。アーサソール家のメイドとして働かされていたロキさんの母親であるラウフェイ・ヴァナヘイムの美しさに惚れて、アーサソール家の許しを得て結婚しヴァナヘイムの家督を継いだのである。
ヴァリはアーサソール家に虐げられていたヴァナヘイム家を長年見てきたので、妻達の尊厳を取り戻すために、いつかクーデターを起こして、ヴァナヘイム家を王族に戻すと決めていたのである。
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