第415話 スカンディナビア帝国編 パートパート3
⭐️数日後・・・
今日はメロンパン屋『ソンナ』のオープンの日である。私は5体のゴーレムを作って店員として働かせることにした。一体一体に個性を出すのが面倒だった私は、五つ子という設定にして、5人を全て同じ姿にした。メロンパンをイメージとしたライトグリーンの明るい髪を左右に大きな縦ドリルヘアーにしたので、かなりのインパクがある。瞳は大きく黄水晶のように黄色く輝いている。身長は威圧感よりも可愛さを優先して150cmほどにした。そして、名前は、チョコ、チップ、メロ、パン、ロメと名付けた。
チョコ、チップ、メロがホールの担当をして、パンとロメが厨房の担当をすることになった。
「ルシス店長!試食をお願いします」
厨房担当のパンが真剣な眼差しで私にメロンパンを差し出す。
「いただきまーーーす」
私がメロンパンを掴もうとした時、トールさんが私のメロンパンを奪って食べてしまった。
「このサクサクのクッキーの生地は何度食べても飽きがこないぜ。中から溢れ出る濃厚の甘いクーリムがふんわりパン生地に吸い込まれて、パンの美味しさをグンっとレベルアップさせている。パン、腕を上げたな!」
トールさんはパンが作ったメロンパンを大絶賛する。
「この底なし胃袋おばけ!そのメロンパンはルシスお姉様のです!!!」
小ルシス2号はトールさんの頭を殴りながら説教をする。
「うるせぇーー」
トールさんは小ルシス2号を手で払って追い払う」
「あーれーー」
小ルシス2号は、はじかれて回転しながら店の端まで飛んでいく。
「ルシス店長、チョコチップメロンパンの試食もお願いします」
ロメが私に焼きたてのチョコチップメロンパンを差し出す。
私がチョコチップメロンパンに手を差し出した瞬間に、カモメが急降下して食べ物を奪うように、ポロンさんが私のチョコチップメロンパンを奪い去った。
「メロンパンというパンの器の中に、チョコという財宝が隠されているこのチョコチップメロンパンは、パンの宝箱と言えますわ。こんな素晴らしい宝箱を作り上げるなんて、ロメさんはもう一人前のパン職人と言えるわ」
「この突撃!隣の晩ごはん野郎、それはルシスお姉様のチョコチップメロンパンです。強引な手口でパンを奪うとは盗人猛々しいです」
小ルシス2号は店の壁をジャンプ台のように蹴り上げて、ロケットのように発射して、ポロンさんにヘッドバットをする。
しかし、ポロンさんはさっと頭を下げて、小ルシス2号のヘッドバット交わした。目標物を失った小ルシス2号は反対の店の壁に頭が突き刺さるのである。
「ルシスお姉様・・・頭が抜けません。助けてください」
私は急いでお店の壁に走っていき、壁に突き刺さった小ルシス2号を引っ張り出した。
「不甲斐ない姿をさらけ出してしまって申し訳ありません」
「2号ちゃん。気にしなくてもいいのよ」
「寛大なお言葉ありがとうございます。しかし、ルシスお姉様のパンを守れなくて私はとても悔しいいです」
小ルシス2号は唇を噛み締めながら言った。
「2号ちゃんの気持ちは嬉しいです。でも、食事の時のトールお姉ちゃん達の行動は、ラスパのお決まりの展開なのです。なので、気にしなくてもいいのです」
「トール、ポロン!勝手にルシスちゃんのパンを食べたらダメでしょう」
ロキさんのゲンコツがトールさん達の頭に舞い降りる。
「いい気味です」
小ルシス2号は嬉しそうに笑顔で呟いた。
「2号ちゃん、これがラスパの食事スタイルなのです。みんな楽しく食事をしているので問題ないのです」
私はロキさん達のやりとりを見て微笑ましく感じていた。そして、ロキさん達と出会えて本当によかったと思った。こんな賑やかに過ごせるのはみんなのおかげである。このままずっとみんなで冒険できたら、楽しく過ごせるのだろうと考えていた。
「ロキお姉ちゃん。まだ試食のメロンパンはたくさんあるので、みんなで食べましょう」
「本当か!まだまだ俺のお腹は満たされていないぜ」
「私もよ。こんな美味しいパンならいくらでも食べることができますわ」
「私も遠慮なくいただきますわ」
私はパンとロメに頼んで試食用のパンを全て焼いて持ってくるように頼んだ。今日はオープン記念日なので、まずはラスパのみんなに私のメロンパンを心ゆくまで食べてもらう予定だったのである。
「ルシスちゃんの考案する食べ物には、いつも度肝を抜かれますわ」
ロキさんが、パンを頬張りながら笑顔で言う。
「本当だぜ、ルシスが仲間に加入してから、俺の胃袋は5倍に膨れ上がったぜ」
「何を言っているのよ!あなたは昔から底なしに食べていたでしょ」
「そうだったか?昔のことは忘れてしまったぜ」
そういえば、ロキさん達はいつから冒険者になったのだろう?それになぜ?自分の国でなくよその国の冒険者として旅をしているのだろう?と私は疑問に思ったが、聞かないことにした。私も魔界を追放されたことはみんなに黙っているので、余計な詮索はしないと決めていたからである。
『バタン』
お店の扉が大きな音をたてて開いた。そして、扉の中からは顔面蒼白のディーバ様がいた。
「ディーバ様、オープンはお昼の予定ですよ」
ロキさんが、ディーバ様に声をかける。
「ロキさん・・・トールさん・・・」
ディーバ様は、体を震わせてかなり落ち着きのない様子である。いつも冷静なディーバ様からは想像ができないくらいに取り乱している感じに見えた。
「ディーバ、私が説明するわ」
ディーバ様の後ろから王国騎士団の団長であるフレイヤさんが姿を見せた。
「トールさん、落ち着いて聞くのよ。スカンディナビア帝国でクーデターが起きたのよ。貴方の父であるアーサソール王はその場で殺されて、アーサソール家の者は全員拘束されてしまったわ。そして、貴方にも手配書がきて、スカンディナビア帝国に引き渡すように言い渡されたのよ・・・」
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