第271話 ホロスコープ星国 パート48
「もう、いいだろう・・・」
レオが重い口を開いた。レオにとって、ノスフェラーの話など、どうでもいいのであった。
「そうだ。そうだ」
キャンサー達も声を揃えて言った。誰もノスフェラーの話など興味がないのであった。
「私は少し気になるわ」
ヴァルゴだけ、少し興味を持っているみたいである。
『スヤスヤ・スヤスヤ』
最初に話をふった当事者の私は、まだ夢の中であった。
「要望が多数と判断して、私の両親の話をするわ。ヴァンパイヤ族は人間と違って、寿命が長いのよ。なので、まだまだ現役の冒険者として、活躍していた私の両親は、1ヶ月前にライブラの率いる青騎士団の魔獣の討伐の遠征に参加したのよ。しかし、その時にライブラ達は、調子に乗って、ドラキュラ城があった王の森へ行ってしまったのよ。両親は一族の仇であるラードーンの住む王の森に行くことを酷く拒んだはずよ。しかし、ラードーンの恐ろしさを知らないライブラ達は、自分たちの腕で試しの為に、王の森へ入って魔獣を討伐したのよ。王の森の魔獣を殺されたラードーンは、仲間の復讐の為にすぐに、王の森の奥から出てきたのよ」
「まだ、続くのかしら」
ヴァルゴは、少し後悔していた。
「ラードーンの強さは圧倒的だったわ。ラードーンに怯えて、ライブラ達は、すぐに逃げ出したわ。しかし、私の両親と一緒に魔獣討伐に参加していた冒険者達は、青騎士団を守る為に、必死に戦って、そして、命を落としてしまったのよ。私は、両親達を見捨てて逃げたライブラ達を絶対に許さないわ」
ノスフェラーは、全てを話して、満足そうにソファーに横になったのであった。
『スヤスヤ』
そして、ノスフェラーは気持ちよさそうに眠りについたのであった。
ノスフェラーが寝たのと同時に、私が眠りから覚めたのであった。
「長い話は終わったのですか?」
嬉しそうに私が言った。
「やっと終わりました」
くたびれた様子でレオが言った。
「良かったです。これで、ヴァルゴを救出することができますね」
私は、安堵の笑みを浮かべて言った。
「フェニちゃん、そのヴァルゴは、あなたの目の前にいてます」
レオは、静かに言った。
「エーーーーー、いつの間に現れたのですか?いるならちゃんと言ってくだい!!」
私は、ヴァルゴに八つ当たりをしたのであった。
「ごめんなさい・・・ってなんで私が謝らないといけないのですか?ここは私の屋敷ですわ。あなたこそ無断で、私の屋敷に入ったことを謝罪しなさい!」
ヴァルゴの意見はもっともである。
「ライちゃん、ヴァルゴが私をいじめるのですぅ〜」
私はレオに助けを求めた。
「俺たちは、アケルナルの町の副管理官のノスフェラーの許可をもらって、この屋敷に入ったのだ。罪人として扱われているお前に、許可を取る必要はない」
レオは完全武装の理論で、ヴァルゴに言い放った。
「確かに・・・それはレオの言う通りだわ」
ヴァルゴも言い返すことはできない。
「私は悪くないもん」
私は満足げにヴァルゴに言い放った。
「もういいわ。それよりもあなた達は、私を救出しに来たの?私は今の暮らしに満足しているわよ」
ヴァルゴは、何不自由のない生活をおくっている。
「俺の話を聞け!」
レオは、なぜヴァルゴを救出しにきたのかを説明した。
「面白いことするのね。でも、私は今の生活を壊すつもりはないわ。もし、どうしても協力して欲しいのなら、私を王にするのよ」
ヴァルゴは、魅惑的な瞳で、みんなを見つめながら言った。
「わかりました」
ワラキアが即答した。
「ふざけるな!ヴァルゴに王になる資格など、何一つないぞ」
レオは大声であげて怒鳴りつけた。
「私は、ヴァルゴ様が王に相応しと思います」
ワラキアが、ヴァルゴのそばに跪いて言う。ワラキアはヴァルゴの『魅惑』に魅了されたみたいであった。
「あなたちはどうなの?」
ヴァルゴは魅惑的な瞳で、キャンサー達を見つめる。
「レオ言う通り、お前には王の資格はない」
キャンサーは揺るぎない眼で言い放つ。
「そうだ。そうだ」
サジタリウス、ピスケスも同様である。
「なぜ、あなた達は私の『魅惑』が通じないの・・・」
ヴァルゴは激しく動揺する。
「お前の『魅惑』の能力は、己の心の憶測にある感情を引き出して、操る能力だ。ワラキアは、お前の美貌に心を奪われたから、お前の言いなりになったが、俺たちは違う。俺たち、お前に全く魅力を感じない」
レオは、力強く言い放った。
「なぜなの・・・」
ヴァルゴは、自分の美貌に心を奪われない者などいないと思っていた。
「簡単なことさ・・・俺たちはフェニ王を敬愛しているからだ。だから、フェニ王以外の者に心を奪われることなどないのだ」
レオは、胸を張って高らかに言い放った。
「そうだ。そうだ」
キャンサー達は声を揃えて言った。
「そんな・・・そんな小娘のどこがいいのよ」
ヴァルゴは困惑する。
「なら、小娘を『魅惑』するわ」
ヴァルゴは、私のそばに立ち、魅惑的な笑顔で、私をナデナデする。
「気持ち悪いですぅ〜」
私は、ヴァルゴの手を払いのける。
「なぜ、私の『魅惑』聞かないの・・・いくら幼い子供でも、私の美貌を見れば、うっとりとするはずよ」
ヴァルゴは、自分の容姿に絶対の自信がある。
「あなたになんて全く興味がないですぅ〜。私が好きなのはベガちゃんだけですぅ〜」
私は、無邪気な笑顔で言った。
「ベガちゃん・・・その人はどんなに美しいの?」
ヴァルゴは、私の体を揺さぶって訪ねる。ヴァルゴは、自分より美しい者は認めたくないのであった。
「ベガちゃんはとても可愛いですぅ〜」
私は、部屋の窓から、庭で心地よく寝ているベガちゃんを指さした。
ヴァルゴは、すぐに窓の所へ来て、ベガちゃんの姿を確認した。
「あんな不細工な馬に私は負けたのね・・・」
ヴァルゴはショックのあまり、その場に倒れ込んだのであった。
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