第203話 神守聖王国オリュンポス パート12


 

 アレスの体は再生して元に戻り、三層の門に入りユーピテルと対峙した。



 「まだ、俺の力は7割しか回復していない。しかし、お前の相手なら7割でも十分だろう」



 ユーピテルが自信ありげに言う。



 「俺をみくびらないでください」


 『勇敢なる鼓舞』



 アレスは三層にいるゾンビ達を自分の支配下に置くことにした。『勇敢なる鼓舞』によって三層のゾンビ達がユーピテルを襲う。



 『絶対零度』



 ユーピテルは神の子の力を発動した。ユーピテルの神の子の力は自然を操る能力である。ユーピテルは神の子の力を使って地下三層を極寒の大地に変えた。



 「神技『防備』『倍倍』『倍倍』」



 アレスは『絶対零度』に対抗して神技を発動した


 ユーピテルの『絶対零度』によって、三層のゾンビ達は全て凍りついて動かなくなった。アレスは神技を使用したので凍りつくことはなかった。



 『アースクェイク』



 ユーピテルは神の子の力を発動した。『アースクェイク』は地面の下にある断層を動かす力である。断層を動かすことによって、大きな揺れを起こしたり、地面に亀裂を作ることができるのである。


 『アースクェイク』の力によって、地下三層に大きな亀裂が出来てゾンビ達を飲み込んだ。


 アレスは飛び上がって亀裂に落ちないように逃げた。



 「邪魔なゾンビ達はこれでいなくなったな」


 「そうみたいですね」


 「次はお前の番だな」


 「俺は雑魚のゾンビのようにはいかないですよ」


 『黒風白雨』



 ユーピテルが神の子の力を使った。



 凄まじい風と槍のような雨がアレスを襲う。


 アレスは両手をクロスして雨風を耐え凌ぐ。


 しかし、凄まじい雨風にアレスは耐えきれなくなって吹き飛ばされる。


 アレスは地面に強打して倒れ込む。



 「これで終わりだ」



 『アースクェイク』



 アレスの倒れた地面に亀裂が入る。



 「アレス、危ない!」



 ジュノが飛び出してアレスを抱えて逃げる。


 しかし、凶戦士モードのアレスは3mもあるゴリラのような化け物だ。ジュノの力では、素早く動くのは難しかった。



 地面の亀裂がどんどん大きくなる。



 「ウオオオオオーーーー」



 ジュノは神技を使って筋力を上げてアレスをお姫様抱っこして全速力で亀裂から逃げ出す。



 「ジュノ、頑張るのよ」



 マーニがエールを送る。



 「マーニ、『ゼログラビティー』でアレスを助けないの?」



 ソールがマーニに問いかける。



 「愛のための戦いに無粋なマネはしたくないよ」



 マーニは真剣に答えた。



 「・・・」



 ソールは何も言い返せなかった。



 「まだ生きていたのか」



 ソールの背後に1人の男性が立っていた。


 ソールは、声のするの方に視線を向けた。



 「ハデス、なぜここにいるの?」



 ソールの後ろに立っていたのは神光教団の教祖であるハデスであった。



 「お前達の動向はずっと監視されていたのだ。お前達を誘き寄せるために、あえてアトランティスの地下遺跡の監視にスキを作って、地下遺跡に侵入させたのだ。頭のいいお前達のことだから、ギルドの依頼通りに夜に探索すると思っていなかったからな」


 「私たちをハメたのね」


 「そうだ。邪魔なお前達を始末するついでに、ユーピテル様の餌にしようと思ったのだ。しかし、アレスが裏切るのは誤算だったがな」


 「それで、あなたはここに何しに来たのかしら」


 「お前達が死んでいるのを確認するように、ネプチューン侯爵様に命令されたのだ。しかし、まだ生きているとは驚きだったぜ」


 「私たちは簡単にはやられないわよ」


 「そうみたいだな。しかし、いくらアレスが仲間になったからといっても、ユーピテル様に勝つのは不可能だ。ユーピテル様は、まだ7割の力しか回復していないが、それでも人類最強なのは揺るぎないからな」


 「私たちの心配よりも、自分の心配をしたら?あなたこそ、ここから生きて帰れると思っているのかしら?」


 「俺は確認しに来ただけだ!だから戦う意思はないぜ。あくまで戦うのはユーピテル様だからな」



 そう言うと、急いでハデスは逃げ出したのであった。



 『ゼログラビティー』



 マーニはハデスを逃さない。ハデスは宙を走るように足をバタつかせている。


 

 『爆炎黒陽斬』



 ソールはハデスに向かって燃え盛る炎を放つ。



 「グギャーーーー」



 ハデスは炎に包まれて燃え上がる。



 「偽物ね」



 マーニがつぶやいた。


 燃え盛るハデスの後ろからもう1人のハデスが現れる。



 「よく見破ったな」



 ソールは剣を振りかざして、ハデスの頭を切り落とした。ハデスの頭が地面に転がる。



 「まだ喋っている途中だぞ。人の話は最後まで聞くものだぞ」


 「ゾンビの話を聞くほど暇じゃないのよ」


 「そんなに焦らなくても良いではないか。まだ夜までは少し時間があるぜ。俺の力を最大限に発揮できる夜まで、ゆっくりと遊ぼうではないか」



 ソールは剣に魔力を込めて、剣を燃え上がらせてハデスを焼き払った。


 しかし、またハデスが現れたのであった。



 「キリがないわね。二層に戻ってハデスの本体を探しましょう」



 ソールがマーニに言った。



 「・・・」



 「マーニ、行くわよ」


 「アレスとジュノの恋の行方が気になるわ」



 マーニが答える。



 「マーニ、今はハデスを倒すのが先決よ」


 「そんな・・・」



 マーニは渋々二層に戻ったのであった。



 

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