第42話 ブラカリの町パート6
⭐️シスター視点です。
「あの子は何者なの。いくら信仰度が高いと言ってもあの黒さは異常だわ」
もしかしたら、石が壊れているのかもしれないと思った私は、急いで教会の2階にある司教様の部屋にむかった。
「バトルクライ司教様。大変です」
バトルクライ司教は、この教会で2番目に地位の高い人物である。バトルクライは白い長い髭のいかにも人の良さそうな年配の男性だ。
「騒がしいにゃ。なにがあったにゃ」
「失礼しましたブランシュ司祭様。急用がありまして」
ブランシュ司祭とは、白い美しい毛並みの小柄な猫の獣人の女性である。
「まあ、よいではないか。それより何かあったのか?」
バトルクライ司教が声をかける。
「先程、入信希望の女の子が来ました。いつもの通りに、白い石で信仰度を確認したところ、石が、真っ黒に染まりました」
「ほほう、いきなり真っ黒とは珍しいな。でも悪いことではないだろう」
「いえ、それが・・・一切濁りの無い美しいほどの真っ黒です。私は、あのようの石は見たことはありません」
「まじにゃのか」
「間違いありません。ぜひ、確認していただきたいと思いここに来ました」
「確かに、それは気になる。今から確認にいくことにしよう。ブランシュもついてきなさい」
「当然にゃ」
「シスター、私たちが確認している間は、その部屋には、誰も近づけないようにしてください」
「わかりました」
⭐️ルシス視点に戻ります
シスターが、部屋から出て行ってしばらくすると、長い白いヒゲのポッチャリした年配の男性と、白い毛並みの、小柄の可愛い猫の獣人が入ってきた。
私は、新たなモフモフを発見してしまい、かなり興奮してしまっている。あの獣人に向かって、ダイブしたい・・・
と思っていると、猫の獣人の方から私に抱きついてきた。
「何この子、メチャクチャかわいいにゃ」
「ブランシュ、何をしている。お嬢さんが困っているだろう」
「いえいえ、ご褒美です」
私は笑顔で即答した。すると、白ヒゲさんは少し驚いた顔で私を見ている。
「そうなのか・・それなら良いが。私は、バトルクライといいます。その猫の獣人は、ブランシュです。少し自由奔放な子ですが司祭の立場にあります」
「ブランシュさんは、偉い方なんですね」
「いやいや、そんなことないにゃ。そのヒゲのじぃーじのが偉いにゃ。じぃーじは司教様にゃ」
とブランシュさん言っているが、私から離れると、次はじぃーじの白い長い髭を引っ張って嬉しそうな顔をしている。その姿は、決して偉い人にたいする態度には見えない。
「こら、やめんか。お見苦しいところを見せてすません。ところで、君が入信希望の子でいいのかな?」
「はい。そうです」
「悪いが、少し石を確認させてもらっていいかな?」
「はい。どうぞ」
私は石を手渡した。さっきまで、黒かった石が光り出した。
「あれ、さっきまで光ってなかったのに・・・」
「ああ、それは、わしも石を持っているからだよ。この石には、信仰度を示す機能以外に、石を持っている者が、近くにいると、光る機能も持ち合わせておる。それにより、お互いに信者であることがわかるのだよ」
「仲間同士の、秘密のサインみたいな感じですね」
「そうだね。しかし、本当に濁りの無い真っ黒に染まった石だ」
「私にも、見せるにゃ。・・・・こいつは、すごいにゃ。伯爵様の石以上に黒いにゃ」
「これ、余計なこと言うな」
「ごめんにゃーー」
この子は、もしかしたら、あのお方の関係者かもしれない。見た目も、よく似ておられる・・・とバトルクライ司教は思った。
「お嬢さんは、どこからきたのかな」
「遠いところです」
「遠いところとは、どこの国なのかな」
「あんまり覚えていないです。少し前に、気付いたら森の中にいたので・・・」
「そうなのか・・・いろいろ事情があるみたいだね」
石が黒く染まり過ぎたので、もしかしたら、なにか、疑われているかもしれない。とりあえず、適当に誤魔化すことにした。
「はい。それよりも、魔王様の像が見たいです」
「よし、わかった。ブランシュに案内させよう」
じぃーじは、ブランシュ司祭に何か耳打ちをしているみたいだ、私には聞かれたらまずい話しでもしているのであろう。
「わしは、プルート様に報告することがある。お前に、この子の案内を任せるが失礼のないようにな。もしかしたら・・・・・」
「私に任せるにゃー」
「これ、声が大きい」
「ごめんにゃ・・」
「私が、案内するにゃー。ついてくるにゃん」
「はーい」
私は、ブランシュさんに手を引かれて、部屋を出て行った。
「ここが、この教会の礼拝堂になるにゃ。奥に見えるのが、魔王様の銅像になるにゃ。近くで見ても良いが触るのは禁止にゃ」
私は、返事もせずに魔王様の像に向かって走って行った。
魔王様の像は、2Mくらいの大きさで黒い鉱石で作られていて、髪は長くとても美しい顔をしている。
頭には、鋭い二本のツノが生えていて、背中からは大きな翼が広がっている。
私は、お父様を見たことはない。しかし、この像は間違いなくお父様だと直感的にわかった。私は、魔王様の像のもとへいき跪いた。溢れ出る感情を抑えきれず、私は、そこで泣き崩れるのであった。それは、お父様に会えたことの喜びであった。
「どうしたにゃ」
ブランシュは駆け寄る。
「いえ、なんでもありません。魔王様の像を見てつい嬉しくて・・」
「そうなのにゃ」
そういうと、ブランシュは私をそっと抱きしめてくれた。
「この子は、魔王様の像によく似ているにゃ・・・しかし、いらぬ詮索はよしておくにゃ。この子についてはじぃーじに任せるにゃ」
とブランシュは心の中でつぶやいた。
私は、しばらく魔王様の像のそばで、これまでのことをお父様に報告した。心なしかお父様から「よく頑張ったな」と褒められた気がした。
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