第41話 ブラカリの町パート5
私は、冒険者ギルドの受付に来た。受付嬢は、イザベラさんから連絡を受けていたので、私はしばらく待つように言われた。
しばらくすると、背の高い、茶色の長い髪の美しいエルフが現れた。
「お久しぶりね」
「どこかで、お会いしたことがありましたでしょうか」
「あなたが幼い頃にね。全然変わってないから一目みてわかったわ」
私には、全く身に覚えがない。この人は私をからかっているのだろうか。
「大きな声では、言えないけど私も王族の関係者よ」
「そうなのですか」
「そうよ。精霊神を探しに旅に出たけど、精霊神の試練を乗り越えられなくて、挫折した時にこの町のことを知ったのよ。そして、この町の考えに共感して、この町の役に立ちたいと思って、この町に住むことにしたのよ」
「えっ。精霊神の居場所を知っているのですか」
「ええ、私が知っているのは、ドワーフの国にいる火の精霊神サラマンダー様よ」
「ドワーフの国ですか」
「そうよ。ドワーフの国のイディ山がサラマンダー様の住処よ」
「そうなんですね」
「それよりも、私に何か用があるみたいだけど何かしら?」
「いえ、もう大丈夫です」
「えっ」
「知りたいことは、わかりましたのでありがとうございます」
「あ・・・そうなんだね・・・・お役に立てて良かったわ」
私は精霊神の居場所がわかったので、今日の晩にでも、みんなに私の過去の過ちを打ち明けて、旅の目的を話すことにした。
⭐️ルシス視点になります
私は教会にたどりついた。とても立派な教会である。教会の入り口に1人の女性が座っている。たぶん受付係であろう。
私は、女性に声をかけた。
「魔王様の話しが、聞きたくて教会に来ました。どこへいったらいいのですか」
「観光の方ですね。観光でしたら、この中に入って、左への扉をお開けください。そちらに係りの者がいてます」
私は、言われた通りに左の扉に入った。扉を入ると会議室みたいな感じの部屋に、シスターらしき女性が居て私に気づいて声をかけてきた。
「観光の方ですね。ここでは、聖魔教会の教えを説明するお部屋になっています」
「はい。わかりました」
部屋には、私以外にも10人くらいの人がいた。
「それでは、時間になりましたので、聖魔教会の成り立ちと、その後の発展の話しをさせていただきます」
そういうと、シスターは、部屋に飾っている数枚の絵を元に、魔王様がブラカリの町を救い、そして魔獣王を倒したこと。その後、神守教会の迫害を受けながらも、町を再興させて、今ではこの国1番の魔石技術を持つ町になった歴史を紹介してくれた。
時間にして30分くらいであった。この町の歴史、そして、魔王様の活躍の話しは大変楽しく聞くことができた。
「それでは、これで、説明は終わりになります。何か質問はありますか」
若い男性が手を上げて質問した。
「なぜ、魔王は人間を助けたのですか」
「その質問自体間違っています。魔王様は、人間を助けたのではありせん。魔王様は、自分の名を語る魔獣王の軍勢に襲われている者を、助けに来たのであります。たまたま、助けた相手が人間であって、もし、襲われていたのが亜人であれば亜人を助け、獣人なら獣人を助けたのであります。神守教会のような、神が人間を助けたから、人間は偉いという偏った考えとは全然違います」
「神守教会では、神の力を授かった王子が、魔王を倒したと言っていますが嘘なのですか?」
若い女性が質問している。
「神守教会の教えでは、そうなっていますが、王子が魔王を倒した姿を見た者はいません。ただ、魔王様が、魔獣王を倒した姿も誰も見ていません。どちらを信じるかは、あなたが判断してください」
「それなら、聖魔教会が嘘を言っている可能性もあるのですね」
「それを判断するのは、あなた自身です」
そのあとに、何問か質問があってこの説明会は終わった。
「これで、説明会は終わります。もし、入信希望の方がいれば、このまま残っていてください。入信すると、この先の教会の広間に入れます。そこには、魔王様の銅像がありその偉大なる姿を拝見することができます」
観光に来ている人ばかりなので、流石に入信希望の人は見当たらない。私は魔王像があると聞いて、これは、入信しなければいけないと思って残ることにした。
「可愛いお嬢さん、入信したいのかしら?」
「はい。魔王様の銅像を拝見したいです」
「そうなのね。それでは、今から、入信の儀式をおこないます。儀式と言っても難しいことじゃないから安心してね」
そういうと、シスターは一旦、部屋から出て行った。しばらくすると部屋に戻ってきた。戻ってきた、シスターは何か小さな箱を持っていた。
「少し待たせて、ごめんね」
そういうと、シスターは、小さな箱から、白い小さな石を取り出した。
「この石は特殊な魔法で加工されて魔石具です。この石を持つと、魔王様へ信仰度がわかるようになっています。信仰度が高いほど、黒く染まっていきます。真っ黒に近いほど、信仰が深いということです」
「そうなんですね。嘘を言って入信できないようにしているのですね」
「そうです。偽って、入信して悪さをする者もいています。聖魔教会をよく思っていない人がたくさんいてますからね」
「私は大丈夫です」
「最初に、一つ言っておくことがあります。初めは、信仰度は低くて当然です。その石が、全く変化なければ入信はできません。しかし、何度でも、入信の儀式は参加できますので、諦めずに再度チャレンジしてください」
「はい。わかりました」
私はシスターから、白い石を受け取ると、その石を握りしめ強くお父様への想いを込めた。
私が手を広げると、白い石は真っ黒に染まっていた。
「これは・・・素晴らしい。ここまで黒く染まった石は私は初めて見ました」
シスターは、かなり驚いている。
「しばらく、お待ちください。司教様を呼んできます」
そう言うと、シスターは慌てて部屋を飛び出して行ったのであった。
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