第434話 スカンディナビア帝国編 パート22

 

 ヘカトンケイルは、私の背中に槍を突き刺そうとしたが、私は後ろを振り返らずに、ハエを叩くように巨大な槍を払いのけた。私の手で弾かれた強大な槍はヘカトンケイルの手から離れて遠くに見える山に、ロケットのように飛んでいった。



 「何が起こったのだ・・・」



 ヘカトンケイルは、私の背中を突き刺したはずなのに、急に槍が山の方に飛んでいったので理解ができずに頭が混乱している。



 「まぁ良いだろう。次は外さないぜ」



 ヘカトンケイルは、巨大な炎をまとった剣を持っている腕を振り下ろして、私の体を真っ二つに切り裂こうした。しかし、私は巨大な炎をまとった剣も片手で払いのけて、先ほどと同じ山の方へ飛ばした。



 「・・・ありえないぞ。こんな小さなクソガキが俺の剣を払いのけたのか?」



 先ほどと違って、慎重に剣を振り落としたヘカトンケイルは、私が軽く振り払って、強大な剣を山の方へ払いのけたのを確実に見ていたのである。



 「いや、何かの手違いだ。あんな小さなガキが俺の剣を振り払うなんて、常識的にありえないはずだ。次は外さないぞ」



 ヘカトンケイルは、巨大な斧をを持っている腕を、私の脳天目掛けて力強く振り落とした。私は拳を突き上げて迫り来る大きな斧にグーパンチをした。すると巨大な斧は真っ二つに割れてしまった。



 「クソーーー!なぜだ?どうなんているのだ。武器に欠陥があったのか?メンテはしっかりとしたはずだ。それともクソガキに当たらずに、岩にぶつかって砕けたのか?」



 ヘカトンケイルは、首を傾けながら私が武器を破壊した事実を受け入れることができず自問自答をしている。



 「ええーーい。全ての武器で細切れにしてやるぜ」



 ヘカトンケイルは無数の腕を持ち、その腕には様々な武器を持っている。その全ての腕を順番に振り落として、止むことのない雨のように、次から次へと私の頭上には武器が降り注いでくる。しかし、私は全ての武器を素早く掴み、遠くの山の方へ全て放り投げた。遠くの山は剣山のように無数の武器が突き刺さっている。



 「どうなっているのだ!こんなのありえないぞ・・・。ええーーい。こうなったらやけくそだぁーー」


 

全ての武器を失ったヘカトンケイルは、次は子供の喧嘩のように無数の腕を振り回しながら私を殴りつける。しかし、私は全ての腕を払いのけてヘカトンケイルの攻撃を防いだ。



 「そんな・・・そんな・・・」



 体長5mほどの巨人の大きな丸太のような腕を、身長140cmくらいの可愛い女の子の小さな可愛い手で、全て攻撃を払いのける光景を見たヘカトンケイルは、絶望的な表情になり気が狂ったかのように呟き出した。



 「この方もルシスお姉様のメロンパ屋に行きたいみたいです。メロンパン屋『ソンナ』は人気店です」



 小ルシス2号が嬉しそうに言った。


 



 私は軽くジャンプしてヘカトンケイルの肩に飛び乗った。



 「あなたは、スカンディナビア帝国のクーデターに関わった巨人ですか?」


 「そ・・そうだ」



 ヘカトンケイルの目は涙目になっていて、今にも滝のように涙がこぼれ落ちそうなくらいに怯えていた。



 「これからどうするつもりなのですか?」


 「魔王を降臨させるために儀式を行う予定だった」


 「コラ!!」



 私は大きな声で怒鳴って、ヘカトンケイルの頬をビンタした。ビンタされたヘカトンケイルの頭が吹っ飛び1km先の岩山にめり込んだ。



 「魔王ではなく魔王様です!」



 私は大声で注意したが、ヘカトンケイルの頭は1km先の岩山に食い込んでいるので聴こない。



 「ルシスお姉様への返事はしっかりとしてください!ルシスお姉様に対して無視をすることは、この世界では大きな罪になるのです。あなたはルシスお姉様への不敬罪として100年の懲役刑になるでしょう」



 小ルシス2号は、頭のなくなったヘカトンケイルの胴体へ向かって説教を始める。ヘカトンケイルの胴体は、小ルシス2号の激しい剣幕に危険を感じたのか、急に正座をして反省の意を表している。


 私は小ルシス2号が説教をしている間に、吹き飛んだ頭のある岩山に飛んでいった。





 「ちゃんと聴こえていましたか?」


 

 私は岩山にめり込んだヘカトンケイルの頭部に向かって声をかける。



 「すいません。聴こえていませんでした」


 「それならもう一度言いますね。魔王と呼び捨てするのはよくありませんので、魔王様と呼んでください」


 「え・・・そんなことで、私の頭部を殴り飛ばしたのですか?」


 「そんな事とはどういう事なのですか!」



 私はオデコに血管を浮かばせながら顔を真っ赤にして怒鳴る。



 「ごめんさない。これからは魔王様とお呼びします」



 私の茹でたこのような真っ赤な顔を見て、危険を察知したヘカトンケイルは滝のような涙を流しながら私の指示に従った。



 「それでよろしいです。あなたはさっき魔王様を降臨させると言っていましたが、魔王様を降臨する方法などありません。誰から魔王様の降臨の仕方を聞いたのですか?」


 「ビューレイストから聞きました」


 「そうですか・・・あなたはビューレイストさんに騙されているのだと思います。私がビューレイストさんに真実を語っていただけるようにお願いしてきます」



 私はヘカトンケイルの頭部がめり込んでいる岩山をパンチして破壊して、ヘカトンケイルの頭部を蹴飛ばして、さっきいた場所に戻した。



 「そんな・・・そんな・・・」



 まだ『そんな』の虜になっているビューレイスト叩き起こして、ヘカトンケイルへ真実を語るようにお願いをした。



 「なんで?俺がお前の指示に従わないといけないのだ!」



 状況を飲み込めていないビューレイストは、私にめくじらを立てて怒り出したのであった。

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