第336話 魔石国家ケルト王国編 パート6

⭐️フェニ視点になります。



 「ケルト王国まで後どれくらいで着くのですか?」


 「フェニちゃん、何度も言っていますが、ケルト王国までの道のりはかなり遠いです。あと二日はかかると思います。少しでも早く着けるように全速力で走りますが、落ちないように気をつけてください」



 私は、国王になること断った後、王都シリウスにある名門シリウス学園に編入した。しかし、教わる魔法は、大した事はなくあまり意味がないと感じていた。そして、剣術の訓練は私には必要ない。私にはリプロ様からもらった『ティルビング』があるからだ。この剣は剣術の才能が皆無の私を『ホロスコープ星国』の剣聖と呼ばれる事となった魔法のような剣である。


 私が『神剣』の能力を持つジェミニを圧倒的な剣技で倒したとキャンサーが国民達に言い回ったので、私はすぐに『ホロスコープ星国』の剣聖と呼ばれるようになってしまった。シリウス学園に編入した時も、すぐに学園の剣の指導員が、私のところへきて手合わせとしたいと言われた。仕方なく手合わせすることになったが、私の一振りで指導員は、剣の風圧で吹き飛ばしてしまって、それ以降は、私は剣術の授業からは外された。


 もちろん魔法も同じである。どんなすごい魔法を教えてもらえるか期待していたが、私の『ヘルファイヤー』を見た指導員は、さっと私の手を引いて、「教える事は何もありません。1人で自習をしてください」と言われて、追い出されてしまった。


 私は学院生活二日目にして、魔法科と剣術科を出禁になってしまった。後は一般教養と礼儀作法の授業だけになってしまった。私はヴァンピーの家に一緒に住んでいるのだが、ヴァンピーは、選挙活動のためにカペラとハダルの町へ行っているので、1週間くらいは帰って来ない。なので、夜中までぐうたらな生活を送っていた。夜更かしをして寝不足の私は、授業の1限目から眠っていた。もちろん私は起こされるのが嫌なのでシールド魔法を使ってしまった。それが先生達の逆鱗に触れて、学院編入3日目にして停学処分を食らってしまった。


 学院を停学になったとヴァンピーに伝えると私は大説教を喰らうと思ったので、スコーピオに相談して、最先端の魔法技術を学ぶという名目を作って、ケルト王国に行くことにした。私はヴァンピーが王都シリウスに戻ってくる前に逃げたのであった。



 「早く着かないかな・・・」



 私は1人で空を飛行してケルト王国へ行くつもりだったが、1人では危険なのでレオが付いて来たのであった。


 

 「キャンサーが先に行って、魔法研修の許可をもらっているはずです。更なる力を身に付けること期待しています」


 「もっと高度な魔法が使えるようになりたいですぅ」



 私はリプロ様のようになるのが目標である。リプロ様との1日だけの特訓は私にとっては1番有意義なものであった。できることならば、ケルト王国でなくリプロ様に魔法を教えてもらいたいと思っている。



 「『ケルト王国』は男性でも高度な魔法が使えると聞いています。私も魔法が使えるようになるのならば学びたいと思います」


 「それはすごいですぅ。ライちゃんも魔法が使えるようになったら嬉しいですぅ」


 「はい。魔法を覚えて少しでもフェニちゃんの力になりたいです」



 レオの私に対する忠義は揺るがないものがある。



 「でもあと二日は長いですぅ・・・」


 「僕が連れて行ってあげるよ」



 どこかで聞き覚えのある優しくて、そして懐かしい声がした。心を落ち着かせる優しい声の主はあの人に違いない。



 「もしかして・・・リプロ様ですか?」


 「久しぶりだね」



 私の前に白馬ではなく黒馬に乗った王子様が現れた。端正な顔立ち、光り輝く黄金の長い髪、誰もしが魅了されるエメラルドグリーン瞳、まさに暗黒の王子と言う表現が似合う男の子が私の目の前に姿を見せたのであった。しかし、2本の鋭いツノと漆黒の黒い翼がない。



 「フェニ、僕に少し違和感と感じているかもしれないけど、今日は人間としてここに訪れたのだよ」



 リプロ様が私の頭の中に声をかけてきた。



 「わかりました。何か事情があるのですね」



 私はどういうふうに返事をしていいかわからなかったので、心の中で呟いてみた。



 「そうです。フェニは今から『ケルト王国』へ行くのだね」



 心の中での呟きは正解だったみたいである。ちゃんとリプロ様に届いている。



 「はい、魔法を学びにいきますぅ」


 「・・・おかしいな?あの国は魔石具で強くなった国だよ」


 「本当ですか?」


 「本当だよ。だから魔法は大したことはないよ」


 「えーーー」


 「フェニちゃんどうしたのですか?」



 私は思わず声を出してしまった。



 「ライちゃん、『ケルト王国』では魔法は学べないみたいです」


 「そんなはずはありません。『ケルト王国』は先ほど言いいましたが、男性でも魔法が使えます。なので、かなり魔法の研究がされているはずです」


 「ライさん、間違っていますよ。『ケルト王国』の男性は、魔石具を使って魔法を発動しているのです。なので、魔法とは言えません」


 「お前は何者だ?」



 レオはリプロ様を知らないので警戒している。



 「ライちゃん!リプロ様に失礼な言葉使いはやめて下さい。リプロ様は私の命の恩人であり師匠であります」



 私の怒りに満ちた表情を見て、レオはすぐに自分が愚かな行動を取ったことを理解した。



 「申し訳ありません」



 レオはリプロ様に向かって深々と頭を下げた。



 

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