第114話 ターニプ防衛パート1



 やはり、サラちゃんは雷光石を狙っていたのであった。オーベロン王に渡す雷光石なので、サラちゃんに、雷光石を取られるわけにはいかない。しかし、急いでターニプの町に向かわないとドワーフの国が獣人に侵略されるかもしれない。私たちは、悩んだ末に雷光石の1つはサラちゃんに渡すことにしたのであった。ドワーフの国を守るのが最優先だからである。



 「サラ、ターニプの町が危ない。急いでくれ」


 「私に任せるのよ」



 サラちゃんは、猛スピードで飛ばす。サラマンダーにつけている籠は激しく揺れるが今回は仕方がない。私も猛スピードで飛ばす。私だけでもいち早く着いて状況確認がしたい。



 「ルシスちゃん・・・・やるわね。私も負けてられないのよ」



 サラちゃんは凄まじい勢いで飛行するが、さすがのサラちゃんでも、私のスピードには着いてこれない。





⭐️ドワーフの国では・・・



 「ドッレが、エルフの国へ旅立って今日で3日目だ。もうエルフの国についているだろう。だから、みんな、もう少し頑張ってくれ」


 「もちろんだ。7巨星王の名にかけて、俺たちがここから逃げ出すわけにはいかないぜ」


 「しかし、サラマンダー様が作ってくれた穴ぼこのおかげで、獣人達が、この町へなかなか辿り着けずにいるのは本当に助かったぜ。サラマンダー様は、この日が来ることを想定して穴ぼこを作ってくれていたのだろう」



 以前サラちゃんが、酔っぱらって町の外に溶岩を降り注いで出来た大きな穴ぼこが、偶然にも、獣人達の侵攻を妨げていたのであった。獣人達は、大きな穴ぼこを避けて、ターニプの町を攻めようとするので、進む道が限られるので、ドワーフ達は攻撃しやすいのであった。


 獣人達が、ターニプの町へ攻め込むには、正面の門を壊して侵入するのが1番簡単な方法である。町の周囲には大きな石の壁が何層に分かれて建てられている。石細工の得意なドワーフが作る石壁なので、簡単には壊せないので、獣人達は正面から攻め込むしかないのである。


 しかし、正面の門も守りが薄いわけではない。門の周りには、いくつもの投石機が用意されていて、侵入しよとする敵を、石を投げつけて攻撃するのである。


 ドワーフの魔石は、緑色の大地属性である。回復・身体強化に特化している。また土の微精霊から力を借りることにより、強力な土魔法を使う事ができるのである。なので、炭鉱の採掘や石を使った攻撃が得意なのである。



 「このまま、投石を続けて獣人の侵攻を抑えるぞ」


 「もちろんだ」


 「頑張るぞ」


 「門は俺たちが守り抜く」


 「誰も通さないぞ」



 正面の門は、7巨星王のジンレ、イロエ、グリン、ブル、ディゴの5人が守っている。パプルは、岩の城内で名誉王族とアビス、ホワと共に城の守りを固めていた。





 「この穴ぼこは面倒だぜ。以前調べた時は、こんな穴ぼこはなかったはずだ」


 「ダーシンシン隊長。ドワーフの投石で、モンキー部隊がかなりやられています。どうしますか」



 ターニプの町へ攻めに来たのは、3獣士の1人のバシャーの部下のダーシンシンである。ダーシンシンは、体長2.5mのゴリラの獣人である。ダーシンシンは猿の獣人を100人従えて、ターニプの町を攻めに来たが、穴ぼこの妨害と投石により、なかなか攻めることが出来ないのであった。



 「モンキー達では、あの投石には対抗するのはむずかしな。それに、もうすぐ、ランナーから連絡が来るだろう」



 ランナーとはチーターの獣人である。とても足が速くて伝令役をしている。ダーシンシンは、無数の穴ぼこを見て、ターニプの町を攻めるのは、難しいと判断してランナーを使って、ブロードピークを占拠したバシャーの元へ応援を要請していたのであった。


 

 「ダーシンシン隊長、ランナーが戻ってきました」


 「よし、連れてこい」


 


 「ダーシンシン隊長、バシャー様の言葉をお伝えします。『クロコダイル達を向かわせているので、ターニプの侵攻は一旦中止しろ。クロコダイル達の到着後一気にターニプの町を攻め落とせ』

との事です」


 「わかったぜ。一旦、森へ引き上げるぞ。皆に連絡しろ」




 「獣人達が、逃げていくぞ」


 「いや、逃げたのではない。一旦退いただけだろう」


 「応援が来るのに違いない」


 「でも助かったかも。これでポロン様の応援まで時間が稼げるはずだ」


 「ポロン様、はやく来てくれーーー」


 「あーーーー、あれは、ルシスちゃんでは」




 私は、2時間くらいでターニプの町に到着した。まだ町は大丈夫みたいである。そして、私は、ターニプの門を守る投石機の近くに5人のドワーフの姿を発見した。


  鎧の色でしかドワーフは見分けがつかないが、7巨星王の5人に間違いないだろう。私は、状況を確認するためにドワーフの元へ向かった。



 「ドワーフさん、無事ですか」


 「サラマンダー様の穴ぼこのおかげで、町への侵入は防ぐことはできています。しかし、獣人達は、援軍を呼んでいると思いますので油断はできません」


 「ロキお姉ちゃん達も、すぐに到着すると思いますので、今後の作戦をたてましょう」


 「お願いします。もしよろしければ、お酒を出してもらえると嬉しいのですが・・・」



 こんな大変な時でも、お酒への思いを断ち切ることのできないドワーフであった。



 15分遅れでサラちゃんが到着した。


 

 「ルシスちゃんに負けましたわ。とても悔しいですわ」


 「気にするな、サラ。お前もよく頑張ったぜ」


 「そうですわ。こんなに早く着くなんて素晴らしいですわ」



 サラちゃんは、ポロンさん、トールさんに褒められて、嬉しそうにしている。



 「ロキお姉ちゃん。詳しい事情をドワーフさんに確認するので、門の近くの食堂に行きましょう」


 「そうね。トール、ポロン、サラちゃん、食堂へ行くわよ」


 「お酒か」

 

 「お酒ね」


 「お酒ですわ」


 「お酒なのです」



 お酒の雰囲気を察知して、呼ばれていないイフリートまで出てきたのである。獣人対策の作戦会議の予定が、宴会になってしまいそうで不安になってきたのであった。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る