第115話 ターニプ防衛パート2

  


 「獣人たちはサラマンダー様の作った穴ぼこが邪魔で攻めきれずにいてます。なので、援軍を要請しにいったん引き上げたと思います。時期に援軍が到着後に再度攻め込んでくるでしょう」


 「私のおかげだわ。感謝するのよ」



 サラちゃんが満足げにドワーフに言った。



 「ありがとうございます。サラマンダー様」



 ドワーフ達はサラちゃんに取り入ろうと必死である。



 「ルシス、早くお酒を出してくれよ」


 

 食堂の住人は避難しているので、店は休業している。なので、みんな私のお酒とおつまみを期待している。



 「そうですわ。お酒がないといい作戦は思いつきませんわ」


 「そうです。お酒です」


 「俺らにもお酒をください」



 トールさんのお酒の催促に、ロキさん以外全員がのっかかるのであった。



 「お酒、お酒、お酒、お酒」



 お酒コールが、食堂内に鳴り響く・・・・



 「ルシスちゃん・・・騒ぎが収まらないのでお酒を出してあげて」


 「ロキお姉ちゃんが了承するのでしたらお酒を出します」


 「お酒、お酒、お酒、お酒」


 

 お酒コールの歓声がさらに大きくなる。



 「みんなさん。お酒を飲むのもいいけど、きちんと作戦を立てましょう」



 ロキさんはみんなに真剣に伝えたが、全員お酒のことで頭がいっぱいであった。


 私は、お酒とおつまみをテーブルに出してあげた。



 「飲むぞーーー」



 トールさんがみんなに声をかける。



 「もちろんですわーーーー」



 サラちゃんがそれに続く。



 「私も飲みますわ」


 「私もです」


 「いただきます」


 「久しぶりの日本酒に感謝します」


 「飲みまくりましょう」


 「飲むぞーー」


 「やったぜー」



 やはり大宴会になってしまった。こんな状況で作戦会議ができるのか不安になってきた。



 「援軍が来る前に、一気に獣人を攻撃した方が良いと思います」


 「私もそう思います。今がチャンスだと思います」



 私とロキさんの意見は一致した。



 「獣人よりも先にお酒だろ」


 「そうだ、そうだ、そうだ、そうだ、そうだ、そうだ、そうだ」



 私とロキさん以外は猛反対する。



 「・・・・・」


 「・・・・・」



 私とロキさんは呆然とした。みんな獣人との戦いよりもお酒を飲むことのが重要なのであった。



 「ルシスちゃん。諦めましょう」


 「はい」



 私とロキさんは今日の戦闘は無理だと判断した。今戦えば、サラちゃんもいるし、すぐに決着は付くはずであった。しかし、明日になると、サラちゃんは戦闘に参加することはないだろう。なぜならば、食べ過ぎで深い眠りにつくからである。



 その日は夜遅くまで宴会は続いた。そして、私の予想通りサラちゃんはイフリートに連れられて、イディ山に帰って行った。






 「クロコダイル達は到着したのか?」


 「ダーシンシン隊長。明日の朝には到着する予定です」


 「そうか。クロコダイル達の鋼鉄の鱗ならあの投石も問題ないだろう。クロコダイル達が到着したら、一気にあの町に攻め込むぞ」


 「わかりました」





 「トールお姉ちゃん、起きて下さい。私たちは獣人を追い払う為に来たのです。宴会をしに来たのではありません」


 「・・・そうだった。お酒を見たら獣人のことは、すっかり忘れてしまったぜ」


 「朝からうるさいですわ。もう少しゆっくり寝かせて欲しいわ」


 「ポロンお姉ちゃんも起きてください。獣人達の侵攻に備えないといけません」


 「・・・獣人?なんのことかしら」


 「私たちは、獣人からターニプの町を守りにきたのです」


 「あっ・・・・・そうでしたわ。寝ている場合ではなかったわ」


 「ルシス、サラはどこに行ったのだ」


 「サラちゃんは、食べ過ぎ・飲み過ぎでダウンしてしまったので、イフリートがイディ山に連れて帰りました」


 「サラは、肝心な時に使えない奴だな」



 トールさん、あなたのせいですよ。と言いたかったが、ここはグッと我慢したのであった。



 「ロキは、どこに行ったのだ」


 「ロキお姉ちゃんは、獣人が攻めてこないか監視しています」


 「そうか。俺たちもロキの元へ行くぞ」


 「はい」


 「もちろんですわ」



 ドワーフ達は、まだ食堂の床に転がって寝ている。しかし、あまり役に立ちそうにないので放置することにした。




 「ロキ、獣人達の動きは、どんな感じだ」


 「まだ援軍は来ていないみたいよ。援軍が来る前に先に仕掛けた方がいいと思うわ」


 「そうだな。この投石機の対策をして次は攻めてくるはずだ。地的有利な状況が崩れるだろう」


 「でも、この穴ぼこは私たちも邪魔なのではないかしら」


 「ポロン大丈夫だ。俺たちにはこのふわふわ号がある。これに乗って上空から攻めれば、問題はないはずだ」



 雷神から奪ったふわふわ号は、所有者をトールさんと判断したので、呼べばすぐに現れるのであった。



 「そんな便利な物を、ゲットしていたのですね」


 「いいだろ。3人までなら乗れるはずだ。上空から、獣人達を探し出して、先制攻撃をお見舞いしてやろうぜ」


 「素敵ですわ」



 私たちの作戦は決まった。獣人の応援が来る前に、上空から先制攻撃を仕掛けることにした。


 ロキさん達はふわふわ号に乗り込み、私は翼を出して上空に飛び上がった。7巨星王の話しによると、獣人達はブロードピーク山の麓の森に一旦退いたみたいである。私たちは、その森を目指して飛行したのであった。


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