第116話 ターニプ防衛パート3
「ふわふわ号は、快適ですわ」
「いいだろう。フワリンのおかげで、移動がかなり楽になったぜ」
「トール、いつの間にふわふわ号に名前を付けたの」
「今思いついたんだ。ふわふわ号は雷神がつけた名前なので、俺のものになったから新たな名前が必要だと思ったんだぜ」
「フワリン・・・可愛くていい名前ですわ」
「そうだろ。これからはフワリンと呼んでくれ」
「わかりましたわ」
「了解よ」
「・・・・・」
『いいなぁーー。私もフワリンに乗りたぁーーーーい』と、心の中で叫んでいた。わたしは、自力で飛べるので、まだ一度もフワリンには乗っていないのである。何度か、トールさんにお願いしたが、『ルシスには、必要ないだろ』と言われて乗せてくれないのであった。
「この辺りじゃないのか」
「そうね。あの大きな山がブロードピーク山だから、このあたりの森に潜んでいるはずよ」
「あっ・・あのあたりから煙が見えますわ」
「本当だわ。あそこで、食事をしているのかもしれませんわ」
「そうだな。どんな料理か確かめてくるか」
「トール。私たちは、盗み食いに来たのじゃないのよ」
「わかってるぜ。でも、獣人が作る食事は美味しいと聞いたことがある。だから前から興味があったんだ」
「なんですって。それは聞き捨てなりませんわ。どんな料理か食べてみたいわ」
「ポロンまで何を言っているの。ドワーフの国が襲われそうになっているのよ。そんなことをしている場合じゃないわよ。ルシスちゃんからも何か言ってあげて」
「私の料理のが美味しいに決まってます。獣人の料理になんか絶対に負けないもん」
私の料理魂に火がついた。私は特に料理は得意な方ではなかったが、この異世界に来て、自分が作った料理をみんなが美味しそうに食べてくれるのはとても嬉しかった。なので、獣人の料理になんて負けたくなかったのであった。
「よし、作戦は決まったな。こっそり忍び込んで獣人の料理を奪おう作戦だーーー」
「いい作戦ですわ」
「好きにしたらいいのよ」
ロキさんは、反論するのに疲れたので、全てを受け入れる事にした。
「このままの姿だとすぐにバレますので、この猫耳をみんなつけてください」
私は、こんなことがあることを想定して、猫耳のカチューシャを用意していたのであった。
「これを、つければ獣人に変身できます」
私は、ロキさん達に猫耳のカチューシャを渡した。
「これは、すごいぜ。これなら絶対にバレないはずだ」
トールさんが、猫耳カチューシャをつけた。小柄なトールさんのショートカットの髪型には、猫耳はとても似合っていた。ちょっとやんちゃな子猫ちゃんって感じだ。
「私も似合うかしら」
ポロンさんが猫耳カチューシャをつけた。ポロンさんは、細身でグラマーな体型なので、猫耳をつけるとすごくセクシーに見える。セクシーキャットに大変身である。
「私もつけないといけないのかしら?」
「もちろんです。これをつけないとすぐに見つかってしまいます」
「ルシスちゃんが、言うなら・・・・仕方がないわ」
ロキさんが、猫耳カチューシャをつけてみた。ロキさんは、背が高くすらっとした美人ので、猫耳をつけると、少しきつい感じのツンツン猫ちゃんだが、猫耳をつける事に恥じらいを感じて、恥ずかしそうにしている姿が、とても可愛いツンデレ猫ちゃんに大変身である。
「本当に、これで大丈夫なの」
「可愛いから大丈夫です」
「ルシスちゃんはつけないの」
「私はツノがあるので、猫耳カチューシャが破れてしまいます」
そうなのである。私は、かわいい猫耳カチューシャを付けれないので、かなりショックを受けている。もしものために用意していたのに、まさか、ツノが邪魔で付けれないなんて、想定外だったのである。
「これで、変装は完璧だ。獣人のお食事タイムに潜入するぜ」
「もちろんですわ」
「私は気が進まないわ」
「にゃんにゃん部隊突撃しまーーーーす」
私達は、完璧な変装?をして煙の上がっている森へ向かった。
「ダーシンシン隊長、朝食の準備が整いました」
「そうか。今日はどのような朝食だ」
「今日は、この森で獲れたイノシシの肉を、バターとハーブで焼いたステーキを用意しています。果物とサラダもありますので、ゆっくりとお食事を楽しんでください」
「バニーの作る料理はとても美味しいから楽しみだぜ」
ダーシンシンの率いる獣人部隊の料理を担当しているのが、うさぎの獣人のバニーである。体長は1mくらいの小柄な獣人である。うさぎは、人間の数倍の味を感知できる舌を持っている。なので料理を作るのは得意なのである。
バニー料理長が作る料理は、美味しいだけでなく、能力向上、魔法力アップなどの、食材も含まれていて、戦闘前には必ず食べる戦闘料理なのである。
「ダーシンシン隊長と、もうすぐ到着するクロコダイルご兄弟様の分もご用意していますので、到着後、ご一緒に食べられるとよろしいかと思います」
「そうだな。今すぐ食べたいが少し待つとしよう」
「煙が、ここの辺から上がっているみたいだぜ」
「トールさん、あそこにテーブルが用意されていますわ」
森の中に、木製の立派大きなテーブルが置いてあった。
「テーブルの横にお猿さんの獣人が1人いてますわ」
「見張りかしら?しばらく様子を見てみましょう」
「おーーい。お猿さん。何か食い物はないか」
ロキさんの作戦を無視して、トールさんがお猿さんに声をかけた。
「トール何をしているのよ」
と、ロキさんは心の中で叫んだ。
「あなたが応援に来られた方ですか」
「そ・そ・・・そうだぜ」
「確か、ワニの獣人のクロコダイル様が来られると聞いていたはずですが?」
「変更になったんだぜ。クロちゃんはお腹を壊したから帰ったぜ」
「そうなのですか。失礼しました。あなた様はどなたでしょうか。私は、あなた様を見たことがありません」
「お、お、俺は、臨時の助っ人のニャンの助だ」
「そうなのですか。応援はニャンの助様のお一人ですか」
「いや、あと3名いるぜ。みんな出てこいよ」
「トール、なんて無茶なことをしているの・・絶対にバレるわよ」
「でも、トールは行ってしまったわ」
「どうしよう」
「ロキお姉ちゃん、トールお姉ちゃんが呼んでいます」
「仕方がない。トールに任せよう」
私たちは、トールさんに全てを託した。もうこうなったらヤケクソである。
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