第113話 武道大会パート14

 


 「王様に会いにいこうぜ」


 「ポロン、王様のところへ案内してもらえるかしら」


 「あ・・・今日は武道大会の決勝の日ですわ。私はお兄様とお姉様の決勝戦の応援に行く予定だったのに、寝てしまっていましたわ。お父様も武道大会の会場にいてるので急いで行きましょう」



 私達はポロンさんに連れられて、武道大会の会場へ向かった。会場に着いた時は、武道大会の決勝戦は終わっていて、優勝者の表彰式が行われていた。



 「お姉様が優勝したみたいですわ」


 

 ポロンさんは、そう言うと急いで舞台の方へ走って行った。


 私達は、状況があまり飲み込めていないので、観客席で待つ事にした。



 「武道大会があったみたいだな」


 「そうみたいね。その大会で、ポロンさんのお姉さんが優勝したみたいね」


 「そうだな。しばらくここで待っていようか」


 「そうしましょう」



 会場の舞台では、ヘラとライアーが両手を空高く上げてお互いの健闘を称えていた。そこへ、ポロンさんが急いで駆け寄って行った。


 

 「お姉様、優勝おめでとうございます。お兄様もこんな姿になるまでがんばるなんて、とても素敵ですわ」


 「ポロンありがとう」


 「ポロン、おまえのおかげで俺は頑張れた。本当にありがとう」



 3人はお互いを抱きしめ合った。会場からは大きな拍手の波が鳴り止まなかった。



 表彰式が終わり、私達は武道大会の会場にある王様用の部屋に案内された。



 「君たちがポロンの冒険仲間なのか?」



 アールヴ国王が優しくロキさんに尋ねた。



 「はい。そうです。ラストパサーという冒険者をしています」


 「ポロンを支えてくれてありがとう」


 「こちらこそ、ポロン王女にはお世話になっています」


 「そうか?」



 いつものようにトールさんが素直にツッコんだ。



 「トール余計なことは言わないの」


 「だって仲間だぜ、世話とか支えるとか関係ないだろ」


 「トール、言葉使いを気をつけなさい。王様の御前になるのよ」


 「気にしなくてもいいぞ。トール君の言う通りだな。でも改めて、お礼を言わせてもらおう。本当にポロンと共に冒険してくれてありがとう」


 「当然だぜ。ポロンは大切な仲間だからな」


 「私からもお礼を言わせてね。あなた達のおかげで、ポロンは大きく成長することができましたわ。本当にありがとうね。そして、これからも仲良くしてあげてね」



 サブリナ王妃が嬉しそうに言った。




 「もちろんだぜ。できたら、お礼のついでに雷光石が欲しいぜ」


 「雷光石が欲しいのか」


 「お父様、私達がエルフの国にきた目的は、私の里帰りと雷光石を探しにきたことです。仲間達は、鬼の島へ行ったのですが、雷光石を見つけることができませんでした」


 「そうだったのか。サブリナ、雷光石の在庫はまだあるか覚えているか」


 「確か、あと2つくらいならあったはずよ」


 「お父様、その二つを私に譲ってください」


 「雷光石は何年かに一度、鬼の島から、購入できるとても貴重な素材だ。王であっても、私の一存では、決めることは難しいのだ。だが、今度の王族会議で確認してみようではないか」



 やはり、雷光石はとても貴重な鉱石であった。エルフの王ですら、自由に扱うことができないみたいである。そんな貴重な鉱石を、7個も食べてしまったロキさん・トールさんと私はとても肩身の狭い思いであった。




 「国王様、緊急事態です」


 「どうかしたのか」


 「お忙しいところすいません。ドワーフが現れました」


 「攻めてきたのか」


 「いえ、ポロン王女様に会いたいと訴えています」


 「ポロンどうする」


 「アビスの件かもしれないので会いますわ」


 「わかった。そのドワーフをここに連れてこい」



 ドワーフが、エルフの国に来ることはありえない。少し前までは、戦争こそしていないが、お互いを警戒し合って冷戦状態にあったからである。


 アビスの件で、ドワーフ側の誤解は解くことができたが、エルフ側の誤解は、まだ完全に解けていない。その誤解を解く役目もポロンさんの役割である。


 しかし、里に戻るとエルフの国の大イベントの武道大会が始まっていたので、アビスの件は、一部の王族にしか伝わっていなかったのである。なので、ドワーフがエルフの国を訪れたので、大騒ぎになっていたのである。



 「ポロン様助けてください」



 警護兵が連れてきたドワーフは、7巨星王の1人ドッレであった。



 「ドッレさん、どうしたのかしら?」


 「獣人達がターニプの町を攻めてきたのです。どうか!ポロン様の偉大なる力を貸していただきたい」



 ドッレはポロンさんの聖霊神の力を知っているので、その絶大なる力を借りにきたのであった。



 「わかりましたわ。詳しく聞かせてもらっていいかしら」


 「わかりました。ドワーフの国の南の果てには獣人達の暮らす国があります。獣人の国は3獣士と言われる獣人の勢力によって治められています。3獣士とは、象の獣人ダーシャン・キリンの獣人ジラーフ・虎の獣人ティグレの3人であります。3獣士の1人ティグレは、とても温厚で優しく争いを好まない獣人だったので、ドワーフの国とも交易があり仲良くしていました。しかし、3年前、虎の獣人ティグレがラーテルの獣人バシャーに敗れてしましいた。新たに3獣士となったバシャーは、とても獰猛で攻撃的な獣人です。そのため、3獣士の勢力バランスも崩れて、獣人国家は内戦状態になってしまいました」


 「そんなことがあったのですね」


 「そして、バシャーは、内戦を優位にするために鉱石を狙って南の山脈ブロードピーク山の鉱山を襲撃しました。私たちは抵抗しましたが敗北して鉱山は占拠されてしまいました。鉱山を占拠したバシャーが、次に狙うのはターニプの町です。なので、町を襲われる前に、私はポロンさんに応援を求めて、エルフの国へ来ました」



 ティグレさんが、ブラカリの町に来たのは国を追い出されたからであった。あのティグレさんよりも強いバシャーは強敵になりそうである。



 「わかりましたわ。今すぐにでもターニプの町に向かいますわ」


 「当然だぜ。サラを呼んですぐに向かおうぜ」


 「そうしますわ。少しでも、早く到着しないといけませんからね。ドッレさん、ターニプの町は私達が守りますわ」


 「ポロン、ドワーフの国へ行くのだな」


 「はい、お父様。困っているドワーフ達を、見捨てるわけにはいきません」


 「やっとポロンに会えたのに、もうお別れたとは寂しいが、頑張って来るのだぞ。そして、雷光石の件はすぐに会議を開いて、お前が戻って来るまでには渡せるように準備をしておこう」


 「お願いします」



 私達はサラちゃんを呼んで、すぐにターニプの町に向かった。ドッレは、エルフの国に残って、アビスの件で国王と会談することになった。



 「私が、ターニプの町へ連れて行ってあげるわよ」



 サラちゃんの機嫌がとてもいい。これは悪い予感しかしない。



 「これが終わったら、また雷光石が食べれるのよーー」



 やはり、サラちゃんは、雷光石を狙っていたのであった。


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