第112話 武道大会パート13


⭐️ 場面は変わって鬼の島になります。



 「ルシスちゃんどうしよ」


 「やばいよな・・・」


 「・・・・」



 私たちは非常に困っていた。2日間血眼になって雷光石を探したが、全く見つけることができなかったのであった。


 厳密に言うと、血眼になって探したのはゴーレム達であって、私たちは呑気に温泉を楽しんでいただけであった。いや、私は合間を見ては、転移して食材集めなど頑張っていたのである。なので、私は、悪くないのである・・・・



 「もう1日頑張るか」



 もちろんゴーレムが。



 「これ以上は、無理かもしれないわ」



 全く探していないロキさんが言う。



 「諦めるしかないのかもしれません」



 自ら探すのが面倒くさい私が言う。



 「でも、雷光石がなければ、サラとオーベロン王の和解は難しいぞ」


 「何か、雷光石の代わりになるものがあればいいのに・・・」


 「あっ、プリンはどうですか。サラちゃんもあんなに喜んで食べてくれているので、オーベロン王にも、喜んでもらえるかもしれないと思います」


 「ルシス、それだ!」


 「私もそう思うわ」



 雷光石はかなり貴重な鉱石である。最初に7個もゲットしたので、いくら探しても見つけるのは不可能である。なので、みんなの意見も一致したので、雷光石の代わりにプリンを持っていくことにした。合間を見つけて、食材集めをしていて正解であった。



 私たちは、鬼の島を後にしてポロンさんのいるゴールウェイの町に向かう事にした。


 風神に飛ばされたふわふわ号は、新しいご主人となったトールさんの元へ戻ってきていたので、ロキさんとトールさんは、ふわふわ号に乗ってゴールウェイの町を目指した。




⭐️武道大会に戻ります。



 「武道大会の優勝者はヘラ選手です」



 観客席からは大きな拍手が鳴り響く。ライアーの熱意に応えて、手加減せずに最後まで攻撃し続けたヘラを、観客は大いに称えてたのであった。



 会場の舞台の上で、ヘラは国民に笑顔で手を振る。とても美しい姿である。そのヘラの横には、治療を受けて包帯を全身に巻かれたライアーがいた。



 「そして、準優勝はライアー選手です」



 「よくやったぞ、ライアー」


 「見直したぞ」


 「素敵でしたわ」

 


 観客席からは、ヘラの時と同じように大きいな拍手が鳴り響き、ライアーに対して励ましの声援が飛んでいた。


 ヘラは、ライアーの手をとり2人で空高く両手を上げた。


 観客席からは祝福の拍手が鳴り止まなかった。


 ライアーは、包帯の隙間から大粒の涙を流しながら、みんなの声援に応えるのであった。





 私たちは、ゴールウェイに着くと門番にポロンさんのことを尋ねた。



 「ポロン王女様でしたら、数日前に修行の旅から戻られました」


 「今日は、どちらにポロンはいてるのかしら」


 「お城に行って確認してもらえば良いと思います」


 「ありがとう」



 ロキさんは門番にお礼を言って、私たちはお城へと向かった。



 「本当に、ポロンは王女様だったんだな」


 「トールは、ポロンの話しを信用してなかったのですか」


 「信用していなかったわけじゃないが・・・ポロンが王女なんて似合わないだろ」


 「・・・・」



 ロキさんも、2年間ポロンさんと旅をしていたが、ポロンさんから王女としての品格を全く感じる事はなかったのであった。


 もちろん、私もいまだに信じることはできないのである。



 「ここが、お城だな。本当にポロンが王女様なのか聞いてみるわ」



 トールさんは、お城の警備兵に声を掛けた。



 「ポロンはいるか?」


 「貴様、ポロン王女様に対して失礼だぞ。こいつはあやしい人物かもしれない。コイツを捕えろ」


 「おい、何をするんだ」


 「暴れるな。静かにしろ」



 トールさんは、護衛兵に捕まってしまった。



 「ロキーーー、助けてくれーー」



 ロキさんは、遠い目をして関わらないようにした。



 「ルシスーーー、助けてくれーー」



 私も、ロキさんと同様に遠い目をして他人のフリをした。



 「この裏切り者めーーー」



 トールさんは大声で騒ぐ。



 「騒がしいけど何かありましたの?」


 「はい。不審人物が現れましたので、捕らえたところです。今から、尋問の為牢屋に入れてきます」


 「ポ・ポ・ポロンじゃないか。俺だ、トールだ。助けてくれ」


 「トール?さんそんな知り合い私にいたかしら?」


 「おい、冗談はよしてくれ。本当に牢屋へ送り込まれてしまうぞ!」


 「ポロン、元気そうね」


 「ロキ、ルシスちゃん、ゴールウェイに来ていたんですね」


 「今さっき着いたところよ」


 「雷光石は、手に入れることはできましたの?」


 「そのこと件については後で話すわ」


 「何かあったのですね。こんなところで話すのもなんなので、お城の中は入ってください」


 「おーーーーい。俺のことを忘れていないかーーー」



 私たちは、トールさんを置いて城の中に入っていった。





 「お前ら、信じられないぜ。危うく牢屋に入れられるところだったぜ」



 もちろん、トールさんをあのまま放って置くわけにもいかないので、ポロンさんがきちんと説明してくれた。



 「面白そうだったので、少し放置しましたわ」


 「私もね」


 「私もです」


 「おまえらーーーー、いつか仕返しをしてやるぞ」


 「そんなことよりも、雷光石はどうなったのかしら」


 「実は、手に入れることが出来なかったのよ」


 「悪いな」


 「申し訳ないです」



 みんなで食べましたとは言えなかった。



 「仕方ありませんわ。でも雷光石がなければ、オーベロン王との和解も難しくなりますわ。どうしましょう」


 「代わりにプリンを持っていこうと思っているの」


 「それは、いい考えだと思いますわ。プリンの魅了に耐えれる者などいないはずだわ」


 「そうだな。サラもプリン欲しさに召喚契約したしな」


 「そうですわ」


 「でも、サラも雷光石を楽しみにしていたから、機嫌を悪くなるか心配だぜ」


 「それなら大丈夫ですわ。昨日のクイズ大会で雷光石を手に入れて、嬉しそうにしていたからね」


 「そうなのか。雷光石は滅多に手に入らないのではないのか?」


 「そうですわ。でも、エルフの国王なら少しは持っているわ」


 「・・・・」


 「どうしたのですか」


 「エルフの国王は・・・すなわち、ポロンの親父だろ」


 「もちろんですわ。私の父は偉大なるエルフの国王ですわ」



 自慢げに語るポロンさん。



 「なら、親父に頼んで、雷光石を分けてもらえないのか」


 「・・・・そうですわ。お父様に頼めばよかったのですわ」



 一同は唖然とするのだが、雷光石を全部食べてしまった私たちは、ポロンさんを責める事はできなった。

 

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