第26話 素材集め

                  


 請求額を見たロキさんは、一気に酔いが覚めてしまった。毎度のことながら、トールさんの食費代には困ったものである。


 明日になれば、ゴブリンキングの討伐の報酬が入るから問題はないだろう。とロキさんは呟きながら食堂を出たのであった。


 

 

 食堂を出ると、トールさんはまだ飲み足りないと言って、1人で飲み屋街に消えていった。



 「トールさんは行っちゃいましたね・・・」


 「そうですね。大きな仕事を終えた後だし、好きなだけ食べてきたらいいでしょう。食べることが、トールのパワーの源だからね。私たちは帰ってゆっくりとしましょうね」


 「はーい。私は朝から探索に行きたいので戻ったらすぐ寝まーす」


 「ルシスちゃんは元気だね。私は昼までのんびりするわ」


 「私は冒険者ギルドに行かないとね。魔石や素材を換金しないといけないしね。そのあとはのんびりさせてもらうわよ」



 三人は宿屋に戻るとすぐに眠りについたのであった。



 翌朝、私が1番に目覚めて、すぐに素材探しに出かけることにした。私が外に出ようとしたら宿屋の入り口でトールさんとすれちがった。



 「今から、食べに出かけるのか?」


 「ちがいます。作りたい物があるで、その素材を取りにいってきます」


 「食べるものか?」


 「はい、そうです」


 「楽しみにしてるぜ」


 「期待しといてくださいね」



 そう告げると私は探索へと向かった。トールさんは、朝まで飲んでいたみたいなので今から眠るのであろう。


 今日の探索で手に入れたい物は、油を作るための原料と、唐揚げに適した鶏肉だ。アカシックレコードは、より適した食材の候補が出てくる。鶏肉は町の市場でも売られているが、私が求めているのは最高級の食材である。


 この町から、北西に進むとユイール大草原がある。ユイール大草原に生えている植物が、油を作るのに1番適しているらしい。まずはユイール大草原に行って多量の油を作ることにした。馬で行ってもいいのだが、私は試したいことがあった。


 それは、私の魔人としての能力で空を飛ぶことである。魔人の一部の者は、翼を自在に出すことが出来るのである。エスパース『異空間』の訓練で、翼と風魔法の応用でかなりのスピードで飛べるようになってはいるが、人界で試すのは初めてである。


 私は、人が来ないところまで来ると、翼を背中から出してみた。翼は服から生えているかのごとく、背中からあらわれた。私の翼は悪魔のような黒くて尖った形ではなく、丸みを帯びた白い天使の翼のような形をしている。


 このような形をしているのは、魔石を一度浄化しているのが原因である。


 私は翼をバタつかせて、上昇して次に風魔法を使いスピードを上げて的地に向かった。特訓の成果もあり、自在に空を飛ぶことが出来て満足している。目的地に着くまでに、いろんな飛び方を試しながら進むことにした。


 私は大空を移動してユイール大草原に辿り着いた。まずは、植物を採取する前にやらなければいけないことがある。それは、ユイール大草原をナワバリとするバシリスクとコカトリスの群れの討伐である。ユイール大草原は、この2種類の魔獣の群れがいるので、この大草原に立ち入る者はいないのである。


 バシリスク、コカトリス共に討伐難易度はDランクであるが、それが群れをなしているとなると、難易度はかなり上がるのである。


 私の攻撃魔法のメインは、大天使ウリエル様から授かった光と炎の2種類の魔法である。光魔法は、レアな魔法なので使用していない。なので、今回は光魔法で戦う事にした。


 私は、魔力を右手に集中させ、大きな光球をつくりだした。そして、その光球を一旦上空に投げ、さらにその光球に魔力を注ぎ光球を大きくした。大きくなった光球は全長100mくらいになる。そして、その光球から、雨のような光の無数の矢を魔獣目掛けて撃ち放った。


 無数の光の矢は、大草原にいるバシリスク、コカトリスの群に突き刺さる。数分後には無数の死体が転がっていた。


 これでゆっくりと素材の回収ができる。私は目当ての植物をひたすら回収しまくるのである。昼過ぎには、かなりの量を回収することができた。お昼からは、回収した植物から油を作ることにした。魔法を使えば簡単作れるが、作る量が膨大な為時間がかかりそうだ。


 3時間くらいかけて、やっと油を作ることができた。出来上がった油は、収納ボックスに入れておく。異世界転生おたくだった私が、真っ先に作った物である。異世界転生と言えば定番のアイテムである。


 次は、鶏肉だ。実はコカトリスの肉が唐揚げに1番最適な鶏肉であった。そう、まさにユイール大草原は唐揚げ大草原であった。私は光魔法のレーザービームを使い、唐揚げに使える部位と魔石を回収するのであった。


 日が暮れるころには、解体作業も終わり急いで町へ帰ることにした。


 宿屋に戻ると、ロキさんに帰りが遅いと怒られてしまった。私がある程度強いのは理解しているが、それでも、まだ10歳の女の子であるので心配せずにはいられないらしい。



 「ごめんなさい、ロキお姉ちゃん。明日からは早く戻ってきます」


 「もしかしたら、何かあったのかもと心配してたのよ!無事だから良かったけど、明日からは早く帰ってきてね」


 「はい、わかりました」


 「話しは変わるけど、さっき冒険者ギルドから連絡がきて、領主様がお礼をしたいらしいのよ。それで、明後日にでもラディシュの町へ行くことになったわよ」


 「はい、わかりました。それなら、明日までゆっくりできるんですね」


 「そうだね。でも、ルシスちゃんのことだから、明日もお出かけするのかな」


 「はい、まだ集めたい素材があります」


 「明日は早く帰ってくるのよ」


 「はーい。今日は私が取ってきた素材で、料理を作りますが食べてくれますか?」


 「もちろんよ。トールから聞いていたから楽しみにしていたのよ」


 「それは嬉しいです。さっそく作りますがトールさんは?」


 「それが、昨日の食堂に昼頃から出かけてから、まだ帰ってきていないのよ」



 あのトールさんだから、昼から飲んで食べて騒いでいるのだろう。トールさんは、まだ帰ってきていないが料理を作ることにした。


 コカトリスの唐揚げと市場で買ったじゃがいもでフライドポテトを作った。ポロンさんには、市場で買った魚でフィッシュフライを作ってあげた。



 「なにこれ、サクサクして美味しいですわ。今までに、食べたことのない味ですわ」



 ポロンさんからは大絶賛だ。



 「とってもジューシーで美味しいわ!ルシスちゃんは、冒険者を辞めて料理人なった方がいいのかもしれないね」



 ロキさんからも大絶賛だ。頑張って作って本当によかった。


 しかし、トールさんは今日も朝帰り確定だ。せっかく喜んでもらおうと思ったのに残念である。

 


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