第59話 エッグプラントの町パート1
私たちの目指すドワーフの町エッグプラントは、鉱山の町と言われ、ドワーフの鉱山事業の主要拠点の町であり、また、神守聖王国オリュンポスからの侵攻を食い止める軍事拠点でもある。
エッグプラントの町はアトラス山脈の麓にあり、ここを通らないとドワーフの国へ行くことはできない。エッグプラントの町には、鉱石・ドワーフ産の装備類の買い付けなどで、商人が頻繁に横行しているのだが、リークの町が石化された後は、エッグプラントの町へは行くことができなくなっている。
私たちは、早朝にリークの町を出発してエッグプラントの町を目指した。クラちゃんが、守護聖竜のドラゴンの住処から、ミスリル・アダマントを盗み、それを知ったドワーフは、リークの町へ使いの者を出して、どれほど大変なことをしたのかを伝えた。そして怒り狂ったドラゴンがリークの町を石化しに山から降りてくると警告したらしい。
リークの町からエッグプラントの町へは、さほど時間は掛からなかった。2時間ほど馬車を走らせたら到着した。町の大きな門の前には2人のドワーフの門番がいた。
ドワーフは小柄で身長は150cmくらいだ。私が140cmなので、私よりかは少し大きい。しかし体格は屈強な体つきをしていて、腕や足はかなり太い。体型は少し小太りだが筋肉の塊だ。そして、長い髭をはやし、見た目はみんな同じような顔をしている。しかしドワーフからしたら、人間もみんな同じような顔に見えるので、慣れたら違いがわかるのであろう。
「小柄だが、めちゃ強そうだな」
「そうですね。エルフとドワーフは、あまり仲良くないのでかなり怖いイメージですわ」
「しかし、行くしかありません」
「そうだな、とりあえず話だけでも聞いてみようぜ」
ドワーフは、クラちゃんの事件によりかなり怒っているらしい。しかし、私にはドワーフの怒りを静める秘策がある。
「私が話してきます」
私は、クラちゃんのことで責任を感じているので、ドワーフの門番に話しを聞きに行くとこにした。もちろん秘策があるからでもある。
「すいません。町へ入ることはできますか」
「悪いがお嬢さん。今は誰も町へ入ることはできないのだよ」
「なぜですか」
「お嬢さんは、リークの町を通ってこの町へ来たのだろう」
「はい」
「それなら、リークの町の惨劇を見ただろう。女性の冒険者が、守護聖竜様の貢物を盗んでしまって、守護聖竜様を怒らせってしまったのだよ。そのせいでリークの町は石化され、この町も、急遽新たな貢物を用意しないといけなくなって、町は混乱しているのだよ」
「貢物ってどんなものですか」
「月に一度、ミスリル、アダマントを献上しているのだが、採掘できた8割は守護聖竜様に献上しているので、新たに用意しろと言われても在庫がほどんどないのだよ」
「それは大変ですね」
「そうなんだよ、だからヤウルンはかなり困り果てているのだよ」
「ヤウルンさんって誰なのですか」
「このエッグプラントの町のリーダーだ。守護聖竜様の、納得の行く新たな貢物探しに奮闘しているところだ」
「ヤウルンさんに会えますか」
「それは無理だな。この町へは誰も入れてはいけないと指示されている。特に冒険者には気をつけろと言われている」
「実は、ヤウルンさんにお渡ししたい物があります。このお酒をぜひお渡ししたいのですが」
「酒だと・・・・・」
ドワーフがお酒が大好きであるのは、異世界では当然のことである。私は、この世界にはない日本酒を、クラちゃんと協力して多量に作っている。それが役に立つ時が来たのである。
「しかし、誰も通すなと・・・」
「実は、門番さんの分もあるので、少し飲んでみてはいかがですか?」
「今は勤務中だ。それは・・で・・き・・・・ない」
「少しなら、バレませんよ」
「お嬢さんがそこまで言うなら、仕方ない。これも旅人の持ち物検査の一環だ」
「そうですよ。門番としては、当然の仕事です」
「よしわかった。少しいただこう」
ドワーフはやっぱりお酒に弱い。簡単に私の作戦に乗ってくれた。
「これは、なんだ・・今までにない味わいだ。口当たりも良く、甘味がずっしりと感じられ、香りもフルーティーだ。これは絶品だ」
「おい、俺にも飲ませろ」
もう1人の門番も、我慢できずにお酒を飲み出した。
「確かに、これは美味いな。まだあるのか」
ドワーフはおかわりを要求してきた。これは、ここで宴会が始まってしまいそうだ。それは、流石にやばいので町へ入る許可をもらうことにした。
「少しだけならお渡しできますが、町の中へ入らせてください。それに、ヤウルンさんにお会いしたいです」
「そうだったな。俺がヤウルンに会わせてやろう。そのかわり、お酒を渡してもらおう」
「はい、わかりました」
私たちは、ドワーフの町へ入ることができた。そして、この町のリーダーのヤウルンに会えることになったので、ドラゴンの説得への第一歩を踏み出すことができたのである。
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