第60話 エッグプラントの町パート2



 「ここが、この町の鉱山本部だ。ヤウルンはここで指揮をとっている。今から確認に行ってくるが、お酒を渡してくれ。先にお酒を渡した方が、会ってくれる可能性は高いはずだ」


 「わかりました。お酒のつまみに、コカトリスの唐揚げも持っていってください」



 私は、日本酒と唐揚げを門番に渡した。もちろん、門番の分も用意した。これで門番の買収には成功したといっても問題ない。



 「ルシス、上手いことドワーフのリーダーに会えそうだな」


 「はい。私の作ったお酒と料理が役に立てそうです」


 「そうだな。出会った頃は、ただの可愛いだけの女の子だったのに、今じゃ、最強の魔法士かつ料理人だよな」


 「はい。出会った日は私は魔力を封印されていましたので今が本来の私です」


 「そうだな。頼りにしてるぜ」


 「はい。任せてください」





 「ヤウルン、4人組の冒険者が来てるぜ。そして、お前に会いたがっている」


 「この町には誰も入れるなと言っただろう。それに今は守護聖竜様の対応で急がしい」


 「それが、珍しいお酒をもらったぞ」


 「お酒だと・・・・・・」


 「おつまみもあるぞ」


 「・・・・・」


 「おれは、お酒を少し飲んだが、今までに飲んだことのないお酒でかなりの美味しいぞ」


 「それは本当か」


 「本当だ。それにおつまみもあるぞ。おれはまだ食べていないが、サクサクしてかなりジューシーな食べ物みたいだ。これは唐揚げという食べ物らしい」


 「仕方ない。味見してやるか・・・・」



 ヤウルンも門番のドワーフ同様に日本酒を大絶賛した。しかもおつまみの唐揚げは、今まで食べたことのない美味しさであり、あっというまにお酒と唐揚げは無くなってしまった。



 「もうお酒はないのか。この量だと全然足りないぞ。急いでその冒険者を呼んでこい」


 「わかったぜ」



 私たちは門番に呼ばれて、ヤウルンがいる部屋にきた。門番とヤウルンの見た目の違いは、よくわからない。



 「私に何かようかな」



 ヤウルンは冷静を装っているが、早くお酒の追加が欲しそうな顔をしている。



 「まずは、このお酒とおつまみをお渡しいたします。よければ、お酒を飲みながらの会食での話し合いをしましょう」



 ロキさんに、ドワーフはお酒を飲むと扱いやすいので、お酒を飲みながらの会談を提案していた。



 「それがよいだろう。お前たちも一緒に飲むとよい」


 「もちろんだぜ」


 「もちのろんだわ」



 こちら側にも、お酒やジュースを飲むと扱いやすい2人がいたことを忘れていた。ポロンさんとトールさんには、ブドウ酒とブドウジュースを用意してあげた。


 

 大きなテーブルの上には、私が用意したお酒とおつまみが並んでいる。会食には、ヤウルンの他に、2名のドワーフと1名のライオンの獣人がいた。ライオンの獣人のモフモフ感はティグレさん以上だ。


 私のモフモフ魂に火がついた。これで実質、ラスパで真剣に話しできるのは、ロキさんだけになってしまった。



 「それで、君たちは何しにきたのだ?」


 「私たちは、リークの町のギルマスの依頼でドラゴンにリークの町を襲わないように、お願いしにやってきました。なのでドラゴンの居場所が知りたいのです」


 「なんて無謀なことを。お前たちは守護聖竜様の恐ろしさを知らないのだろう。守護聖竜様は、一瞬で全てを石化をしてしまう石化のブレス吐くドラゴンだぞ。リークの町を見て知っているだろう」


 「はい、しかし、私の仲間にはその石化を解除できる者がいます。リークの町の石化も解除してきました」


 「それは、本当なのか」


 「はい本当です。だから、依頼を受けてこの町にきたのです」


 「石化を解除できる魔法を使えるとは、かなりの高ランク冒険者だな」


 「C3ランクの冒険者です。ドラゴンの住処を教えてください」


 「・・・住処を教えることはできるが、こちらの依頼も受けてもらえないか」


 「どのような依頼ですか」


 「ある冒険者が、守護聖竜様の貢物を盗んでしまったので、それの代替品を用意しろと守護聖竜様から命令があった。しかし、ミスリル、アダマントに匹敵するような鉱石はない。しかも守護聖竜様にとって、ミスリル・アダマントはおやつのようなモノらしくて、代わりに甘くて美味しいモノを用意しろと指示してきたのだ。私たちにそのようなモノは用意できないのだ」

 

 「それで私たちに何をしろと」


 「それは、ミスリル、アダマントに匹敵する甘くて、美味しいモノを用意して、守護聖竜様の機嫌を直してほしい。このような美味しいお酒や、おつまみを用意できるなら、甘くて美味しいモノも用意できるはずだろ?」





 「おい、お前。さっきから、俺の頭に登って何をしている」



 会食に参加していたこの町の護衛団長のライオンの獣人リヨンさんが困っている。私は、会食が始まると、すぐにリヨンさんの隣へと割り込んで行った。そして、最高級のモフモフも求めてリヨンさんの頭の上によじ登ったのである。


 リヨンさんは、体長は2.5mで頭に立派な立髪が印象的だ。ティグレさん同様に全身は筋肉の塊で毛並みは、黄金に輝いてとても綺麗である。


 しかしなんといっても、立髪のモフモフ感が、今までの獣人の中で最強を誇っている。さすがモフモフ界の王を言われるだけのことはある。


 ヤウルン以外のドワーフはお酒に夢中である。トールさんもポロンさんも同じだ。ロキさんとヤウルンは真剣な話し合いをしている。だから私のモフモフ魂を止める人は誰もいないのである。



 「早く、俺の頭から降りてくれないか」


 「それはできません」


 「なぜなんだ」


 「そこにモフモフがあるからです」



 なんて肌触りのいい立髪なんだろう。この立髪に包まれて眠りたいと私は思っていた。しかし、リヨンさんは、困り果てている。客人に失礼なことはできないので、無理に下すことはできない。周りの連中は、お酒に夢中で誰も止めてくれない・・・



 「ルシルちゃん何をしているの。大事な話しがあるので、こっちにきなさい」



 ロキさんに見つかってしまった。



 「いやです。ここから離れたくありません」



 嫌がる私をロキさんは無理やり引きずり落とす。


 膨れっ面な私と対照的に、リヨンさんは安堵の笑みが溢れていた。



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