第306話 ホロスコープ星国 ルシス編 パート18


 「なんて、美味しい料理なの・・・」



 ヴァンピーは、チーズインハンバーグを食べて感動をしている。



 「このお肉の塊の中から流れ出るネバネバした食感の物体はなんなの?」


 「それはチーズという生乳からつくことのできる食材です」


 「そうなのね。この国でもぜひこの食べ物を再現したいわ」


 「作り方を教えるのは構いませんが、私はゲリちゃんのお姉ちゃんを探すために王の森へ行かないといけないのです」


 「そうね。それならゲリさんのお姉さんが見つかったら教えてくれるかしら」


 「わかりました」


 「そういえば、ゲリさんのお姉さんはウルクキングというのは本当なのかしら?」


 「そうなのだぁ」



 ゲリが元気に答える。



 「ドラキュンさんの話だと、ゲリちゃんのお姉ちゃんは、ウルフキングらしいです。名前はフレキと言っていました」



 私が詳細を伝える。



 「実は、私の知り合いがフレキさんとはお友達なのです。もし、フレキさんを見つけたら、私の友達のフェニが会いたがっているので、王都シリウスに来て欲しいです」


 「わかりました。その時にチーズインハンバーグの作り方も教えてあげます」


 「そうしてもらえると助かるわ。ルシスさんたちの目指す王の森にはラードーンという最強のドラゴンが支配している危険な森です。かなり危険だと思いますが、大丈夫なのですか?」


 「問題ないと思います。心配してくれてありがとうございます」



 ヴァンピーは、私の言葉に素直に納得した。フレキの妹のゲリ、素性はわからないが、規格外の事をする私、この2人を見ていると、ヴァンピーはフェニの事を思い出すのである。



 「最近のちびっ子は、規格外の強さを持っているわ。あの2人も私の想像を絶する力を持っているのに違いないわ」



 とヴァンピーは心の中で思っていた。



 「お昼を済ませたら、王の森へ向かうのですね」


 「そのつもりです」


 「この豪邸はどうするのですか?」



 ヴァンピーは、豪邸の今後の使い道が気になるのである。



 「もう、いらないので、壊して元に戻します」



 せっかく作った豪邸であったが、もう必要ないのである。もともと自分の家ではないので、元に戻すことにしたのである。



 「もったいないわ」



 ヴァンピーの顔が青ざめている。



 「でも・・・元に戻さないと、持ち主に怒られます」


 「そんなことはないわ。こんな素敵な豪邸に改築してもらって、ドラキュンも喜ぶはずだわ」


 「ここは、ドラキュンさんの倉庫だったのですね」


 「そうなのよ。だから壊さないでほしいわ」



 ヴァンピーは必死である。



 「大浴場とか、トイレなど色々作ってしまいました。ドラキュンさんに怒られないですか?」



 私は留置所として使われていた倉庫を魔改造して、快適で豪華な豪邸にしてしまったのである。なので、もう留置所として使うのは不可能であった。



 「大浴場もあるのですか!!!」



 ヴァンピーは、驚きのあまり意識が飛びそうになる。



 「大きいお風呂なのだぁ。ビリビリ風呂もあるのだぁ」



 ゲリが大浴場の説明を始める。



 「ビリビリ風呂?」


 「そうなのだぁ。体を刺激して気持ちいいのだぁ」


 「それ以外にもジェットバスやサウナもあります。泳ぐこともできる大きなお風呂もあります」


 私も得意げに大浴場の説明をする。



 「見せてもらってもいいかしら」



 ヴァンピーは大浴場が気になって仕方がないのである。


 

 「どうぞ」



 私は、食事を終えたヴァンピーを連れて、地下へ降りる。



 「階段が動いていますわ」



 初めてエスカレーターに乗って、ヴァンピーは興奮している。



 「魔石具で自動に動くようになっています」


 「素晴らしわ。ぜひ、シリウス城に設置したいわ」


 「ここが大浴場です」



 私は大浴場に案内した。



 「扉が勝手に開きましたわ」


 「物体に感知して、扉が開くようになっています」



 私は自動扉を説明した。



 「これも魔石具で動いているのかしら」


 「そうです」


 「これもシリウス城に設置したいわ」


 「ここが脱衣所です。ここで衣服を脱いでお風呂を楽しんでください。お風呂上がりには美味しいコーヒー牛乳を飲むと気持ちがいいです」


 「コーヒー牛乳?」


 「はい。とても甘くて美味しい飲み物です」


 「わかったわ。ぜひ風呂上がりに飲んでみますわ」



 そして、ヴァンピーはお風呂に入った。



 1時間後。



 「ここは楽園ですわ」



 ヴァンピーは私の作った大浴場をとても気に入ったのである。



 「いえ、お風呂です」


 

 私は静かにツッコむ。



 「サウナに電気風呂、そしてジェットバス・・・ここは体の疲れを癒してくれる天国ですわ」


 

 ヴァンピーは至福の笑みを浮かべて言った。



 「天国じゃありません!」



 魔王の子供として、天国と表現されるのが、私にとってとても不愉快であった。



 「この大浴場をぜひシリウス城に作りたいわ」


 「ダメです」



 私は天国という言葉を撤回しない限りヴァンピーに協力することはできないのである。私にとって天国とは天界を指すのである。天界と魔界はライバル関係なのである。



 「ルシスさん。お願いします。この大浴場の作り方を教えてください」



 ヴァンピーは頭を下げてお願いする。



 「無理です。大浴場は天国ではないのです」



 ヴァンピーは私が天国という言葉に敏感に反応したことにようやく気づいたのである。



 「そうね。大浴場は天国ではないわね」


 「そうです。大魔王様がいる魔界のような心地よい場所です」


 「確かにそうだわ。天国というよりも快適な魔界のようなところですわ」



 ヴァンピーは私に話を合わすのであった。しかし、ヴァンピーはこの時思ったのである。



 「確か・・・『神守聖王国オリュンポス国』のとある町では、魔王を崇拝する『聖魔教会』という組織があったはずだわ。もしかしら、ルシスさんは『聖魔教会』の一員なのでは・・・」


 

 と思ったのであった。

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